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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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元市議名誉毀損事件 第40回
淡白な反論

 山川が附帯控訴状を提出したのは平成28年10月7日である。これに対する矢野らの答弁書は同年10月14日、送付された。どんな分厚い書類が届くかと思っていたが、その反論は思いのほか淡白なものだった。矢野らの反論は以下のとおりである。



(附帯控訴に対する矢野らの答弁)

「附帯控訴の理由に対する認否」

 被控訴人(附帯控訴人)は、附帯控訴の理由として同人の独自の見解を縷々述べるが、原判決に関する控訴人ら(附帯被控訴人ら)の主張は、控訴理由書記載のとおりであり、これに矛盾・抵触する被控訴人(附帯控訴人)の主張については、すべて否認ないし争う。



 附帯控訴の理由に対する反論は、これがすべてである。矢野らは一審判決を受け入れなかった。しかし、一審が認定した「一般読者の読み方」(「原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、仲介のような役割を果たしており、貸金が返済されないことについて知らん顔をしているあきれた人だ」などというもの)については「山川がお金を巻き上げる連中の口ききであり」とした箇所以外の部分に対しては、一審の認定を容認していた。

一審の認定に従う主張

 一審の「一般読者の読み方」についての認定は、「本件記事は『山川が詐欺事件に関与した』と主張するもの」という山川の主張からは、はるかに後退したものと思えた。一審は、認定した「一般読者の読み方」に基づき、それが不法行為を構成するかについての立証対象は「松田を被害者に紹介したのが山川であるのか否か」という点にあるとした。むしろ、一審が示した争点は記事の本質(「山川は詐欺事件に関与した」とするもの)を矮小化させるもののようでもあった

 捜査権を持たない一般人が、一人の人物が「詐欺」という犯罪行為に関与したかどうかを立証することは困難である。民事裁判ではそう信じたことについて相当の理由があればいいが、それでも、本件で相当性が認められるには、塩田が被害者から多額の金を引き出したことについて山川が塩田や松田と事前に通牒していたなどを立証する資料が必要となろう。

 しかも、一審でも矢野らは「山川が詐欺事件に関与した」とする事実について、詐欺事件に直接結びつく事実に関する主張も立証もしなかったから、最初から直接的に「山川が詐欺事件に関与した」とする事実を立証することは難しいことがわかっていたのだろう。だから、山川が松田に「被害者が一人暮らしになったことを話した」ことをもって「『詐欺事件に関与した』ことは明らかだ」などと主張するほかなかったように思える。

 矢野らにとって、「山川は詐欺事件に関与した」とする事実を立証することに比べれば、「松田を被害者に紹介したのが山川であるのか否か」を立証しようとすることの方がはるかにハードルが低いのは明らかである。敗訴はしたものの、矢野らにとってはまだつけ込む余地があると思わせたのかもしれない。

 また、「お金を巻き上げる連中の口ききで、仲介のような役割を果たしたのに、貸金が返金されないことについて知らん顔をしているあきれた人」という記事であると認定される方が、「詐欺事件に関与した」とする記事を掲載したとして損害賠償を命じられよりもまだ、市民に対する印象はマシだろう。矢野らにとって、控訴にあたっての立証の問題だけでなく、記事内容に対する評価という点においても、一審が認定した「一般読者の読み方」に異を唱える理由はなかったのではあるまいか。

 したがって、矢野らが控訴理由書で争点としたのは一審判決に基づき、「詐欺グループの一員である松田を被害者に紹介したのが山川だったのか否か」だった。矢野らは「山川が松田を被害者に紹介した」と主張し、被害者の新たな陳述書まで提出することでその立証に全力を挙げた。山川が附帯控訴状を提出しなければ、矢野らの主張には、成否は別にして、それなりの合理性があったといえる。

 しかし、山川が附帯控訴状を提出し、一審が示した「一般読者の読み方」を否定したことで状況には変化が生じた。山川が提出した附帯控訴は、矢野らの控訴とは争点をまったく異にするものだった。

 矢野としては、「詐欺グループの一員である松田を被害者に紹介したのが山川だったのか否か」が争点であるとする主張に全力を傾注した以上、いまさら山川が一審とは異なる争点を提示したこと自体を受け入れるわけにはいかないということだったようにみえた。だから、山川の附帯控訴を「独自の見解」として切り捨てたのではあるまいか。

 附帯控訴状での山川の主張は「独自の見解」だから、相手にすべきではないという、東京高裁に対するアピールでもあろう。ならば、山川の主張がどんな理由で「独自の見解」なのかについて少しでも説明があればより説得力があったのではないか。しかし矢野らの答弁書には、山川の主張が「独自の見解」である理由についてはいっさい書かれていなかった。

〈1860万円詐欺、元公明市議らが関与〉〈創価、元公明市議らが仲介して〉〈言葉巧みに、一般市民から、借りて1860万円も返さず〉(以上、記事1)、〈勝手は許さない〉〈本山破門『ご本尊』放棄の政治集団化の先は、『詐欺師集団?』〉〈新興宗教の衣を脱ぎ捨てた集団〉(以上、記事2)の見出しが付いたそれぞれの記事を一般読者はどう読むと判断するのか――。名誉毀損に対する判断だけでなく、「一般読者の読み方」に対する東京高裁の判断も注目されるところであると思う。判決言い渡しは12月7日である。
 
(「判決後」につづく)
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