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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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元市議名誉毀損事件 第42回
改めて記事の趣旨を認定

 一般読者が本件記事をどう読むかについて、東京高裁は一審の認定に〈「『1860万円詐欺、元公明市議らが関与』、『創価、元市議らが仲介して』、『言葉巧みに、一般市民から借りて1860万円も返さず』という見出しを併せて読むと、」を加え〉るとした。その上で、一審同様に、本件記事は山川の社会的評価を低下させるものであると認定している。

 記事による名誉毀損裁判において次に検討されるのは、記事に公共性と公益性があるかどうか、また真実であることの証明(真実性)あるいは記事作成側において記事の内容を真実と信じるに相当の理由があったか否か――である。本件記事に公共性、公益性があり、真実性あるいは矢野らに記事の内容を真実と信じるに相当の理由があったと認められる場合には、違法性が阻却される。

 さて、本件記事の公共性、公益性について一審の東京地裁は次のように判断していた。



(一審における公共性、公益性判断)

 本件記事は、本件新聞発行時(筆者注=平成27年7月31日付)において市議会議員であった原告が詐欺行為に関係したか否かについてのものであるから、一応公共の利害に関する事実に係るものであり、そうであれば本件記事の掲載は一応公益を図る目的でなされたものと推認される……



 これに対し山川は附帯控訴状で、平成23年に市議会議員を引退しているから、本件新聞発行時も議員であるとの理由で公共性を認め、同様の理由によって公益性を認めた原判決は誤りであり、本件記事には公共性も公益性も存在しないと主張していた。

 山川の主張に対して東京高裁は公共性、公益性について一審の認定を次のように改めた。



(東京高裁の公共性、公益性判断)

 本件記事は、控訴人ら(筆者注=矢野ら)が市議会議員を務める東村山市において、一般市民が詐欺まがいの行為の被害者となり、当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというものであるから、一応公共の利害に関する事実に係るものであり、そうであれば本件記事の掲載は一応公益を図る目的でなされたものと推認される……



 山川としては原審の認定の前提事実に単純な誤認があったため公共性、公益性を否認したが、「当時、市議会議員であった」という理由で公共性、公益性が認定されることは想定していた。それよりもむしろ驚きだったのは、一審が〈(本件記事は)市議会議員であった原告が詐欺行為に関係したか否かについてのものであるから〉と、本件記事について「山川は詐欺行為に関与したとするもの」と断定していないのに対し、東京高裁が〈一般市民が詐欺まがいの行為の被害者となり、当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというものである〉と、ずばりと本件記事に対する認識を示したことだった。

 控訴審の判決文が一審を丸ごと破棄するのではなく改めるという方法で書かれているせいか、東京高裁が示した「一般読者の読み方」(本連載第41回)では、一審が示した「読み方」の前に〈「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」、「創価、元市議らが仲介して」、「言葉巧みに、一般市民から借りて1860万円も返さず」という見出しを併せて読むと、〉との文言を加えたものの、東京高裁が端的に本件記事がどう読めると考えているのか、やや不明確な印象をぬぐえなかった。

 しかし、公共性、公益性判断において〈(本件記事は)「当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというものである〉とする認識を示したことによって、「一般読者の読み方」の認定において「見出しを併せて読むと」との文言を加えた意味が明確化したといえる。東京高裁は本件記事が、山川が主張したとおり「山川は詐欺(まがいの)事件に関与した」とするものであると認定したということだった。

矢野らの主張に沿う供述

 では、本件記事の真実性・相当性について東京高裁はどう判断したのだろうか。一審の東京地裁は認定した「一般読者の読み方」の中でも「山川が被害者を松田(筆者注=矢野らが詐欺グループの一員と主張する人物)に紹介するなど、仲介のような役割を果たした」などとする部分を重視し、「山川が被害者を松田に紹介したかどうか」について検討した。その結果、東京地裁は「山川が被害者を松田に紹介した」とする事実についてはこれを認めるに足りる証拠がなく、矢野らがそう信じたことに相当の理由もないと結論付け、本件記事の名誉毀損を認定した。

 矢野らは控訴にあたり、一審で山川が提出していた被害者の陳述書とは別に、新たな被害者の陳述書を提出し、本件記事の相当性を主張した。矢野らが控訴理由書で被害者の新たな陳述書における「証言」を根拠に最初に主張していたのが「松田を被害者に紹介したのは山川である」とする事実だった。その主張が控訴審で認められれば、相当性を否定した一審判決を覆すことができると矢野らは考えたのだろう。しかも、被害者に新たな陳述書を依頼したのが奏功したのかどうか、被害者はその陳述書で「松田を紹介したのは山川だ」とする趣旨の供述をしていた。

避けたかった事態

 一審における「山川が被害者を松田に紹介し、松田が妹の塩田(筆者注=被害者から直接借金をした人物)を被害者女性に仲介したことにつき、原告が、お金を巻き上げる連中の口ききであり、仲介のような役割を果たしており」などとする「一般読者の読み方」を前提とし、また被害者の新しい陳述書における上記供述が事実と認められれば、一審判決は覆ったかもしれない。しかし東京高裁は「一般読者の読み方」について〈「1860万円詐欺、元公明市議らが関与」などの見出しと併せて読むと〉との文言を加えただけでなく、〈(本件記事は)一般市民が詐欺まがいの行為の被害者となり、当時市議会議員であった被控訴人が関与していたというものである〉と明言している。

 したがって、東京高裁の本件記事の「読み方」についての認定からすれば、本件記事が真実性、相当性を認められるには「山川は詐欺まがいの行為に関与していた」とする事実を立証しなければならないことになる。「被害者に松田を紹介したのは山川である」とする事実は、山川が塩田と通牒していたなどの事実が証明されて初めて重要な証拠として意味を持つのであって、それ自体としては付随的な意味を持つにすぎない――山川は当初からそう主張していた。

 たんに「紹介したかどうか」という事実と「詐欺行為に関与したかどうか」という事実が別次元の事実であることは明らかだろう。一審が認定した「一般読者の読み方」に見出しを加えるとした東京高裁の認定によって、重要な立証対象が「山川は詐欺まがいの行為に関与していた」という事実へと変わったのである。矢野にとっては、はなはだまずい流れだった。

(つづく)
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