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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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「議席取り戻し」事件 第11回
やり残した質問

 東村山市議会平成27年3月定例会の一般質問に際して、「草の根市民クラブ」の矢野穂積が事前に提出した質問通告書の4には〈越境通勤市議はゆるされるか〉という項目があった。しかし一般質問で矢野は、宅地開発をいったん中止した東村山市内にある急傾斜地を「墓地公園化できないか」とする質問に時間を割いてしまい、予定していた〈越境通勤市議〉に関する質問をしなかった。理由はよくわからないが、矢野にとって、予定の質問ができなくなっても、墓地開発についての質問をする方がよほど重要だったということらしい。

 しかし矢野がこの3月議会で〈越境通勤市議〉に関する質問をもうしなくていいと考えていたのかといえば、そうではなかった。矢野は同年3月17日に行われた予算特別委員会の質疑に立ち、〈越境通勤市議〉について取り上げた。

 矢野のいう〈越境通勤市議〉とは、「他の自治体に居住していて、そこから東村山市議会に通勤している市議であり、東村山市内には生活の本拠がない市議。つまり本来は東村山の被選挙権がないにもかかわらず東村山市議として違法な活動している者」という意味である。

 この質問が来年度予算といったいどんな関係があるのかよくわからないが、矢野は4月に行われる市議選までに議会の場でどうしても〈越境通勤市議〉を取り上げておきたかったものとみえた。議員の質疑は議事録に残るだけでなく、動画でも配信しているから、取り上げることによってなんらかの宣伝効果を期待したのかもしれない。

ヤブヘビを警戒か

 ただその内容は、前年12月に発行した『東村山市民新聞』184号(=矢野と朝木直子の政治宣伝ビラ)に比べればかなり緩慢なものだった。ビラでは矢野が〈越境通勤市議〉であるとして批判しようとする議員を名指しした上で〈また公選法違反! 4年前にも「越境通勤市議」が大問題に〉と記載していた。その議員は東村山に生活の本拠はなく、公選法に違反していると断定していたのである。

 しかし予算委員会では矢野のいう〈越境通勤市議〉の氏名も出さず、公選法の住所要件について一般論を述べ、当該議員が住民票を置いていると思しき東村山市内の町名を挙げただけだった。矢野はこう述べた。



〈公選法の継続居住要件というのはですね、生活の本拠がそこになきゃいけないんですよ……。3カ月選挙の前に引き続いて住んでればいいっていう問題じゃないの、しっかり覚えてて下さいよね。〉

〈判例はですね、……本人が住んでるからいいんだとかいってるようじゃダメなわけですよね。〉



「住所」とは実質的な生活の本拠でなければならない。住民票を置き、「そこに住んでいる」と主張しただけではダメであることは、議席譲渡事件で矢野と朝木自身が最高裁から指摘されたことである。したがって、あまりその点を追及しては、朝木が千葉県松戸市に生活の本拠を移したと虚偽の主張をして矢野を繰り上げ当選させた議席譲渡事件という過去をかえって思い出されることになりかねない。だから矢野も、非難しようとする議員の住所問題に深入りせず、「住所」の一般的な定義を述べるにとどまったのではないか――私にはそう思えた。

「独自の見解」を披露

 なお矢野はこの質問の中で、住民票を置いた住所が本当に生活の本拠であるためには、

〈住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の生活、資産の所在等が、客観的事実に基づいて、そこに一緒に住んでいるということになんなきゃいけない〉

 と述べている。矢野はビラ184号で、住所をめぐって追及しようとする当該議員が家族を隣町に残したまま東村山に単身で住んでいることも、東村山が生活の本拠とはいえない理由として挙げている。だから、「配偶者その他の親族……がそこに一緒に住んでいる」ことが「生活の本拠」である条件であるかのように主張したのだろうか。

 他の自治体から移転してきた議員が、家族をそれまでの住所に残したまま単身で住んでいるという外形は、選挙民にとってきわめてわかりやすい状況であることにちがいあるまい。矢野の説明する「住所」の要件に「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことが含まれるというのが事実とすれば、少なくともそう信じ込んだ市民からはただちに、当該議員は東村山の被選挙権がなく、すなわち東村山市議の資格もないと判断されかねない。

 しかしそもそも公選法は、「住所」の要件に「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことを要求しているのかどうか。ちなみに議席譲渡事件で朝木直子の住所移転が否定され、矢野の繰り上げ当選が無効と断定された最高裁判決によれば、「住所」の定義について次のように述べている。



(「住所」に関する最高裁の見解)

〈住所とは、生活の本拠、すなわち、その者生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものであり、一定の場所がある者の住所であるか否かは、客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべきものと解するのが相当である(最高裁昭和29年(オ)第412号同年10月10日大法廷判決)。〉



「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことも「生活の本拠たる実体」を具備する要素には含まれよう。しかし最高裁は、具体的に「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことが住所の要件であるとまでは述べていない。問題はあくまで本人の生活実体だろう。

 当然、事情によって「配偶者その他の親族」とは別居する場合も現実にはあり得よう。また逆に、「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことによって、ただちに本人の生活実体があると判断されるとすれば、それもまたおかしな話である。

 少なくとも、私が調べた限りにおいて、法が「住所」の要件として「配偶者その他の親族が一緒に住んでいる」ことを要求しているとする事例を発見することはできなかった。矢野が予算委員会で述べた「住所」に関する主張はあくまで矢野の「独自の見解」にすぎないとみるべきなのではあるまいか。

(つづく)
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