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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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多摩湖寿会事件 第83回
自白に追い込まれた加藤

 これまでの反対尋問における加藤の供述によれば、示談書作成の理由について「聞いていた」とした主尋問での供述は虚偽であることがうかがえた。清水澄江が示談書を作成すると称して大野宅に関係者を集めた平成28年8月25日まで、加藤が示談書についてその趣旨も内容もいっさい聞かされてはいなかったことをさらに確信させたのは、山川が次に聞いた質問に対する供述だった。

 朝木は陳述書で、役員の間で「山川さんに示談を持ちかけてみて」応じれば刑事告訴はしないとの話があったと供述している。それが事実とすれば、山川が署名を拒否した際、清水は山川に対してなんらかの説明をしていただろう。

 ところが、その夜、山川が署名を拒否すると、清水は山川に対して説得を試みるどころかなんらかの説明もしないまま、出席者に配布した示談書を急いで回収し、怒って先に帰ってしまった。山川の質問は、清水がいなくなったあと、大野と加藤が山川の目の前で話した内容に関するものだった。



(示談書に関する加藤に対する反対尋問⑤)

山川
  ……清水さんが帰ってから大野さんが示談書は初めて見たというふうに言って、で、加藤さんもそのようにおっしゃっていましたね。一緒に聞いていましたね。

加藤  はい。



 立会人の大野が、この日までに示談書の内容や趣旨について清水から少しでも説明を受けていれば、このような発言をすることはあり得ない。加藤の上記の供述は、「示談書を初めて見た」という大野の発言を聞いたという事実だけでなく、加藤自身も同じことを口にした事実を認めるものだった。加藤の「はい」という供述は、主尋問における示談書に関する自分自身の供述が虚偽であることを自白するものでもあるということになる。

示談書の正当理由

 ではなぜ、加藤は示談書をめぐりそのような虚偽の供述をしなければならなかったのだろうか。

 清水が山川に署名を迫った示談書は1週間前に合意した「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とする誓約条項を覆すものである。誓約書を覆して新たに示談書を作成するには相当の理由が必要だが、それは当然、誓約書に関わった当事者と役員の了解に基づくものでなければならず、会長だからといって清水澄江の独断で進めることはできない。だから、誓約書を反故にする示談書の正当性を主張するには、加藤もまた事前にその趣旨と内容について「聞いていた」ことにする必要があった――そういうことではなかっただろうか。

 山川は8月25日当日まで示談書の内容どころか、新たに示談書を作成すること自体を知らされておらず、それどころか同日夜に署名捺印するから集まってほしいという連絡を受けたのもその日の昼だった。示談書の最も重要な当事者である山川に対して、ギリギリまで示談書を作成するという話さえ知らせなかったこと自体、不自然だった。

 山川は誓約書に「これをもって一切申し立てをしない」との文言があるため、まさか示談書に山川が「横領を認めて謝罪する」旨の文言が書かれているとは夢にも思わなかった。山川はこれですべてが終わるならと考え、清水が指定した時間に大野宅へ行ったのである。

 清水が朝木に示談書の作成を依頼したのは誓約書の成立からわずか4日後の平成28年8月21日である。朝木は翌日の8月22日に示談書を清水の元に届けた。約書の成立後、清水が朝木に示談書の作成を依頼するまでには実質3日しかない。この間に清水は役員会を開いて示談書の作成を話し合ったのだろうか。

清水と朝木の狙い

 実際にそのような話し合いが行われたとすれば、その内容はまず重要な当事者である山川に知らせるべきではなかっただろうか。朝木への依頼はそのあとでなければならない。ところが現実には、山川が示談書の内容を知ったのは署名の直前だった。

 この流れをどう理解すべきか。示談書に「山川は横領を認めて謝罪する」との文言があると山川に説明すれば、山川が署名を拒否することは清水にも朝木にも予測できたはずである。だから事前には説明せず、いきなり示談書を突き付けて署名させようとした――明らかになった事実からみると、このような推理も突飛なものとはいえまい。

 会合の日時を連絡したのが清水ではなく大野で、それが当日の昼だったのは、なんらかの事情で連絡が遅れたのではない。示談書の内容を問い合わせる時間的余裕を与えないためである。大野や加藤が会合の連絡を受けたのもおそらく当日だったのではないか。

 前日だと、大野や加藤の口から山川に伝わる可能性がある。山川に情報が伝わってしまえば、署名の直前まで内容を知らせないという清水と朝木の目論見は水の泡となるのである。

 こう考えると、役員会で示談書の作成を話し合ったという清水の説明もにわかに信じることはできまい。朝木と清水以外の者が示談書の内容を知れば、何のきっかけで山川に情報が洩れないともかぎらない。したがって、「山川は横領を認めて謝罪する」との文言が記載された示談書に山川に署名捺印させるまでは、2人以外の誰にもその内容を知らせないのが最善の策でもあるのだった。

 山川が加藤に対する反対尋問で、いつ、役員の誰から示談書に関する説明を聞いたのかを確認したのにはこのような背景があった。加藤は、8月25日の大野の発言(「示談書は初めて見た」)を聞いた事実を認めたことで、示談書作成の当日までその内容を知らされていなかったことを認めた。加藤が役員から「聞いていた」という供述を自ら否定したことで、その前提である「役員は知っていた」という事実もまた虚偽だということだった。

いいなりの可能性

 山川の質問にそんな意味があったことに、加藤が気づいていたとは考えられない。質問の意図に気づいていれば、「示談書を初めて見た」という大野の発言を聞いていたことを、あれほどあっさり認めるはずがない。

 役員から示談書についての「説明を聞いていた」という部分に関しては、清水らとの尋問に向けた打ち合わせにあったからそのとおりに答えることができた。しかし大野の発言については打ち合わせになく、それに対する供述が役員の説明のくだりと重なっていることにも加藤は気づかなかった。だから「はい」と、ありのままに事実を答えてしまったのだろう。

 加藤と同様、清水もまたこのことに気付いていたのかどうか。清水は加藤に対する尋問が終わると、拍手のしぐさで加藤を迎えた。少なくとも主尋問に関して、加藤の供述は打ち合わせどおりの100点満点の供述だったことに満足したようだった。

 清水は証言がすべて証拠として認められるものと勘違いしていたのではあるまいか。通常、尋問での証言が100%信用されるとは限らない。尋問までに提出された証拠や主張などと総合して、供述の真実性が判断されるのであり、裁判当事者が証人に対して自分に有利な証言をするよう働きかけ、証人が打ち合わせどおりの供述をしたとしても、それがそのまま真実と認定されることはないのである。

 本件では、加藤が主尋問と反対尋問で矛盾をさらけ出したことで、加藤が事実ではなくシナリオどおりに清水の側に立った供述をしたことが鮮明になったようにみえる。尋問終了後に清水が拍手した姿は、そのことを一層印象付けた。傍聴席の一番前に座る清水の様子は裁判官も確認しただろう。

(づつく)
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