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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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名刺広告強要事件 第9回(最終回)
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裁判所からお墨付きを与えられた原稿

今度は「原稿を短くしろ」と矢野

 3月7日の第9回和解協議では、矢野と朝木が先に法廷に呼ばれ、入れ替わりに私が法廷に入った。当然だが裁判所は、私が裁判の経過を公表することを止めることはできないと矢野に告げたのだろう。すると矢野が新たな要求をしてきたことがわかった。矢野は私が提出した原稿について、原稿の「どの部分について」などの具体的な指摘はないまま、原稿を短くしろといってきたのである。その理由は何なのか、裁判所から説明はなかった。

 いかなる内容でいかなる方法で発表しようが私の勝手で、矢野から原稿の長さについて指図されるいわれはない。これもまた憲法で保障された自由な言論活動に対する間接的な介入である。しかし、ここまで慎重に和解を進めてきた裁判所としては矢野から最終的に一定の和解金を引き出すことが目的でもあり、双方の了承を得られるのなら矢野の希望を容れるのもやむを得ないと判断したようである。裁判長は私にこういった。

「提出していただいた原稿については裁判所としては問題はないと考えている。ただ、被告が短くしてほしいといってきているので、内容については裁判所がお墨付きを与えるわけですから、短くすることを検討してもらえないか」

「引用した部分(矢野が掲示板で誹謗中傷を繰り返してきたこと)は本件とは直接関係ないので、独立したものとして公表することは可能です」

 私はこう答えたが、矢野の目的は別のところにあった。私と入れ替わりに法廷に入った矢野は今度は別の要求を出してきた。矢野は原稿を短くするのはもういいから、

「朝木明代の転落死について『潮』判決で『自殺を裏付ける証拠はない』とされているのだから、『万引きを苦にした自殺』という表現をやめてほしい」

 といい、その点を和解条項に入れてほしいといってきたのである。その場合には和解金として15万円を支払ってもよいということらしい。10万円以上の和解金の支払いは避けられないと考えた矢野は、おそらくこの日、最初から交換条件を出すことを目的に「原稿を短くしろ」といってきたのだろう。裁判所も「『潮』判決でそうなっているのは事実ですが、どうですか。その後なにか新しい事実が出てくれば、『万引きを苦に自殺』と書いてもいいと思いますが」という。

「明代の事件は本件とはなんら関係がない。それに『潮』判決でも『自殺の証拠はない』といっているだけで『他殺』と認定されたわけではない。裁判官の見解としてはわからないではないが、それを和解条項に書くと矢野と朝木はそれをもとに『他殺』という虚偽宣伝に使うことは目に見えているので、和解条項として入れることは容認できない」

 私はこう主張し、裁判官も最終的に明代の件を和解条項には入れないこととした。こうして裁判所から示されたのが下記の和解条項案である。

裁判所による和解条項案

1 原告と被告らは、今後、相互に対して違法に名誉やプライバシーを侵害する記事を執筆ないし掲載しないことを相互に約束する。

2 原告は、被告らに対し、今後、被告らに対する取材活動を行う際、東村山市議会本会議場においては議事の進行を妨害するような態様で写真撮影をしないこと、同本会議場の外においては被告らから半径2メートル以内の場所でフラッシュをたくなどして写真撮影しないことを約束する。

3 被告らは、原告に対し、本件訴訟費用相当額等として15万円を支払う。

4 原告は、被告らに対するその余の請求をいずれも放棄する。

5 原告及び被告らは、原告と被告らとの間には、本件に関し、本和解条項に定めるほか、何らの債権債務のないことを相互に確認する。

6 訴訟費用は、各自の負担とする。

(※この和解案は私が提訴した2件の事件に対するもの。平成15年以降、私は4件提訴したが、うち2件は途中で取り下げている。矢野が今もなぜ「4件の訴訟費用相当額」などというのか、その理由は私にはよくわからない)

 なお、この前段階の和解案にはもう1項、

「被告らは、2004(平成16)年11月から2007(平成19)年10月までの間に原告が執筆し、『月刊タイムス』に継続して掲載した記事につき、現在係争中のものをのぞき、新たに不法行為の責任を問わないものとし、原告もまた被告らの過去の記事等に対して不法行為の責任を問わないものとする」

 とする条項もあった。しかしこの条項については、私は即座に拒否した。「私はすでに次の訴状を準備している」というのがその理由である。裁判官はすぐに納得し、この条項は削除された。

 裁判所が示した和解案のうち1、2は私がどうこうというものではなく、取材の一般的、常識的なマナーのレベルの話である。15万円という和解金額についても、裁判所が私の原稿にお墨付きを与えたこと(裁判所に提出した範囲)、矢野は当初5000円しか払わないといっていたことなどを総合的に判断すれば、おおむね満足できるものと考えた。裁判所が示した和解案と矢野の「和解案5」を比較すれば、矢野の主張がことごとく否定されていることがわかろう。こうして、私は裁判所が示した和解案を受け入れることに同意したのである。4時に始まった和解協議はこのときすでに1時間30分近くが経過していた。

和解金を投げて寄こした朝木直子

 あとは矢野と朝木が裁判所に和解案に同意するかだけである。私と入れ替わりに法廷に入っていった彼らはすんなり受け入れるのか――すると、彼らが法廷に入って10分ほどたったころのこと、朝木だけが法廷から出てきてどこかへ行ったのである。どうしたのだろう?

 朝木は法廷から出てどこへ行ったのか。私が再び法廷に招じ入れられてはじめて、朝木がどこへ行ったのかを知った。法廷には矢野と代理人の福間が残っていた。矢野と朝木は裁判所の提示した和解案に同意し、和解金についてはすぐに支払うとし、朝木は銀行に金を降ろしにいったのだという。和解金を私が受領した時点で、当初の和解条項3を、

「被告らは、原告に対し、本件訴訟費用相当額等として、15万円を本和解期日の席上支払い、原告はこれを受領した。」

 と改め、終結とするという。朝木の行き先は裁判所の前の甲州街道を挟んだところにあるセブンイレブンだった。余談だが、このとき朝木がセブンイレブンに入るのを見ていた人物がいて、「何をやっているのか」と思ったという(ちなみに、この思い出深いセブンイレブンはこの4月に閉店となった)。

 5分もすると直子が帰ってきて、私の30センチほど隣に座った。それを見届けた裁判官は「では、被告は原告に和解金を渡してください」と朝木にうながした。朝木はテーブルの上で金の入った袋を持っていて、私の方向に動かした。私は朝木がその封筒を私に手渡すものと思って手を出した。しかし次の瞬間、封筒は私の手をすり抜け、パサッという音を立ててテーブルの上に落ちた。朝木は封筒を直接私の手には渡さず、テーブルの上に放ったのである。さすがに20年以上矢野と付き合ってきた女だけのことはあると、私は感心したものだった。

「では、原告は中身を確認してください」と裁判官がいうので、私が札を数えようとすると朝木はこういった。

「機械が数えているので間違いないですよ」

 裁判官も朝木を疑っているわけではなく、手続き上の確認にすぎないのだが、朝木はどうしても何か一言いいたかったのだろう。

 さて、私が和解金を受領してすべてが終わるはずだったが、矢野と朝木は朝木明代の「万引きを苦にした自殺」という表現に関して確認したいという。つまり、和解条項に記載することを要求して退けられた内容について、もう1度裁判官の見解を聞きたいというのである。矢野と朝木は裁判官の説明をメモに取ると満足げな表情を浮かべたものだった。しかしすでに、「万引きを苦にした自殺」については「タイムス裁判」において表現の相当性が認定されている。また念のために、法律上の「和解条項」とは判決文と同等の法律的効果を持っている。言い換えれば、和解条項に記載されていない部分についてはなんらの法的効力も持たないということである。

 こうして、結審から5カ月に及んだ長い和解協議はようやく終わった。裁判官が退廷したあと、私は矢野に「お疲れさまでしたね」と声をかけた。しかし矢野は、俯いて視線を下に落としたまま私に一言の挨拶も返さなかった。裁判終結後、矢野と朝木は「どうみても実質勝訴」などと騒いでいる。しかし少なくとも私には、その日の矢野の姿は「実質勝訴」した者のようにはみえなかった。

(了)
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テーマ:裁判 - ジャンル:政治・経済

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