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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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多摩湖寿会事件 第38回
珍しい認識

 朝木らは認否に続いて、山川が主張するそれぞれの名誉毀損事実がいずれも不法行為を構成しないとし、それぞれについて具体的な理由を述べている。

 民事訴訟において名誉毀損とは、①不特定多数に対して、②事実を適示して、③他人の社会的評価を低下させること――とされている。ただし、①適示事実について真実であるとの証明があるとき、または真実であると信じるに足りる理由があると認められる場合、②公共性があると認められる場合、③公益性があると認められる場合――の3つの条件をみたす場合については違法性が阻却されるというのが判例である。

 山川は朝木と矢野の議会での発言やビラの発行などによって「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と主張し、それによって名誉が毀損されたと主張している。朝木の代理人弁護士は最初に次のように主張していた。

「名誉毀損に基づく損害賠償請求の一般的要件は①被告が原告の社会的評価を低下させる事実を流布したこと、②故意又は過失、③損害の発生及び額、④前記②と③の因果関係――であるが、原告からこれらの要件事実について十分な主張・立証がなされておらず、原告の主張には理由がない。」(趣旨)

 要するにこの弁護士は、山川は具体的に発生した損害とその金額を示し、朝木の発言との因果関係を立証していないのでその主張には理由がないと主張していた。この弁護士の主張によれば、本件の場合、山川はそれぞれの不法行為ごとに社会的評価の低下について立証しなくてはならないことになるが、裁判所はそこまで要求しているのだろうか。

 たとえば新聞である人物の社会的評価を低下させる記事が掲載された場合、当該人物が新聞の読者を特定し、自己の社会的評価が低下したかどうかを確認することなど不可能である。新聞記事による名誉毀損の場合、判例では、記事が掲載され、ある人物の社会的評価を低下させる可能性が生じた時点において名誉毀損が成立するとし、社会的評価が低下した事実を具体的に立証することを求めていない。問題は、記事がある人物の社会的評価を低下させるものと判断できるかどうか、のようなのである。

 この判例に本件を照らすとどうだろうか。「山川は多摩湖寿会の金を横領した」とする記載や主張が山川の社会的評価を低下させるものであることは明らかである。その主張が不特定多数に対してなされたことも事実である。するとやはり、朝木の主張はその時点で、山川の社会的評価を低下させたと判断すべきなのではなかろうか。実際、本件裁判で裁判官が山川に対して「具体的に発生した損害とその金額を示し、朝木の発言との因果関係を立証」するよう求めることはなかった。

 こうみると、朝木代理人の上記の主張は判例とは相いれないものとみるのが妥当といえるのではあるまいか。しかし、プロの弁護士が名誉毀損における基本的判断事例を知らないことはあるまい。代理人弁護士をつけていない山川を揺さぶるために知らないフリをした――こう理解するのが自然のようだった。

「疑惑の適示」と主張

 いずれにしても、朝木代理人は上記のような独自の主張を述べた上で、山川が主張するそれぞれの不法行為について違法性を否定する主張を行っている。具体的に紹介していこう。



(朝木らの主張)

①一般質問通告書および議会における質問(本連載の「認否」のうち、①②③⑤⑥および⑨――第36、37回)

(1)質問の意図

 原告は東村山市議会議員だった者であることなどから、悪質性が顕著であると考え、東村山市の財政(公金から支出される補助金)の健全性を追求する意図で定例会において取り上げたものである。

(2)社会的評価の低下
 
 原告の氏名や住所は特定されておらず、多摩湖寿会で発生した元市議会議員による業務上横領疑惑について追及したに過ぎない。このような態様による疑惑の適示により、原告の社会的評価が低下するものとは認められない。



 上記(2)の「社会的評価の低下」の項において、朝木らは「多摩湖寿会で発生した元市議会議員による業務上横領疑惑について追及したに過ぎない。」と主張しているが、前回、前々回で紹介した認否で上記⑤、⑥、⑨については朝木ら自身、「山川は寿会の金を横領した」と発言等したことを認めている。

 また①、②、③については、

「この元市議は42万④4500円を会計から抜いたことを認めていると聞く」(①)

「会計の不正処理を行った元市議会議員は、新年会やお祝い金、バス研修費などで集金したお金を会計収入に入れず、78件もの経費(領収書)を二重計上するなどして寿会会計から抜いた」(①)

「この元市議会議員は42万4500円を会計から抜き取ったという、このこと自体は認めております」(②)

「福祉募金の全額を着服していることが明らかとなっています」(②)

「この元市議会議員は、新年会の会費やお祝い金、それからバス研修会などで集金したお金を会計収入に入れないで着服」(②)

「経費を二重計上するなどして、寿会の会計からお金を抜き取っていました」(②)

「4年間もね、募金は盗まれるし、二重計上で会計からお金は抜かれるし、入るべきお金は入っていない」(③)

「会計がめちゃくちゃな状態でお金が盗まれていくような状態」(③)

「会計さんが自分のポケットに入れていた」(③)

「誰がどうみたって意識的にやってるんですよ。犯罪の可能性が非常に高い」(③)

「泥棒したものはね、お金返せばいいんですかっていう議論になるんですよ」(③)

 などと記載、発言している。これらの発言がたんに「疑惑の適示」といえるのかどうか。裁判官がどう判断するのかはわからないものの、「山川は寿会の金を横領した」と断定するのと「横領の疑惑がある」と主張するのでは、要求される真実性・相当性の立証にかなりの差が出てくることは確かだろう。朝木らが議会での発言等について「疑惑の適示」であると主張したことにはなんらかの意図があったとみるべきではあるまいか。

(つづく)
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