ブログマガジン エアフォース
ブログで興味深い記事を公開していきます。
著書紹介

民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

最近の記事

カテゴリ

プロフィール

プールマン

Author:プールマン

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク

QRコード

QR

FC2カウンター

「議席取り戻し」事件 第13回
戻ってこなかった矢野穂積

 東村山市議会平成27年3月定例会は、同年3月26日、最終日を迎えた。私は所用で傍聴できなかったが、聞くところによるとその日の午後、午前中までは議場にいて議案の採決に参加していた「草の根市民クラブ」の矢野穂積が、昼の休憩後、議場に戻ってこなかったということである。

「草の根」の矢野と朝木が会議中に席を立ったり、遅れて来たりするのは珍しいことではない。しかし、重要な採決事案が続く議会最終日に本会議場からいなくなるとはどういうことだろうか。

 最終日の数日前、矢野と朝木は政治宣伝ビラ平成27年3月15日付『東村山市民新聞』第185号を発行している。ビラでは相変わらず他の議員に対する誹謗中傷を繰り広げているが、個人のビラを発行できても公務である議会採決に参加しないというのでは、場合によっては、市議会議員としての資質を問われても仕方がないのではあるまいか。

したたかな主張

 さて、議席譲渡事件で矢野の繰り上げ当選を無効とした最高裁判決後、朝木の当選も認定しなかった選挙会決定(平成9年9月2日)に対して矢野らが行っていた異議申出に対して、平成9年11月26日、東京都選管は東村山市選管に続いてこれを棄却する決定を行った。この異議申出において矢野らは、「最高裁判決は、朝木は平成7年5月29日以降、松戸に生活の本拠を移したと認定しているから、矢野が繰り上げ当選となるべきである」と主張していた。東京都の棄却決定後、矢野らはただちに東京高裁に決定の取り消しを求めて提訴した。

 矢野らは矢野の議員資格を主張する一方で、「矢野の繰り上げ当選を無効とした最高裁判決は平成7年5月1日の時点で朝木直子は東村山市議の地位を得ていたとしており、議会は朝木の身分に関する議決をなんら行っていないから、朝木は東村山市議の地位にある」(趣旨)とも主張し、東村山市議会に対して自分を議員として扱うよう要求した。2年前の東村山市議選後には自らの当選を辞退するといって議会や行政をさんざん混乱させておきながら、矢野の繰り上げが無効とされたとたん「やっぱり自分は議員だ」と平気で手の平を返すとは、やはり並大抵の神経ではなかった。

 しかし東村山市議会は、選挙会が「当選人を決めることができない」とする決定を行ったため、朝木の要求を拒否した。これに対して朝木は東村山市議会が朝木の議員としての業務遂行を妨害しているとして、平成9年9月11日、東京地裁八王子支部に業務妨害を禁止する仮処分命令を求める申し立てを行っていた。

 東村山市議会に議員としての業務を妨害しないよう求める理由として朝木は次のように主張していた。

〈最高裁判決は、……矢野穂積の繰上当選を無効と判断する理由として、債権者(筆者注=朝木直子)は右5月1日にはすでに議員の身分を得ているから、その身分を失わせるには議会の議決を要し、それを経ていない選挙会による繰上当選の手続きには瑕疵があり、その決定は無効であるとした。

 従って、右議決をしていない現時点において債権者は東村山市議会議員である。〉

 朝木が最初に東村山から千葉県松戸市に住民票を移した際、選挙会はその時点で朝木の生活の本拠は松戸に移ったと誤認した。「朝木の生活の本拠は松戸にある」という朝木や明代の主張を信じたのである。その結果、選挙会は誤った繰り上げ手続きを行ってしまった。

 つまり東村山市選管にそのような誤った判断をさせ、「瑕疵ある繰り上げ手続き」をさせた責任は朝木ら自身にある。しかし朝木は松戸に虚偽の住民登録をしたことにはいっさい触れず、たんに「最高裁は選挙会が行った繰り上げ当選手続きには瑕疵があり、その決定は無効であるとしたから、自分は東村山市議会議員である」と主張していた。自分に不利な材料はいっさい明らかにせず、すべての責任が選挙会にあるかのように主張するとは、なかなかのしたたかさである。

東京地裁の判断

 一方、東村山市議会が「議員として扱え」とする朝木の要求を拒否した根拠は同年9月2日に選挙会が行った決定にあった。これに対しても朝木は申立書で、最高裁判決後に選挙会が行った「当選人を定めることができない」と決定したこと自体が違法であると主張し、それに基づく議会の対応は最高裁判決に背くものであると批判していた。

 議会の対応は選挙会の決定に従ったもので、議会が朝木の身分を単独で判断したわけではない。是非はともかく現実的に、議会として行政の判断に真っ向から反するような対応はしにくいだろう。この議会の対応を東京地裁はどう判断したのだろうか。

 平成10年2月12日、東京地裁八王子支部が言い渡した決定は朝木の申し立てを「却下する」というものだった。通常、原告や申立人の請求の中身を審議した上で請求を退ける場合は「棄却」となる。「却下」とは請求の中身を吟味する以前に訴え自体が成立しないという趣旨である。どういう判断だったのか。

衆院選立候補を重視

 東京地裁は議席譲渡事件の経緯(平成7年4月23日に行われた東村山市議選で朝木は当選し、矢野が次点で落選したこと。その直後に朝木が矢野に議席を譲る目的で千葉県松戸市に住民票を移したことで東村山市の被選挙権を喪失したとみなされ、矢野が繰上当選人となったこと。朝木が平成8年10月8日告示の衆院選に立候補の届出を行ったこと――等)と最高裁判決後の選挙会決定などな経緯をふまえた上で、主たる争点は「朝木が公選法90条により議員としての身分を喪失したか(衆院選の立候補)」であるとした。

 この点について議会側は、〈債権者が市議会議員の地位を取得したとしても、債権者は、その後衆議院選挙に立候補しているから、……議員の身分を当然に喪失している。〉と主張。一方朝木は、〈債権者が市議会議員として在職したのは、平成9年8月25日の最高裁判所判決によってであるから、それ以前に衆議院議員選挙に立候補しても公職選挙法90条により市議会議員の資格を失わない。〉と主張していた。

 この点について東京地裁は次のように述べた。

〈債権者が本件申し立ての前提として主張する市議会議員の地位は、第1決定(筆者注=市議選直後に行われた選挙会の決定)により取得したとするものであるところ、債権者は、その後衆議院議員選挙に立候補の届出を行っており、公職選挙法90条により当然に議員たる身分を喪失していることは明らかである(この点についての債権者の主張は独自の見解であり採用できない。)。

 したがって、債権者の申し立ては、その余の点について判断するまでもなく理由がないから、これを却下することとする。〉

 平たくいえば、「自分で衆院選に立候補しておいて、いまごろ何いってるの」といったところだろうか。「棄却」でなく「却下」とは、「衆院選に立候補した以上、その後の最高裁判決などの経緯は関係ないでしょ」という趣旨のようだった。東京地裁もまた、自ら当選を放棄しておきながら、最高裁で矢野の繰り上げが否定されたとたん「やっぱり自分は議員だ」と騒ぐ朝木に強い違和感を覚えたのかもしれない。

(つづく)
関連記事

TOP