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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

『民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒』(ユニコン企画発行、長崎出版発売、1200円+税)

現在の“東村山の闇”の原点である議席譲渡事件と女性市議転落死事故についてのルポルタージュ。今は絶版となっていて書店では買えないが、手元に在庫があるので、希望の方はこちらにメールしてください。書籍代+送料でお分けいたします。

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第11回

給料に名を借りた「資金洗浄」

 続く質疑をみよう。


井村  償還期間は10年ですか。

高野  一応、10年です。10年ちょっとか10年に足りないぐらいの幅です。

井村  それは完済しなければ、高野先生の本来の財産にはならないわけですか。

高野  ええ、そういうことですね。

井村  そういうことも考えられますね。

高野  そういうことです。

井村  ということは、今現在、その土地・建物は、金融機関の抵当物件であるということですね。そうしますと、1億3500万円を10年で返済できるというふうな見込みを考えられたわけですが、その根拠をお聞きしてもいいですか。

高野  ええっとー、あの、協議のときに最初から銀行さんが入っておりました。で、こんなこといっていいのかな、あの、入っておりました。で、あの、できる範囲の償還計画に対しても、東京都さんのこと細かな指示がありました。それで、あのー、まったくこちらの収入というのは、ほとんどといっていいほどありません。でも、保育にかける情熱はまったく衰えておりません。そんなところでお答えになるかどうかわかりませんが。

井村  企業の場合、これだけの借入をする場合、返済期間はだいたい20年というのが普通ですね。そういうことで、非常にちょっと無謀な返済計画だな、ということは逆にいえば、金融機関は魅力があったわけですね。そういうふうに思います。つまり、安定的な収入がある、それは何ですかと考えたときに、安定的な補助金、いってみればそれを担保に取るというふうな考えがあったのかもしれません。ただし、補助金ですから、それをそのまま返済に充当することはできないというところまで金融機関が判断したのかどうか。いずれにしても、金融機関側としては、補助金を担保に取ったのかもしれません。

(このとき朝木が傍聴席から)
「わけのわからないこといって」


 高野が最初に「土地も建物も自費で」と申し出たとき、東村山市と東京都はそのすべてが銀行融資によるものであると明確に認識していたのかどうかはわからない。しかし東村山市も東京都も、たましんが融資を決定した時点で、高野には保育園を開設するために必要な個人資産と呼べるものはないことだけは認識したはずである。

 井村委員が述べたとおり、厚生労働省通知「保育所の設置認可等について」は社会福祉法人以外の者から認可申請があった場合の審査基準の1つとして、

ア 保育所を経営するために必要な経済的基礎があること
イ 経営者が社会的信望を有すること

 と規定している。公益施設である保育園には継続性がなければならない。そのためには一定の経済的基礎が必要とされているのである。すると行政は1億3500万円の融資決定をもって高野には必要な個人資産があると判断したことになるが、その判断は正当なものといえたのか。

監査委員も「公金による私財形成のおそれ」と指摘

 また用地については自前で用意することとされており、土地代金に対する補助金は支弁されない。従来、寺院や個人の篤志家が保育園を経営している例は多い。その場合はいずれも十分な土地を保有しており、その基礎の上に保育園を経営している。仮に保育園の土地が差し押さえられるような事態になれば、保育園の運営自体が脅かされる。そうならないためにも、個人が保育園を経営する場合には土地は自前で用意するのが原則なのである。「土地は自前」の原則には憲法上の理由もある。憲法89条は公金の私的利用を禁じており、土地の取得に関しては補助金はいっさい出ないことになっている。井村が行ったこの質問は、厚生労働省が規定する「経済的基礎」の問題のみならず用地取得に関する憲法上の問題を含むものだった。

 高野の答弁の中で注目されたのは、「協議のときに最初から銀行さん(多摩中央信金)が入っていた」ことを明らかにした点である。たましんにとっての最大の関心は、どこまで確実に補助金が支払われるか、貸付金が無事返済されるのかという点だったのは疑いなかろう。補助金さえ確実かつ永続的に支払われるのなら返済が滞る心配はない。保育園の運営が適正に行われることが前提であるとはいえ、補助金の支払いを保証するのは行政である。たましんは順調に認可が下りるかどうか、また認可後に一定程度補助金の支払いが補償されるのかどうかを確認したかったのだろう。

 高野は「こんなこといっていいのかな」などと前置きした上でたましんが協議に立ち会っていた事実を明らかにしたが、これもいわば、事実上、融資の保証をしたのが行政である、すなわち行政も今回の契約に深く関与していることを公の場で念を押したということではあるまいか。

 たましんの融資1億3500万円に対し、土地の担保価値はせいぜい6000万円である(上物はゼロに等しい)。したがって、たましんは担保価値を超える額を融資するわけだが、それには相当の補償がなければなるまい。井村のいうように、それが認可(つまり補助金)だったと考えるのはきわめて自然なのではないか。とすれば、現実に存在しないものを担保にしたこの融資契約が正常なものだったといえるのか。また、補助金を原資にして土地・建物の融資を返済することが憲法89条の理念に反するものとはいえないのか。

 井村の発言に対して朝木は「わけのわからないことをいって」と野次を飛ばしたが、高野とたましんの間の契約であるにもかかわらず、その担保は補助金だったとしか考えられず、すなわち民民の融資契約に官が事実上一定の担保補償を行ったという特異な契約の実情を十分に理解していたのだろう。

 憲法89条との関係で土地代は補助金による返済が禁止されているため、返済計画では土地代は高野の給料から返済することになっている。給料をどう使うかは個人の自由だから問題なしとするのが行政の見解である。

 しかし、融資契約成立の前に補助金額が確認されていること、社会通念上の制限はあるとはいえ、高野の給料を決めるのは高野自身であること、高野の給料が返済計画の段階ですでに土地代金として計上されていることなどを総合的にみれば、高野の給料の実体は補助金そのものであり、この計画は給料に名を借りたマネーロンダリングを容認するものなのではないか。高野の場合、土地購入以前から継続的に受領していた通常の給料から土地代金を支払うというのとはわけが違おう。

 のちに監査委員会が「公金による私財形成のおそれがある」と述べたのは、監査委員からみても、明らかに違法とまでは断定できないものの、100%肯定できるものではないと感じたからにほかならない。日本には給料の性質までを規定する法律は存在しないのである。


(第12回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第12回

情報非開示の責任を行政に転嫁



(情報非開示問題と国最低基準)

淵脇委員  今回の話が初めて出たときにわれわれがびっくりしたのは、今まで認可保育園ができるというときには、東村山の中できちっとした形で公にされて、オープンな形で議論されてきたわけですね。ところが今回それがなかった。どうしてオープンな形にならなかったのかという疑問があります。

 それともう1つは、これはやはり内容的に最低基準のものであって、基準は満たしているんですが、市内の既存園、利害関係うんぬんは抜きにして、それらと比較してあまりにも格差が大きいとわれわれは感じております。それについて、定員を減らすとか、格差を減らすよう努力していただくことを考えられるのか、これらについてどう考えていらっしゃるのかうかがいたいと思います。

高野  あのー、オープンでないというのは、それはあのー、個人情報という部分があって、まあ、個人立というものですから、そういうことを行政の方はお考えになっているだろうかなー、というふうには思います。それ以上のことについては、ちょっと、私どもはわかりませんね。

 それから、最低基準のところ、確かに最低基準はクリアしております。で、さきほどもあのー、申し上げたんですが、あれだけの土地のところで有効活用、有効利用を、うまくいろいろ取り入れながら、そういうふうにやってます。この金額で、5億も3億もあれば、それは、それくらいの園を建てたいです。ですが、やっぱり許す範囲というのはそんなに大きなものではありませんでしたので、東京都さんの方からこと細かな指示がありまして、それで、ああいう園になったわけですね。

淵脇  それで今後はどうするんですか?

高野  それは、係争中ですので。あの申請は生きておりますので。ですので、それについては今、私の手の届かないところに行っております。


 情報開示の部分については、りんごっこ保育園の申請にあたって児童育成部会や議会がまず問題視した点である。認可保育園はすべて国、都、東村山の補助金によって運営される保育園で、したがって、りんごっこ保育園は個人立であっても公的存在であり、個人情報以外の情報はすべて開示対象である。当初、東村山市保健福祉部は「個人が特定される」などとして、設置者名はおろか園名さえ公表しようとしなかった。

 園の名前も明らかにしない認可保育園などあり得ないはずだが、東村山では定員80名もの保育園が設置者も園名も明らかにしないまま認可されようとしていたのである。これは高野の側が情報開示を拒んだからだった。高野の言いなりとなり、自ら責任をもって判断しようとしなかった東村山市保健福祉部の主体性のなさは目を覆うばかりだった。

 そのような行政の無責任ぶりはいうまでもないが、一方で公的存在であるにもかかわらず情報開示を拒んだ高野もまた責任を免れない。しかし高野は、ここでも自らの反省はいっさい示さず、行政にすべての責任を転嫁しようとしていることがわかる。 

 また最低基準ぎりぎりである点についての答弁も、すべての責任を東京都に押しつけるもので、質問の趣旨にはまったく答えようともしていない。むしろ「申請は生きている」とは従来の申請内容を変えないという意思表示にほかなるまい。高野は「係争中で、私の手の届かないところに行っている」というが、高野の考え方しだいで訴えはいつでも取り下げることができるのである。つまり高野のこの答弁は、児童育成部会の意見などには耳を貸すつもりはないと改めて明言したに等しかった。


(認証保育園の保育料)

井村  今ですね、最初のころのお話で、2001年2月に認証保育所B型を定員19名でスタートされました。保育料は、0歳~1歳児3万5000円、2歳児が3万円と、認可外の施設では市内では一番低料金であるというお話がありました。そうしますと、だいたいひと月あたり保育料収入というのは60万から70万ぐらいということですね。あとは補助金でまかなっていらっしゃる。そうすると、やはり内情は火の車に近いですか?

高野  (語尾を上げながら)そうでしょうかー?

井村  気になったのは、時間外の保育料については触れられていませんね。

高野  あっ、時間外はそうですね。でもあのー、……。

井村  そうすると、大雑把でけっこうですが、時間外でフルタイムで保育された場合、だいたい月額平均の保育料金はどのくらいなんですか?

高野  7時から(夜の)9時ということですか? それでも4万3000円ですね。

井村  だいたい平均してそれぐらいと考えてよろしいですか?

高野  でもあの、一部ですね、それは。早朝と夜の延長保育を合計しても4万3000円ですね。


 高野が経営している東京都認証保育所りんごっこ保育園(現在のりんごっこ第1保育園)の保育料が東村山市内の他の認証保育園よりも低かったのは事実である。高野はそれを強調することで他園があたかも利益第1主義であるかのように印象づけ、それによってりんごっこ保育園が他園に比べて良心的な保育園であるとする印象操作を繰り返してきた。

 しかし、明らかに法外な保育料を請求するのでない限り、保育園の質が保育料のみで決定づけられるものではない。保護者にはそれぞれの事情がある。保育園を評価するにあたっては、その保育園が保護者と十分に対話しているかどうか、あるいは親身に相談に乗ってくれるかどうかなど、単純に保育料のみで割り切れない要素は多かろう。いかに保育料が安くても、親をいっさい中に入れず、保育士と親との対話を可能な限りさせないようにしている保育園がけっしていい保育園とはいえまい。


(第13回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第13回
食中毒騒動での対応が経験のなさを暴露



(高野の経歴)

淵脇  個人では社会的な責任を負うことが難しい。ですからつばさ保育園については認可園になるについて法人化しますという話がありました。保護者の間では、いわゆる社会福祉法人や公立の場合に一番のメリットは何だろうかと話しました。私は個人というのは難しいと考えていましたところ、社会福祉法人も悪いところはある、企業も同じだと。だから、個人経営だから悪いということはないという話が出ました。ただ、あえて東村山に個人で作られるということでうかがっておきたいのですが、先生の保育経験についてこれまでの話ではわからなかったんですね。どこの園でどれぐらいの経験があるのかお話ししていただきたいんです。

 それともう1点は、延長保育料の件ですが、資料によると、認可園の延長保育料は1時間600円ということになってます。他の認可園についてはひと月2500円均一になってます。これだとりんごっこは延長保育料が非常に高くなるなと思います。フルで預けた場合、1日あたり2時間半で1500円、ひと月では30000円近くになります。この点が疑問に感じました。この点はいかがでしょうか。

高野  そのへんにつきましては、私は乳児院の経験が5年とちょっとあります。これは国と県から補助が出ている認可の乳児院です。で、あのー、それがまあ5年とちょっと。それから自分の子育てが済んでから勤務しましたのが、あのー、会社の中の企業内保育園ですね。で、そこもやはり0歳児から5歳児までおりました。で、主に0歳から3歳ではあったんですが、あのー、ここはやはり院内保育、病院のような院内保育と同じようなものですのでね、あのー、まあ15人から30人ぐらい、ちょっと数の方はけっこう波があるんです。

 その中で、夏休みとかなると子供が増えてきます。ですから、その中で学童ももちろんみました。で、あのー、様々の保育園でも、そこをお母さんの保育園に行きたいといって、わざわざお父さんが送られる方が半分もいらっしゃるんですね。まあそんな感じで、それが11年ぐらいですかねえ。そういうところです、経験の方は。

新保会長  参考までに付け加えると、施設の経営者としては今度の認証保育園が初めてということですね。

高野  そういうことです。まあそのー、企業内のときには主任をしてます。そこはけっこう、あのあちらこちらに13カ所そこの会社はそういう保育園を持っています。で、途中というか、合併とか企業にもいろいろありましたので、それがつい最近ではやはり、7つぐらいに縮小されたというふうになってきましたね、保育園も。



 高野の経歴については、乳児院が5年、その後企業内保育所に務めている。乳児院は0歳から2歳まで。りんごっこ保育園は認証のりんごっこ第1保育園(現在名)と異なり、0歳から5歳までの子供を預かる。りんごっこ第1保育園は0歳児から2歳児までしか預かっていないから、高野の乳児院の経験も生きよう。しかし認可園の場合は5歳までの子供を預かる。

 高野は乳児院勤務ののち、企業内保育所の勤務経験があると述べている。この企業内保育所とはヤクルトで働く人のための施設で、いわば企業内託児所である。国最低基準が定める保育所と企業内託児所の保育内容がどう異なるのか、あるいは保育の質において変わりがないのかどうかは私にはわからない。しかし、その法的位置付けやそれに基づく公益性、社会的責任には大きな違いがある。

 だからといって、保育の質において企業内所託児所が認可保育園よりも劣ると断定するつもりはないが、一般論として当然、保育所と保護者の関係も異なろう。食中毒騒動の際、高野と矢野は子供を病院に連れていった保護者を「園だより」などで「意図的に保育園を潰そうとした」などと執拗に責め、最終的に保護者は2人の子供を認可外保育所に転園させたが、保護者に対するこのような対応は通常の認可保育園ではあり得ない話だろう(企業内保育所でも、そうある話ではあるまい)。

 つまり、高野は企業内保育所の勤務経験があるというが、これは社会的責任の下での経験ではなく、認可保育園に求められる保護者対応についてはまったくの未経験とみなしてよかろう。その結果が、食中毒騒動での保護者に対する異常な対応となって現れたのである。



(延長保育料)

淵脇  もう1つの保育料の件はいかがでしょうか。

高野  そうですね、それらに対しましても、東京都さんの方から本当にこと細か、細かな、あのー指示があったんです。これらにつきましても、まあ、個人立というところがあったんでしょうか、ですから、これも東京都さんの指示通りのものなんです。

淵脇  東京都の指示があったから、1時間600円ということですか?

高野  指示があったからというより、こちらから提出しますよね、で、提出した申請書類は全部チェックされて返ってくるわけです。それでよしとしたものは、チェックされずにそのままOKされるわけですね。ですので、それは東京都さんの……。

淵脇  OKが出たと。

高野  そういうことです。

淵脇  そのことを行政の方に聞きたいんですが、「わくわく」(保育園)さんはひと月いくらですか?

須藤副会長  普通の認可とおんなじ。

淵脇  りんごっこさんを選んで入った場合に、認可ですから、延長保育を使った場合、通常の保育料プラス2万円とか3万円とかを払わなければならないですね。

須藤  延長は各園で決めていいんじゃなかったかしらね。

新保  自由なんですが、決めたときの料金が一律か、そうじゃないかということですね。

淵脇  そうなんですが、この値段は他の認可に入れた場合との格差が大きいんじゃないかと思うんです。

高野  それは、確認をしましてですね、あのー、意見を聞いていかなければならないことだと思います。必要であれば聞いていきたいと思っております。



 延長保育料については開園後、他の認可園と同じく1回あたり500円、月6回を超える場合は何回でも3000円ということになっている。この点については、高野は行政の指導に素直に従ったようである。なお、延長保育補助として市はりんごっこ保育園に対して月額26万7060円(平成19年度)の補助金を支払っている。


(第14回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第14回

歯の浮くような「保育理論」



(再び経営基盤)

井村 「保育所を経営をするために必要な基礎があること」――。さきほど、現在の認証保育所の経営はどうですかと、というのは、それをふまえての質問だったわけです。株式会社には資本金というものがあります。これは、会社が存続するかぎり維持しなければならないもので、これが必要な経済的基礎であるわけです。ところが、個人では資本金という概念はありません。個人は個人的な財産、貯えや不動産、そういうものしかありません。ですから、今現在の認証保育所の経営がどうかが気になります。それでですね、4月1日開園を予定されていたわけですが、それが現実には開園できないということになりますと、元利の返済が相当あると。

高野  元利まではまだ……。

井村  利息だけを今は返済されているということですね。

須藤  1億3500万の借金というと、10年で返すというと1年間に1500万円ぐらい?

井村  利息を入れて1600万円ぐらいですか。月額で元利120万円ぐらい。



 今年7月、札幌市の認可保育園が申請時に4000万円の借金があったにもかかわらず、それが寄付であるかのように偽装していた事実が発覚した。設置者は多額の借金があったのでは「経済的基礎」がないと判断されることを恐れたとみられる。その上この設置者は、借金返済のために職員から寄付を集め、またバザーや物品販売の売上を返済に充てていたという。つまり、この設置者の収入では返済能力を超えていたか、あるいは職員に借金の尻拭いをさせていたことになる。借金が保育現場に悪影響を及ぼしていた例である。

 経済的基盤どころか1億3500万円の借金を抱える高野は毎月の支払い額について明言しなかったが、はたして借金の返済が保育園の健全な運営に影響を与えていないのかどうか。とりわけ保育士が1人でも辞めればたちどころに国最低基準を下回ってしまうような保育士の配置状況(現在も国基準を満たしているのかどうかについては確認されていない)、保育材料費が他園に比較して著しく少なく抑えられている点など、どうみても経済基盤のないことが保育に影響を及ぼしているように思えてならない。


 
(高野の見る東村山の保育の現状)

井村  高野先生の最初のお話の中に、3年ぐらい前に「本当の意味の子育て支援をしてほしいという要請があって」というふうにおっしゃったと思いますが、先生が考えていらっしゃる子育て支援というのは、どういうことなのか。あるいは当市が行ってきた保育の現状というのが、先生の目から見て「ここが悪いんだ」「ここがいいんじゃないか」――そういうふうに思えるところがあったら、お話ししていただきたいんですが。

須藤  先生が考えたんじゃなくて、先生に勧めた人が考えていたわけでしょう?

井村  さきほどですね、先生の話の中に、現在の認可外保育所の改革に寄与してきたというお話があったんですね。ですから、やはり先生の目からご覧になっても、この3年間で東村山市の認可外保育園、保育室のここが悪い、というところがあったらぜひお話しいただいてよりよいものにしていきたいと思います。

高野  あのー、何が良くて何が悪いというものではないと思うんです。そこここの園のやり方があり、園の方針がありますよね、ですから、そのことにはちょっとズレがあると思います。私はあのー、やはり、まあ子供は、あのー宝だと思っておりますし、愛されてなんぼという、そういう子供たち、愛されて育った子供は愛された顔をしています。愛されずに虐待された子供は、虐待をしてしまいます。そういう意味の、まあ、保育、私はあのー、なんていうんでしょう、東村山のいいとか悪いとかそういうものじゃないんですよ、さきほどから申しますように、そこここのやり方があります。ですので、ただ私の考えとして、私の保育の理念として、あのー、たとえばけじめのある子、ですね。それから、人を、あのー敬ってくれる、要するに敬うことを知っている子、こういう子供を育てていきたいんです。



 高野はりんごっこ保育園のホームページでこう書いている。

〈認可外保育所などに、もうけ主義が蔓延している東村山の保育を改革するため、保育園をたち上げる協力を依頼されて、東村山市で保育園を始めました。〉

「もうけ主義」の保育所とは、要するに子供を口実にして金儲けしているという意味だが、それが事実なら、高野のいうようにたんに「園の方針」とか「いいとか悪いとかそういうものじゃない」ですまされる話ではない。高野はなぜ育成部会の場で堂々と「子供を口実にした儲け主義」を批判しないのだろう。それが「園の方針」なら悪質というよりなく、「東村山の保育を改革」するというのなら、まず最初に問題提起すべき話ではないのか。

 仮にホームページの記載に具体的根拠がないとすれば東村山の認可外保育所に対する誹謗中傷にほかならず、このような記載をすること自体、高野の保育園設置者としての資質が疑われることになろう。



(高野の保育理念)

高野  あのー、今の子供に何が欠けているかっていったら、やはり尊敬するというか、人を敬う気持ちというものが、ちょっとここんとこ欠けているんじゃないかなー、と思うんですね。で、自分はあのーいつもいうんですけど、やっぱり、人を尊敬するとか、親を尊敬するとか、それから先生を尊敬するとか、そういうものがないと、なんでもありみたいな状況になりがちではないかと、そういうふうに思うんですね。ですから、たとえば先生をちゃん付けとかさん付けとか、友達感覚のような、いうふうな保育というものは、私はまず、あのー、しません。

 というより、それは誰も狙ったんですよ。そういうものではないんですね。やはり、何かをしていて、いつもちゃん付けでやっているのがいけない、ほら、ということになると、はたして子供はそこでさっと切り替えられるかどうか、という大事な場面が絶対出てきます。ですので、ただ私はそういうことは好きではありません。

 であのー、さきほどの「けじめ」ではないですけど、人のお花畑をこう、なんていうんですか、平気で走り回ってお花をつぶしてしまったりですとか、そういう保育というのもやはり、私は違うんじゃないか、そう思います。児童館で、わがもの顔で、この児童館は自分たちのもの、みたいな感じで、赤ちゃんがそこで寝てても平気で飛び越えてしまったり、走り回ってしまうとか、そういうけじめのなさというのは、どうなんでしょう。

 そういうふうな保育の考え方、ですね。ですから、さきほど経済的なことをずいぶんいろいろ指摘して下さってありがたいと思うんですが、そういうものも確かにもちろん一番大事な部分でありますが、子育ての部分で、私は、あのー、忘れ物をして育ってはいけないと思うんです。そこだけは、やはりちょっと、ポイントをしっかり押さえないと、このたびあったホームレスの殺人事件のような、本当にあのー、人を大事に思う、そういう一番大事な部分を忘れて育っちゃった子供さんを、絶対、誰かがどこかで察知すればああいうふうにはならなかったと思いますし、あのー、どこかで絶対誰かが出してるはずなんですよ、だからあの子たちの、私がよくいわれたことにはね、そのー、0歳、1歳、2歳の一番大事な時期に、なんていうのか、そのときの忘れ物が、絶対に思春期に出ますよ、そういうふうなことをいわれてきました。

 ですが、その0歳、1歳、2歳の一番大事な時期に、きちんとしたちっちゃな世界のちっちゃなルールを守れるような、ちっちゃい子供ですけどね、そういうものを持って育った子は、思春期に入っても、きっと軌道修正できるはずです。そういう基礎をたくさん学んできました。ですので、そういう保育をしたい、そういう部分、うーん、答になってるかどうかわかりませんが。



「ちっちゃな世界のちっちゃなルール」を教えることも大事かもしれないが、それをどう教えるかが問題だろう。それにしても、保育士が子供にさよならもいえないままに退職していかなければならない状況をどう評価すればいいのだろう。これがどうして、子供に「人を尊敬すること」を教えることになるのか理解することは難しい。

 また「人を尊敬することの大事さ」をいう設置者のいる保育園で、わずか半年の間に14人もの職員がなぜ次々と辞めていくのか。食中毒騒動で子供を病院に連れていっただけの保護者がなぜその直後に転園したのか。不思議なことというほかない。


(第15回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第15回
「高野文書の作成者は矢野」と認めた高野

 これまでの高野の説明と保育に対する考え方がどれほど委員たちを納得させ、委員たちの心に響いたか。これまでのやり取りをみる限り、高野の答弁は委員たちの質疑に正面から答えようとするものではなく、話し合いによって委員たちの不安を解消しようとする姿勢さえ感じさせるものではなかったように思う。つまり、国最低基準をクリアし、所管の了承さえ得られれば、情報を開示する必要もなければ、まして保育関係者と話し合う必要も協力関係を構築する必要などないとした高野の基本姿勢には、認可申請当時となんら変わりはない。はたして続く質疑で、高野になんらかの変化は見られたのだろうか――。


 
(最低基準と保育理念)

柏木委員  私が気になるのは、これまで東村山で積み上げてきたものは、それが本当に子供に必要と思うから積み上げてきたものだと私は思います。基準が変わったから仕方がないわねという思いもあるんですけど、高野さんが20年間保育施設で働いてきたとおっしゃってね、大きな子供もみていらっしゃって、その中で子供の動きとか考えたときに、先生方の思いとか、最低基準といわれる状況ですとか、どうお考えなのかお尋ねしたいと思います。

高野 (基準が緩和されたことが)「転落」という言葉はどうかと思います。東京都の方もおっしゃっていましたけど、あのー、国基準は劣悪な保育環境ではないというふうにおっしゃってますので、その中でいっぱいいっぱい基準の中で、もちろんこれは最低基準をクリアしてますけど、それの上に立って、その上に成り立つ保育ですという、保育の内容を、それをよくしていく、そういう私たちの、保育士の力というものを考えていかなければ、と思いますね。あのー、最低基準を「転落」というふうにおっしゃられるのはいかがでしょう。劣悪ではないという、行政もおっしゃっています。

柏木  市はともかく、本当に先生はどう考えていらっしゃいますか。

高野  私も、それこそ人の力だと申し上げます。あのー、精一杯のところでやってきているわけですね。ですので、それは、えっとー、内容で、内容でクリアしましょう、そういうふうなことを東京都の人はおっしゃってました。ですので、あのー、子供たちが、その場のやり方、態勢を身につけていくその大事な時期に、だから庭が狭いというような、そういうものだけで必ずよさになって返ってくるというのはそれは違うと思いますし、やはりそこに、保育士の手が入るわけですよね。ですので、基準は基準、やっぱりその中を、自分たちが、あのー、いろんな工夫をしながらやっていく、それが私のいう精一杯の答ですね。

 すべてこれは、市の所管の方と力を合わせながらやってきたものですから、やはり、もう中身といったら、本当に自分たちの保育のやり方に立って、それから、子供たちを、何というんでしょうね、こううまく、自分たちのいろいろな思いもそうですが、保育園を出てからの行動もそうですが、自分たちがうまく加勢したり、リードしたり、それは保育士にかかっているものというふうに私は思っております。



「保育の内容」「保育士の力」「庭があるというだけで子供に必ずいい影響を与えるというわけではない」――高野はりんごっこ保育園が東村山市の他の認可園に比較して保育環境が貧弱であることを認めた上で、その分は「保育の内容(=質)」でカバーするといっているようである。
 
 高野の主張する「保育の質」とはいかなるものだったのか。開園から丸4年を迎えようとする現在までに起きた事実を見れば、この保育園が環境だけでなく「保育の質」においてもきわめて劣悪であることは明らかというべきだろう。

「保育の質」を重視する保育園で、わが子を病院に連れていった母親を責めたてて事実上退園に追い込むようなことは起こり得ないし、わずか半年の間に13名の保育士が相次いで退職し、園児や保護者を不安に陥れるようなこともないだろう。この2年間に、りんごっこ保育園では45人の転園希望が出され、計22人が転園したのである。



(育成部会は公平ではないと断定)

淵脇  今後、定員やベッドの問題を含めて、前向きにいっていただければ、この部会で検討していきたいと思っているんですが、そのあたりはどうですか。

高野  あのー、りんごっこ保育園は今現在開園していませんね。で、それに関して、あのー、まあ、さきほども申し上げましたけど、このりんごっこ保育園についてのいろいろな議論というものは、やはり、さきほども申し上げましたが、第三者機関である純粋な方々で話し合われるというのが、私は筋なのではないかなって、公平で、あのー、客観的な答を出されていただけるのではないかなと考えております。

淵脇  訴訟というのは取り下げることもできます。手の届かないところにあるといわれるんですが、話し合いの中で、あのー……。

高野  話し合いは、まだ、ほら……。

淵脇  まだこれからですが、第三者機関ということも含めて、どうしたら前向きになれるのかということを考えているんですね。



 ここで高野がいっているのは、児童育成部会が利害関係者の集まりであって、公平な議論が期待できない場所である――ということである。では、高野はいったい何のために育成部会の要請に応じることにしたのだろう。高野の狙いは定かではないが、確かなのは高野が最初から育成部会の委員たちに何かを理解してもらおうという気など最初からなかったということである。



(高野文書問題)

土屋委員  厚生委員会で、高野先生は準参考人として呼ばれましたね。認可の問題を扱う厚生委員会です。そのときは、先約があるということで出席されませんでした。そのときに、私は傍聴席に参りまして、厚生委員長が「高野先生より文書を提出していただいています」ということで紹介がありました。それから育成部会にも、高野先生は文書を提出されました。この育成部会に出された文書の中身について、それから私について書かれた箇所についてご説明いただきたいと思います。たとえば、「東村山の保育は子育て支援を口実とした営利主義といわざるを得ない実態となっていた」というところです。この中身については、これは高野さんご自身が書かれた文章ですね。

高野  関わっておりましたけど、まあ……。

土屋  高野さんの文章でしょう?

高野  そうです。関わっておりましたけど、正式にはそうではないですけどー、あのー、もちろんそれも加わっておりました。

土屋 「関わっていた」って、これは高野さんが書かれた文章ですね。この内容については責任持たれますね。高野博子と署名があって、はんこが押してあります。それからですね、さらに多摩東部建築事務所の課長が、「同業者で土屋という人物が建設反対といってきた」と書いてあります。私は多摩東部建築事務所なるものがどこにあるかも知りません。連絡をとったこともありません。ですから、私が「建設に反対」などというはずがありません。

(朝木  いいましたよ)

新保  ちょっと待って下さい。外でいわないで下さい。

土屋  私はそんなことはやっておりません。今でもそうお考えですか。私はそんなことをしたことはないですよ。

(朝木  事実じゃん)

高野  建築事務所の方が……。

新保  ちょっと待って下さい。そういうことがあれば、土屋さんは文書で出して下さい。

(朝木  いってますよ。そりゃ嘘でしょう)

新保  もしそういう事実があれば、建築事務所の方においでいただくのは問題ありません。



 土屋が建築事務所にクレームをつけに行った事実はない。その点を追及された高野が文書作成に「関わっていた」と、自分が書いたものではないこと、すなわち同居する矢野穂積が書いたものであるという事実を思わず口走ってしまったのは、高野がまったくあずかり知らぬ内容だったからだろう。だからこそ、高野が追及されるや、ただちに朝木が口を挟み、高野を援護した。

 しかし、発言権のない自分が割り込むことが高野の信用をますます低下させるものであることに朝木は気づいていないようだった。あさはかというほかないが、高野は認可保育園の設置者として、自分名義の文書の記載内容にすら責任を持てないような人物であることをみごと市民の前にさらすことになってしまったのである。


(第16回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第16回
「アドバイザー」の正体

 土屋委員が平成15年2月以降の「高野文書」の記載内容について聞いて以降、それまでは高野に保育の問題を聞く場だった児童育成部会の雰囲気が一変した様子がわかろう。とりわけ土屋の質問のつど高野の代わりに朝木直子が不規則発言を繰り返したのではなおさらである。騒然となりつつあった空気の中で、会長の新保庄三が土屋に文書の提出を求めて「高野文書」の虚偽問題にさっさと区切りをつけたのは普通ではなかなかまねのできない冷静沈着かつ鮮やかな議事整理だった。

 新保はその上で、まとめの質問に入った。



(面接に立ち会った「アドバイザー」)

新保  最後に私から少しだけお尋ねします。まず、職員採用をされてますね。何人ぐらい採用されましたか?

高野  28名です。

新保  そうですか。今はその方はどうされてますか?

高野  自宅待機、それから中にはお辞めになった方もあります。それから、野口の方で研修中の方もあります。

新保  その採用は、誰と誰が立ち会って、採用にあたってはどんな試験をし、どんなことを聞かれ、来られた方は年齢はどれくらいの方でしたか?

高野  私と、もう1人の方がおりました。内容は面接とピアノ、キーボードでしたが、それと、あと何でしたっけ、年齢としては経験20年の方、新卒の方が8名ぐらいです。

新保  面接の際におられたもう1人の方は、今後経営に参加される方ですか、それとも……。

高野  アドバイザーです。

新保  アドバイザーの中でも、保育に関わりのある方ですか?

高野  保育に関わる人ではございません、はい。

新保  これからもそうですか?

高野  アドバイザーです、あくまでもアドバイザーです。



 新保はおそらく、面接に高野以外の人物が立ち会っていたこと、またその人物が誰なのかについておおよその察しがついていたのだろう。

 高野は職員面接にもう1人の人物が立ち会っていたことを素直に認めたが(もちろん高野以外の人物が立ち会うこと自体は別に非難されるようなことではない)、その人物について「アドバイザー」と答えるのみで、それが誰なのか、また高野とどんな関係にある人物なのかについては明言しなかった。

 この当時、高野の関係者として公になっているのは朝木直子だけだった。しかし、高野と同居し、内縁関係にある矢野穂積が無関係ということはあり得なかった。りんごっこ保育園の認可問題が露顕したころ、矢野は高野との関係については否定しなかったものの、保育園問題については「いっさい関知しない」とかたくなに関与を否定していた。その後矢野は、高野支援の姿勢を鮮明にしているが、はたして矢野はたんなる支援者にとどまるのか。

 りんごっこ保育園が不認可になったあと、毎朝のように保育園に通う矢野の姿が目撃されている。当初、矢野が私に対して「いっさい関知していない」と答えていたのが虚偽だったことはすでに明らかだった。つまり矢野は、なぜかりんごっこ保育園との関係を隠したい理由があったことになる。それはまさに、矢野の関与度の深さを示していたのではないか。不認可決定後に行われた市との話し合いに矢野と朝木が同席していたことも明らかになっている。

「アドバイザー」であることを自白

 高野のいう「アドバイザー」とは誰なのか。

「あなたじゃないんですか」

 こう聞くと、矢野は即座にこう答えた。

「そんなレベルの低い質問には答えられない」

「レベルが低い」とはどういうことなのか。おそらく矢野は、自分が高野と同居していることと保育園の問題を混同するなといいたかったのだろう。しかしこの矢野の発言は、矢野と保育園の関係の深さを証明するものでもあった。なぜなら矢野は、「アドバイザーが誰か」と聞かれただけで高野との内縁関係が脳裏をよぎったということである。

 逆にいえば、面接の場にいたのが矢野以外の人物だったとすれば、私の質問は「レベルの低い」ものではなくなる。つまり、「レベルが低い」とは、「アドバイザー」が矢野であることを自ら告白したに等しいということになる。 矢野が保育園の人事に口を出していたとなれば、当然ただの支援者ということにはならないが、そのことを矢野はなぜ隠そうとしたのか。この事実は、まさに矢野が面接を含む人事を差配していた、あるいはきわめて深く関与していたことを示していたのではないか。また、保育士の資格も持たない矢野が保育園の人事を差配していたとなれば問題になる可能性があることを自覚していたということではなかっただろうか。


(第17回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第17回

児童育成部会長の懸念

 ここで、副会長の須藤が質疑の流れを無視するかたちで割り込んだ。須藤は戦後の混乱期から半世紀近く保育現場に携わってきた大ベテランで、これだけは聞いておきたいと思っていたのだろう。



須藤  たとえば、100坪であれば、せめて60名ぐらいの定員にして、ゆとりある建物にする相談をしたんですが。

高野  そうですね、最初のときに、私は、この計画が出されましたね、そのときにいろいろありましたんですが、やはり、そのときも銀行の方が一緒だったんですが、それで、そんなこともありまして、あのー……。

須藤  返済のこともありますね。

高野  まあ、そういうこともあります。ですので、ええと、私はちょっとうっかりしてたんですが、その場に、その銀行の方が、「あのときに市の方、市の方から『じゃあ81人でいきましょう』というふうにいわれましたので、よく覚えてますよ」といわれたので、「ああ、そういわれればそうだったね」というふうな感じで、あのー、記憶してるんですね。その間に、ありましたんですが、それがどなたかというのは、私はよく覚えてはいないんですが。



 須藤の質問は流れを無視したものではあったが、高野にとっては不意をつかれたのだろうか。認可保育園を経営する上で、定員を何人にするかは最も基本的かつ重要な事項である。定員によって補助金額も決まり、職員配置(最低人数)も決まる。その最重要事項をどう決めたのかを明確に説明できない設置者などあり得まい。かといって、「定員は借金返済計画に基づいて決定した」とはいえない。その結果がこのしどろもどろの答弁になったということだろう。

 しかし、高野の答弁はきわめてあいまいではあるものの、定員は銀行立ち会いのもとに決められたこと、基準いっぱいに園児を詰め込む計画が返済のためであることを認めたものと理解できよう。とすれば、りんごっこ保育園の基準ぎりぎりに設定された定員は借金返済を目的に詰め込まれたということになる。

 このやり取りを黙って聞いていた新保は、りんごっこ保育園について最後にこう結論付けた。



新保  全部通して聞いててね、基本的にね、保育のアドバイザーがいません。だから、僕はとても心配です。法律などのアドバイザーがいたとしても、保育のアドバイザーがいないとね、だからどういう方が面接に立ち会われたのかなと思って聞いたわけです。



 この児童育成部会から1年後の平成16年6月10日、高野のいう「アドバイザー」が矢野であることを証明する事実が公表された。東村山市議会に設置された「りんごっこ保育園設置者の資質と特定議員の関与に関する調査特別委員会」において、平成15年2月、職員採用面接を直接行ったのが設置者の高野ではなく矢野だったとする応募者の証言があったことが明らかにされたのである。その応募者に矢野の写真を見せたところ彼女は、面接をしたのは「この男の人に間違いない」と証言した。その後、退職者から取材したところでは、「矢野さんが理事長だと思っていた」「高野さんと矢野さんが一緒に住んでいることは誰も知らなかった」という証言もある。

 矢野と高野の関係、何かあれば矢野が交渉の前面に出てきたというそれまでの経緯からしても、矢野が面接だけでなく採用を決定していたと考えるのが自然だろう。保育士の資質は保育の質を決定づける重要な要素である。子供と直接接する保育士の採用にあたって、保育経験のまったくない者が決定的な役割を果たしたとすれば、これもまた保育園設置者としての高野の見識と資質が問われることになろう。

 しかも、実質的な人事権を持つとみられる矢野は、一般市民が普通に想像するような常識や良識が通用する市議会議員ではない。矢野は自分と対立する他人の意見はいっさい受け入れず、その相手に対して裁判を起こすことも辞さない人物である。りんごっこ保育園が認可されることになれば、この保育園に子供を預けるということは、間接的に矢野と関係を持つことを意味するのである。

 りんごっこ保育園が抱える多くの問題は、違法か違法でないか(違法の隠蔽も含む)のみを物事を決定する唯一の規範とし、保育そのものには関心のない人物が関わっていることに起因しよう。社会はそのほとんどが法律以前の道義や誠実さ、信頼関係によって支えられ成り立っている。そのことをむしろ否定する人物が深く関与する保育園が、市長の名において市民の保育を委託する認可保育園としてふさわしいものなのかどうか。

 またそのことが子供たちの未来にどんな影響を与えるのか。行政が1人の特異な議員の有形無形の脅しに屈し、道義的判断を放棄するとすれば、行政もまた矢野の企みに加担することになろう。新保庄三の締めくくりの発言はりんごっこ保育園の認可を否定するものにほかならない。

「どうすれば違法にならないか」という机上の計算のみによってはじき出された国最低基準の見本のような認可保育園を東村山市は認可するのかどうか。多くの保育園関係者が長年にわたって培ってきた保育の理念と良心が守られるのか、それとも根底から破壊されてしまうのか。東村山はまさにその瀬戸際に立っていた。


(第18回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第18回
問われた東村山市の主体性

 平成14年初頭以降の認可申請相談に始まり、平成16年10月1日の開園に至るりんごっこ保育園の認可申請問題は、たんに保育のあり方についての地方自治体の理念や考え方のみにとどまらず、地方自治体の主体性が問われるものでもあったと思う。

 平成15年6月17日、高野博子は同年4月30日に東京都が行ったりんごっこ保育園に対する不認可決定を不服として東京都、東村山市、東村山市議会などに対して東京地裁に提訴した。これに対して東村山市はどう対処したのか。

 東京都による不認可決定直後の平成15年5月から6月にかけて、東村山市は定員減などを含めて高野と話し合いを行うために市長や助役がりんごっこ保育園を訪ねている。すでにそれまで話し合いを拒否し、矢野や弁護士を通じて市長や助役を脅すような事業者に対して、行政の側、それもトップがなぜわざわざ出向くのかという疑問があった。東京都の不認可決定が下された時点で、東村山市は話し合いにも応じようとしないりんごっこ保育園をなぜ放置しなかったのだろう。

 東村山市が高野と正面から闘うことは議会に否決された計画(すなわち市長判断)が間違いだったことを自ら認めることでもある。行政(とりわけ市長)には、議会から予算を否決されたことでメンツを潰されたという思いがどこかにあったのではないか。あるいは、定員決定の場に金融機関を立ち会わせた市には、どうしても開園させねばならない事情でも生じていたのかもしれなかった。

闘う意思を見せなかった東村山市

 高野が提訴した裁判でも東村山市は、不認可決定を行ったのは東京都であり、東村山市は行政機関として淡々と事務を遂行しており、違法はないと主張するのみで、高野の認可申請そのもの、さらにはそれまでの高野や矢野の異常さに対する市としての主体的な意思をいっさい示さない応訴態度に終始した。もちろん、市の予算を否決した議会の意思をあくまで尊重するともいわなかった。東京都の応訴方針は、「保育の実施者である東村山市の意思を優先する」というもので、地方自治を尊重するという意味でも東京都の姿勢は一応理解できるものだった。

 被告である東村山市が高野の認可申請そのものについては争おうとせず、東京都が東村山市の判断を尊重するということになれば、裁判所が和解を勧告したのも当然のなりゆきだったのかもしれない。平成16年に入って裁判所は、

①原告高野は、損害賠償請求を取り下げ、再申請を行う。
②東京都は認可手続きを進める。
③東村山市は開園に向けた事務手続を進める。

 という内容の和解案を提示した。高野とその後見人である矢野穂積がこれまでどんな行動を取ってきたかを知らない裁判所は、認可基準を満たしていることのみを基準に、認可に向けた和解を進めることが最善の解決策であると判断したようだった。これに対して東村山市は、それまでの議会の意向を尊重して定員を減らすことが和解の条件であると回答した。

議会の意思を無視した和解条件

 しかし、東村山市の応訴姿勢がどこまで議会の意思を尊重するものだったのか、それから先の対応は大きな疑問が残るものだった。定員を減らすことが和解の条件であるとする東村山市の回答を受けて、裁判所は具体的な数字を示すよう指示した。すると東村山市は、なんとその場で「75名」という具体的数字を提示したのである。

 高野(矢野)側は当初、国基準をすでにクリアしていること、定員を減らせば借金の返済計画に支障が出ることを理由にこの条件を拒否したが、問題は東村山市が議会に相談もしないままなぜ「75名」という具体的な数字を出したのか、またその数字の根拠はどこにあったのかということだった。

 のちにそれを質された保健福祉部長は「(1人当たりの保育面積が)市内の公立保育園と同水準になる」と答えたが、実はそれは保育室のみを比較した数字にすぎず、ホールや廊下を加えた面積で比較すれば、やはり1人当たり面積の格差は歴然だったのである。

 さらに庭のないりんごっこ保育園が定員を75に減らしたところで、市内の公立保育園と同水準になることはあり得ない。重要なのは、東村山市が保育室のみを比較した数字を和解のテーブルに載せたこと、そして議会に対して、その数字によってりんごっこ保育園の保育環境が公立保育園並になるかのような説明をしたという点にあった。

 かつて東村山市内の園長数名がりんごっこ保育園を視察したことがあった。そのとき園長たちは異口同音に「どんなに多くても60名が限度」と答えたという。もちろんこれは保健福祉部長もよく知る事実である。当然、定員について議会に相談すれば、認可申請段階の81名からわずか6名減らしただけの「75」という数字が出てくるはずがなかった。つまり東村山市は、こうしたあらゆる状況を把握した上で、あえて独断で「75」という数字を提示したということだった。

 1億3500万円の負債を負った高野は毎月150万円近い返済をしなければならない。それには最低何人まで譲歩が可能なのか。それが東村山市の提示した「75」という数字だったとしか考えられなかった。東村山市は裁判で、高野に対して一定の保育水準の確保を求めるのではなく、1億3500万円の返済が可能となる子供の人数についておうかがいを立てたにすぎない。こうして和解協議は、いつの間にか「75名」が基準となり、どこまで高野の譲歩が得られるかという、保育にとってはまったく無関係な駆け引きが続けられることとなったのである。


(第19回へつづく)


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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第19回
議会の意向を無視した東村山市長

 東京地裁が和解を進め、東村山市が「75名」という和解条件を提示したことで、りんごっこ保育園の認可をめぐる裁判は和解に向けて動き出した。しかし、認可申請段階の定員81名が75名になったところでどれほど保育環境が改善されたといえるのか。少なくとも当時、自民党を除く与党会派(公明党、民主党=当時)は市が提示した和解条件を容認せず、市長に対して裁判の継続を申し入れた。

 しかし、細渕市長(当時)はこの申し入れを結果的に無視し、自民党にさえいっさい知らせないまま和解を決断したのだった。和解に向けた合意が成立したのは平成16年7月12日、しかも最終的に決められた定員は77名。認可申請から4名を減らしたものの、この和解内容によって保育環境が改善されたものとはとうてい考えられなかった。こうして、りんごっこ保育園は平成16年10月1日開園することになった(正式な和解成立は開園後)。

 では東村山市はその後、りんごっこ保育園の開園に向けて、保育関係者や議会に対してこの和解を含めてどう説明し、理解を得ようとしていたのだろうか。認可保育園は本来、その保育内容について地方自治体が主体性と責任をもって決定すべきものである。今回の合意内容が関係者の理解を得られなければ、この保育園はたんに法律上認められたというだけの孤立した存在となる。

 地域への説明もまったくなされておらず、理解を得るどころか、地元住民は戦々恐々として事態を見守っている。そんな状況のまま開園すれば、かわいそうなのは子供たちである。地域の理解がなければ、それでなくても狭い園舎に詰め込まれた子供たちは、ますます園内に閉じ込められることになりかねない。

行政は「再申請」と強弁

 認可と開園を前提とする合意が裁判所で成立したとはいえ、民主主義社会においてまったく市民に説明しないまま認可保育園が開園するということはあり得ない。本来なら市長が率先して説明の場を設定すべきである。しかし、市長の側からその動きはいっさいなかった。このため児童育成部会は市長に対し、りんごっこ保育園の具体的な扱いと東村山市の方針について説明するよう求めた。

 この段階ですでに、市長が和解を口実にして市民への説明を抜きにりんごっこ保育園を開園させようとしている様子がうかがえた。このことはまた、予算の扱いにおいても同様だった。認可保育園を開園するには当然予算措置が必要となる。本来なら東村山市は補正予算を組み、議会の審議を仰がなければならない。ところが当初、市幹部は保育関連予算の流用によってりんごっこ保育園への予算措置をすり抜けようとしていた。既成事実を作ってしまえば、いずれ議会も黙るだろうと市長が考えていたのなら議会軽視と批判されてもやむを得まい。はたして補正予算として提出されるりんごっこ保育園に対する予算措置を議会はどう判断するのか。

 児童育成部会から説明を求められた細渕市長が同部会で説明を行ったのは平成16年8月26日である。育成部会は平成15年12月に私立保育園の認可申請に関わるガイドラインを策定している。りんごっこ保育園についても、新たに申請を出し直すのなら、東京都への提出までにガイドラインに沿った手続きを行う必要がある。

 保育園関係者は、仮に当初の定員から4名減になったといっても、普通の民家2軒分に90名を超える人間が詰め込められることの危険性は変わらず、東村山市の認可保育園には園庭が必要と考えている。また、土地と園舎の費用がすべて借金で用意され補助金で返済されること、さらに返済後には高野の個人資産になるという巧妙なカラクリもあって、このままの認可を認める声は皆無だった。

 当然、ガイドラインを適用すれば、これらの問題点を解消するため設置者を交えた協議が必要となる。育成部会は高野を交えた協議の場を設定することを強く求めた。ところが、ガイドラインとの関係について市側はこう説明したのである。

「今回の申請は『再申請』で、ガイドライン策定前の申請ですので、適用されないと考えています」

市長の説明は中身ゼロ

 和解合意書(和解調書ではない)には「再申請」の文言はあるが、行政手続としての今回の申請は「新規の申請」である。東村山市が「再申請」とすることでガイドラインを無視しようとしていることは明らかだった。細渕市長は大要こう答えた。

「東村山には認可権限もありませんし、みなさんの熱意、精神を生かすよう最大限の努力をしていきますので、ぜひご理解ください」

 東村山市には認可権限がないから、認可される以上、開園を前提に進めるしかなく、市の指導には限界があるという趣旨のようである。東村山市が実施の判断をしたものについて東京都が審査を行い、認可決定を下すのであって、あくまで判断の主体は東村山市にある。ここでもまた市長は、実施主体である地方自治体としての主体的な判断を回避しようとしているようにみえた。「最大限の努力」をしても、今を生きている子供たちにとってそれが実現されなければ何の意味もない。市民を守るべき市長の、責任ある答弁と評価できるものとはとうていいえなかった。

「保育園はいろんな意見に耳を傾けて話し合うことを基本にしている人が作るんですよ。行政が実施者とよく話し合い、指導を聞き入れなかったら、そんな保育園を認可するのはやっぱりおかしいですよ」

 児童育成部会長の意見を市長はどう聞いたのか。市長が国基準の前では主体的判断ができないと考えているとすれば、それは地方自治体としての自律性を自ら放棄するものにほかならなかった。


(第20回へつづく)

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りんごっこ保育園問題とは何か(第2部)  第20回
議会を壟断した市長の思惑

 土地・園舎の原資はすべて1億3500万円の借金、その大半を補助金(国民の税金)で返済し、完済後はめでたく自分のものになるという、公金による私有財産形成の巧妙なカラクリと、子供を後回しに返済を最優先した施設と保育計画――。このような認可保育園を東村山市議会は容認するのか。りんごっこ保育園をめぐり議会の良識が問われた東村山市議会の補正予算審議は平成16年9月30日、市民が誰一人として思いつきもしなかった醜悪な幕引きを迎えた。――


「こんなかたちで議会の意思を封じ込めることは許されない」

「早く議会を再開しろ」

 平成16年9月30日午後12時、東村山市議会を傍聴に詰めかけた50人近い東村山市民は、市民の意思を付託したはずの議会に対するたとえようのない無力感と怒りに打ち震えた。 

 りんごっこ保育園への予算支出を審議する東村山市議会は、予定から6時間30分遅れの9月30日午後8時にようやく実質審議が始まった。しかし10時40分過ぎ、渡部尚議長(現東村山市長)が「休憩」を宣言して議場を退出したまま、会期の時間的終期である9月30日午後12時までに会議を再開しなかった。会期の延長を決定しないまま終期を過ぎれば時間切れとなり、議会は議決をしないまま終了するという規定に基づき、議会が議決すべき議案を議決しなかったものと市長がみなせば、(それが正当なものであるかどうかは別にして)市長の判断で予算を執行できるのである(専決処分)。

開園日を和解事項に盛り込んだ真意

 りんごっこ保育園の認可をめぐり、施設長高野博子から提訴されていた細渕一男東村山市長が議会の意向を無視して和解に向けた合意を成立させて以降、議会をはじめ市内のあらゆる反対を押し切っても保育の実施に踏み切ろうとしているのはすでに明らかだった。

 和解に向けた合意内容とは、

①高野は損害賠償請求を取り下げ、認可再申請を行う。
②東村山市は10月1日開園に向けた事務を進める。
③東京都は認可する。

――というものである。

 これに従って東村山市は8月15日発行の市報で園児募集を行い、9月15日の段階で59名の入園児が決定、9月23日、りんごっこ保育園はすでに入園説明会を行っていた。

 一般に行政が予算執行を伴う施策を決定するには予算の裏付けが必要である。予算を支出するには、義務的経費を除いて議会の承認(議決)がなければならない。りんごっこ保育園の予算もまた義務的経費ではなく議会の議決を必要とした。仮に合意どおりに東京都が認可決定を出したとしても、東村山市議会で予算が承認されなければ東村山市は予算の支出ができず、りんごっこ保育園について認可保育園としての保育の実施はできない。認可権限を持つ東京都の担当者も、仮に認可を出して保育の実施ができなかったとしても、それは東村山市の事情でやむを得ないとする見解を述べていた。法律的には「認可」=「保育の実施」ではないのである。

 ところが、なぜか市長は和解に向けた合意事項の中に、予算の裏付けがないにもかかわらず「10月1日開園」という項目を盛り込むことに同意していた。開園日が決まれば当然、8月には園児募集を行い、入園児の審査もしておかなければならないことになる。

 いかに認可権限を持つ東京都が認可したとしても、実施者(東村山市)の判断を抜きに開園させるなどということは地方自治の本旨に反しよう。地方自治体の意思を無視して保育の実施を強制するなど、今の時代にできるはずがないし、法律的にも不可能なのである。

 裁判所で東京都が認可することに同意したことに基づき、東村山市がそれをただちに保育の実施を意味すると即断したところに、東村山市の地方自治体としての主体性のなさ、地方分権に対する認識の顕著な遅れをみごとに顕していた。

 しかし、これがもともと細渕市長の狙いだったのなら、開園日を先に決めたことにも相当の理由があったことになる。本来、東村山市は予算の裏付けを得た上で開園日を決定し、入園募集を行うべきだった。しかしその後の行政の動きは、既成事実を先行させることで議会の動きを制限する意図だったことを示していた。

保健福祉部次長の虚偽説明

 平成15年3月、りんごっこ保育園の認可計画が関係者にさえ情報開示されないまま水面下で進められてきたこと、その保育環境が劣悪であることを理由に議会が予算を否決したのち、同12月には、このような混乱を防止し、東村山の保育の水準を守ることを目的として市長の委託により東村山市は「東村山市私立保育所設置指導指針」(=ガイドライン)を策定している。その中には、認可保育園申請までには児童育成部会で慎重に検討することなどの条件が盛り込まれている。当然、今回の認可申請もガイドライン策定後のことであり、その適用を受けることになる。

 しかし、児童育成部会にはかれば園庭や定員の問題が出て、改善を迫られることは必定であり、それに応じなければ開園は認めないとする結論が出る可能性が高かった。そこで行政は、今回の申請は新規の申請ではなく「再申請」だとする詭弁によってガイドラインの適用をすり抜けようとした。

 児童育成部会の委員の質問に対して保健福祉部次長は当初「再申請」と説明したが、東京都の見解は「新規の申請」であることが明らかになった。すると次長は、今度は「三者(高野、東村山市、東京都)の代理人で協議している」と意味不明の説明をしたものである。しかし、東京都に「協議」の事実があるかどうかを確認すると、そのような事実は存在しなかった。つまり東村山市は、議会や市民に虚偽の説明をしてまで10月1日の開園を押し通そうとしていたことがわかる。


(第21回へつづく)



(つづく)

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