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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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りんごっこ保育園問題とは何か 第3回
水面下で進められた計画

 平成14年末、東村山市野口町で東京都認証保育所を経営している女性施設長(のちに明らかになる高野博子)が、平成15年度に新たに認可保育園を開設すべく土地を確保し、すぐにでも建設着工可能な状況になっているという情報が保育関係者の間に広がった。

 従来、国が認可する認可保育園の運営は自治体や社会福祉法人のみに制限されていた。しかし平成12年、女性の社会進出や共働きの家庭が増えたことなどによる保育需要の急増を背景に、厚生省(当時)は社会福祉法人以外でも認可保育所の設置・運営ができるよう政策変更を行った。それにともなって、東京都も平成13年8月から独自に認証制度を設けて民間の参入を促し、待機児問題解消に力を入れている。東村山市でも平成13年9月、株式会社を運営主体とする認可保育園が開園している。

 だから、社会福祉法人でもない個人が認可保育園を立ち上げようとしていること自体は法的には問題ない。しかし、この話を伝え聞いた保育関係者らは一様に怪訝な思いを抱いた。それまで東村山市保健福祉部は「平成15年度には認可園の定員変更はない」(同年10月)、「15年度の待機児解消は既設園(認証、認可外を含む)の定員緩和(=定員増)で対応したい(11月)と説明、すなわち15年度には新たな認可保育所の開設計画はないとしてきた経緯があったからである。

 認可保育園は国の認可事業ではあるが、東京都の場合には、自治体が認可申請書に意見書を添えて東京都に提出、国基準等に照らし、その内容に問題がなければ東京都は認可を認めるのが通例である。つまり、国の認可保育園といっても、開設地域や時期など地元の保育事情を反映させる必要があるため、実質的な認可判断および保育の実施は各自治体に任されている。

 東村山市ではそれまで、事業者から開設の要望や計画が出された時点で園長会や保育・教育関係者、学識経験者などで構成する児童育成計画推進部会(いわゆる審議会のような位置付け)に諮り、また市議会(厚生委員会)の賛同を得た上で事業化を進めてきた。より多くの意見と民意を反映させ、事業の公開性、公益性を担保するためである。

 認可保育園は80名規模なら8000万円近い補助金が交付される。このような公共性のきわめて高い事業において担当部署の独断専行、密室での事業決定は許されない。平成13年に開設された株式会社立の保育園の場合も、育成部会では開園の1年以上前に事業化要望が報告され、慎重な論議が重ねられたのである。

 ところが今回にかぎっては、着工も間近だというのに、保健福祉部からはなぜか誰も正式な報告を受けていない。そこで平成14年12月6日、数人の市議が漏れ伝わった情報をもとに保健福祉部幹部に非公式に問いただした。すると、情報の内容は事実で、敷地面積約100坪、定員約80名の認可保育園が計画されていることが明らかになった。しかし保健福祉部はそれ以上の説明はせず、12月13日開かれた認可園長会でもその詳細について説明されなかったのである。

 年が明けた平成15年1月7日、現場ではすでに杭打ちを終え、計画が着々と進行していることをうかがわせた。1月17日に開催された育成部会では当然、この問題が議論の中心になった。冒頭、保健福祉部長は、「待機児解消のために新しく2園の認可保育園の計画を進めていること、1カ所については平成15年4月か6月の開園を目指している」としたものの、「計画がまだ固まっておらず、詳細についてはお話しできない。まだ建築は始まっていない」と説明した。

 早ければ3カ月後には開園を目指しているというのに「まだ計画が固まっていない」ということがあり得るのか。開園までには都による検査や園児募集もしなければならず、逆算すればこれから建築工事を始めても遅いぐらいである。実際に、予定地の状況はいつ建築工事が始まってもおかしくない状況にあった。

 普通はまず土地があって、建物の規模を決め、建築面積などから定員を算出し、さらに補助金の予算化が確実な状況になっていなければ工事には入らないのではないかとみられた。個人が建てる以上、市の予算とは直接関係がないのかもしれないが、保育園をやろうとしているのなら補助金を計算に入れていないということは考えられなかった。つまり、工事が始まろうとしているということは、事業者と保健福祉部との間で計画を含めたなんらかの合意がなされているということではなかったのか。

 問い詰められた保健福祉部は1月17日の育成部会が閉会に近づいたころ、ついにその認可保育園の場所と敷地約100坪で定員81名を予定していることを初めて公表するに至った。この敷地面積と定員は、国の認可基準をぎりぎり超えてはいるものの、園児1人あたりの面積は東村山市内の認可保育園に比較すると2分の1にも満たないというきわめて貧弱なものだった。東村山市内には同じ100坪程度の認可園があるが、定員は30名である。

 これでは、最低基準の範囲内で床面積を1人あたり面積で割ればこういう定員になったというだけで、経営効率優先、とても十分な保育環境の確保を前提に算定された数字とは思われなかった。認可基準は、それを下回ってはいけないというだけで、それで十分というものでは決してないのである。その上、その保育園には園庭もなかった。東村山市の認可保育園に園庭がない保育園は存在しない。それまで常に保育の質の確保を話し合ってきた育成部会にとってはとうてい考えられない代物だった。

 いかに「待機児解消のため」とはいえ、これでは本末転倒になりかねない。東村山市においてこのような貧弱な認可保育園が異例であるのなら、保健福祉部はなおのこと広く専門家の意見を聞き、市民の理解を得ておく必要があろう。にもかかわらず、保健福祉部はこのような認可保育園を事業者側との間で相談したのみで認可しようとしていたのか。保健福祉部はこう答えた。

「隠していたわけではない。計画が固まった段階でお話ししようと考えていた」

「計画が固まったとき」とは予算が議会を通過したときなのか、上物が完成したときなのか。いずれにしても、それならもはや児童育成部会で検討する余地はなく、その時点での諮問は儀式にすぎまい。

 事実、「まだ計画が固まっていない」と保健福祉部長が答弁したわずか3日後の1月20日には本格的な建設工事が始まったのである。

(第4回へつづく)
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