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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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りんごっこ保育園食中毒騒動退園事件 最終回
                             ★第1回から読みたい人はこちら


事実を知った東京都の苦慮
 
「東京都には報告に行った」という東村山市保健福祉部の説明と「まだ報告を受けていない」という東京都の言い分のどちらが正確な話なのか。平成18年12月13日行われた「りんごっこ特委」の翌日、私は東村山市が東京都に報告に行ったのがいつなのかを確認した。すると、東京都に報告に行ったのは12月7日午後2時であるという。経緯を話すと、都側は「それでも認可取り消しということにはなりませんね」などと話した。東村山市はその足で監査局にも行き、状況を説明したという。実は、私が東京都の保育担当に電話し、「あの件は東村山市の方でまだ確認ができていない」という回答を受けたのはそのあとのことだった。

 それでも東村山市が勘違いしているという可能性もある。そこで12月15日、私は再度東村山市に確認した。

「東京都はまだ東村山市から説明を受けていないといっているが、東京都に説明に行ったことに間違いないか」

 保健福祉部の回答にはまったく迷いがなかった。担当者はこう答えた。

「12月7日に東京都に出向き、説明をしたことに間違いない。東京都側の出席者は3名だった」

 保健福祉部の説明に出てきた3名の中に、私が何度も電話した担当者の名前が含まれていた。12月7日の夕方と12月14日の2度、この担当者は私に対して「まだ報告を受けていない」といったが、この回答は事実に反するものだったことになる。東村山市からの報告を受け(さらに東京都の一部は医師からの手紙も読んでいたかもしれない)、認可権者である東京都も苦慮していたのだろう。

 はたして東京都は私に対して、食中毒騒動をきっかけにした退園事件に対する認可権者としての見解を示してくれるのか。しかし12月14日、私が電話をかけて以後、東京都からの連絡は途絶えた。

すでに退園していた保護者

 一方、園児を病院に連れて行って3日後(病院に行ったのは金曜日だから、土、日を挟んで実質的には翌日)、保健福祉部に転園申請を提出した保護者はどうなったのだろう。12月13日の「りんごっこ特委」での保健福祉部の説明によれば、「13日に申請に来たが、他にも空きがなく、申請だけを受理したという状況だった。情報として、今現在はすでにりんごっこを退園し、りんごっこに入る前の認可外保育所に預けていると聞いている」とのことだった。

 この保護者はそれまでりんごっこ保育園に2人の子供を預けていた。この保護者の場合、保育料は2人分で5万7000円だったという。認可外では1人あたりの基本料金は4万5000円程度で、早朝保育や夜間保育があればその分が加算されるから、おおむね50000円程度である。認可保育園と同じように認可外にも2人目の割引があったとしても、この保護者はそれまでの2倍の保育料を負担しなければならなくなったという計算になる。この保護者は、それでもりんごっこ保育園にはわが子を預けたくないと考えたということである。あまりにもいたましい話だった。高野、あるいは矢野との間でよほどのことがあったとみるべきだろう。

 東京都からの連絡がないまま平成19年が明けた。東京都が苦慮していることは推測できたが、そのことと東京都職員には都民の安全を守るべき義務があることとは分けて考えなければならない。私が東京都のこれまで電話でやりとりしてきた担当者に電話したのは平成19年1月24日のことである。

――先般の東村山の件はどうなったか? 東村山市は東京都に報告したと聞いているが。

 担当者は、東村山市の報告についてはもう否定しなかった。

「はい。報告はありましたが、私だけではお答えできないので、あの件についてのご回答はもう少しお時間をいただきたい」

 私は「では今後は、子育て支援課長に聞く」と伝えて電話を切った。同日午後、私はさっそく課長に電話を入れた。

――昨年11月に東村山のりんごっこ保育園で起きた事件について見解をうかがいたい。ついては、直接会って、取材をお願いしたい。

 これに対して課長はこう答えた。

「あの件については、保健所が立入検査して『食中毒はない』と判断したこと、後日、当事者の園児が退園したという事実以外の事実は承知していない。退園についても通常の退園であると聞いている」

 とすれば、「何も問題は発生していないのだから、なんら問題はない」というのが都の見解で、そもそも「見解」を出すような話でさえないということになる。しかし、

――園が発行したビラには保護者を非難する内容が含まれている。そのほかにも重大な問題が存在したことをうかがわせる資料がある。

 というと、翌週に取材に応じてくれることになった。翌1月25日、私は課長宛にそれまでの取材に基づいた雑誌の記事をファックスし、「記事の内容をふまえて取材にお答えいただきたい」と伝えた(記事は、医師からの手紙と東京都の事実に反する対応の部分を除き、本連載のこれまでの部分とほぼ重なる内容とお考えいただきたい)。私は記事を「認可権者である東京都が、この痛ましい事件を闇に葬ることは許されない。」と結んでいた。

 取材予定日だった1月30日午前、課長から電話があった。

「今日の取材の件は、所用ができてしまい、延期してほしい。『東京都の見解を』ということだが、事実の確認が難しく、見解も難しいと思う。事実関係も含めてということなら……」

 取材は2月2日に延期となった。この段階で私は、東京都の姿勢が「食中毒はなかった。退園も通常の退園」という以上の事実を把握していない、というものであると理解した。

東京都の公式見解と事実の矛盾

 平成19年2月2日、取材は東京都庁の会議室で行われた。東京都側は課長と係長の2名。以下は、主なやり取りである(録音については断られた)。

――ファックスで送った記事について、記載事実に対する評価、解釈は別にして、事実経過については把握しているか。

課長  東村山市から説明を受けたが、事実は断片的にしか把握していない。

――前回の電話では、東京都の見解としては、「食中毒はなかった。退園も通常のものと判断している。それ以上の事実は承知していない」ということだが、それに変わりはないか。

課長  そういうことだ。

――しかし、形式上は通常の退園といっても、実態がそうでないことは明らかだ。保護者はまず11月13日に転園届けを提出し、その後退園届けを提出している。当初は転園届けを出して、空きがあれば転園したいと考えていたが、その後「これ以上この保育園に預けることはできない」と考え、退園届けを出したとみるのが自然なのではないか。その間に何か、よほど耐えられないようなことがあったと。2回にわたって発行された保護者に対する非難のビラをみれば、これに近いことが行われた可能性があるのではないか。

課長  都としても高野さんに事情を聞くように市に指示したが、応じてもらえないとのことだった。

――そもそも高野は一方当事者にすぎない。事実をより客観的に把握するには退園した保護者からも事情を聞かなければならないのは当然のことではないか。

課長  しかし、保護者が退園届を提出するにあたって、市になんらの苦情も申し立てておらず、保護者の気持ちを確認することができない。

――確認すればいいだけの話ではないか。市や東京都ならその保護者が特定できるのだから。

課長  市には保護者の名前がわかるが、都にはわからない。保育の実施主体は東村山市だ。調査するとしても、それをやるのは市だ。東村山では特別委員会が開かれていると聞いている。東京都としては委員会の推移を見ながら対応していこうと思っている。

――1月31日の特別委員会で、「退園した保護者には不利益が生じていないから、認可取消ということにはならない」とする趣旨の都の見解が公表されている。しかし、保護者の退園理由は事件と無関係であるとは考えられず、現在、認可外の保育所に子供を預け、2倍近い保育料を負担しているという事実は、まさに不利益が生じているということ。市に調査するよう指示してもらいたい。

課長  しかし、本人から、園の対応に関する苦情等がない以上、都としては通常の退園と理解するしかない。

――ビラを見てもわかるように、退園が今回の事件と関係があるとすれば、本人も苦情を訴えたあとの心配をして何もいえないという事情にあることは容易に推測できる。さきほど「事実関係は断片的にしか把握していない」といわれたが、東京都には医師からの手紙が来ているはずだ。東村山市が説明に来たときに、手紙が話題になったと聞くが、間違いないか。

課長  手紙が来たのは福祉保健局ではなく別の部署だ。

――どこに来たかはともかく、あなたはその手紙を読んだのか。

課長  (一瞬、逡巡ののち)読んだ。

――その手紙に何が書かれてあるかは私にはわからないが、その中には事実経過や保護者が退園に至った理由についても書かれていたのではないか。退園理由に関する記載があったか。

課長  内容及び退園理由に関する記載があったかなかったかについては、公表してもいいのかどうか、差出人の意思がわからないので答えられない。

――医師は「闇に葬りたくない」といっている。当然、公表されることも考えていたと思う。東村山市の説明、保育園側のビラ、手紙の内容を見れば、何が起きたのかわかるはずだ。それでも本人に対する調査をしないのか。

課長  今後、東村山市とも協議を重ねようと考えているが、東京都としては保護者本人から何も苦情がない以上、本人に対する聴取をする考えはない。

 取材はちょうど1時間。東京都は「当該園児が退園した、という事実以外には何も承知していない」という基本姿勢を貫き、「本人から園の対応に対する苦情等の意思表示がない」ことを理由に何もしない方針であるとした。

 しかし、東京都の私に対する「当該園児が退園した、という事実以外には何も承知していない」とする回答(公式見解)と、東京都が東村山市の求めに応じて送ったファックスの内容はどう考えても矛盾していよう。東村山市保健福祉部がりんごっこ特委で公表した「東京都の見解」は、「今回の件によりただちに許可の取消を行うことはできない」と明言している。

 これは、その見解の内容以前の問題として、東京都が一連の経緯を把握した上で、今回の事件がりんごっこ保育園に対する事業許可の取消に該当するか否かについて一定の判断をしたということ、少なくとも東村山市と東京都の間で、許可の取消に該当する事案であるか否かが検討課題にのぼったということを意味する。すなわち、東村山市が公表した東京都の見解こそ、東京都が一連の経緯を把握していることの何よりの証拠である。それでも東京都は「通常の退園」とする方針を変えなかった。

 こうして事件後、保護者は認可外保育園に子供を預け、それまでの2倍の保育料を負担しているという事実だけが残った。このことについて、東京都と東村山市保健福祉部がなんらの痛みも感じていないということはあるまい。しかし当然だが、この保護者を気の毒に思うだけでは都民、市民を守るという公務員の責務を果たしたことにはならない。

 子供を預けている立場上、保護者には保育園の不利益になるようなことをいえないこともあろう。ことに裏で矢野という特異な議員が差配するりんごっこ保育園ではなおさらだろう。そのことになぜ行政は想像をめぐらさず、踏み込もうとしないのか。東京都や東村山市保健福祉部の思いがどうであれ、現実に現れた結果から見れば、事件は「闇に葬られた」のである。

 事件直後に高野が園内に配布したビラをみる限り、この保護者が少なくとも園にはもういられない状況に至ったことは明らかだろう。万が一、この保護者が医師に申告した内容に誤りがあったとしても、「園との信頼関係を根底から否定するあまりにも悪意のあるデタラメ情報を当園の園児の保護者が行った」とまで書いて保護者を責めるとはどう考えても異常である。私にはこれだけで十分に「劣悪」な保育園と思えるが、読者はどう判断されるだろうか。

(了)

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