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万引き被害者威迫事件 第11回
矢野は「2回しか行っていない」と明言

 平成15年7月4日、東京地裁で行われた「月刊タイムス」裁判における反対尋問では、「脅し」発言の有無以外に「訪問回数」にも焦点が当てられた。

月刊タイムス代理人 6月30日、あなたは万引きの被害者とされているところのお店へ行ってますね。

矢野 ええ、行きました。

代理人 何回。

矢野 2回だと言ってるのに、3回、3回言われるから、言葉がないんですがね。

代理人 明代さんと一緒ですか。

矢野 2回とも彼女と一緒です。

代理人 何のために。

矢野 何のためっていうか、まず、被害届を出すにしては、根拠はしっかりしてるのかなとか、これはたんに朝木議員の政治生命とか、社会的評価だけの問題じゃなくて、市民新聞というコミュニティーペーパーを出してますから、その信用にもかかわりますので、私も編集長としてきちんと聞いてみようという気持ちで行ったと思いますが。

代理人 店長に会えましたか。

矢野 いや、結局、パスされたようですね。

代理人 あなたはお店の人になにか、店長に言伝ててくれというふうに言って、帰りませんでしたか。

矢野 どうも、言葉づかいがひどい言葉づかいを使ったことになってるようで、私は別に伝えておけとか、店長出せとか、そういうへんな言葉を使ってないです。今回は反訳を出してないようなので、次回までに出すようにいたしますけれども、普通の会話をしてますよ。それは皆さんも別件でテープをお聞きになってると思いますが。

 これまでに紹介してきた被害店への来訪目的に関する4回の矢野の供述は、裁判の内容と時期によって若干の違いはあるものの、総合的にみて①「取材目的」であること、②行ったのは2回であること、③その時間帯は「午後7時ころ」、「午後8時まえ」であること、④脅すような発言はしていない、という点においてブレはない。いずれの尋問にも共通するのは、最後の決め手として矢野が持ち出したのが録音テープの存在だった。どう見ても、 「いろいろ聞くよりもこの反訳を見れば明らかでしょう」という口ぶりである。

 すると、訪問回数を含めて矢野の供述とは真っ向から対立するパート店員の証言をどう捉えればいいのだろうか。矢野の法廷での供述は、パート店員の証言および被害者の訴えが事実に反するもの、すなわち虚偽であると断定するものにほかならない。パート店員の証言によれば、矢野が店主に対する威迫発言をしたのは3回目の訪問時であるという。矢野が主張するように、行ったのが2回で、3回目が存在しないということになれば当然、威迫発言もなかったという理屈になる。


(第12回へつづく)

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万引き被害者威迫事件 第12回
矢野が提出した「会話記録」

 平成7年6月30日、矢野と明代はパート店員とどのような会話を交わしたのか。矢野が法廷に「取材目的」であることを立証する目的で提出した「会話のすべてを録音した」というテープの反訳を全文紹介しよう。

○○洋品店・女性店員との会話録音(反訳)
録音場所 東村山市本町所在○○経営洋品店
録音日時 1995年(平成7年)6月30日午後7時ころ及び同年6月30日午後8時まえ
録音・反訳 矢野穂積


――午後7時ころ、店内に、客がいなかったので、矢野、朝木両名店内に入る――

矢野  ええと、こちらの方(経営者)は?
店員  出かけておりますが。
矢野  えっ?
店員  出かけております。
矢野  経営者の方じゃないんですか?
店員  ちがいます。
朝木  ちがうんですか。
矢野  何というお方ですか?
店員  はぁ?
矢野  何というお方か、わかります? 名前、お名前。
店員  経営者ですか?
矢野  はい。
店員  経営者は……、「○○(店の名前)」さん、だとしかわかんない。
矢野  名前、聞いてない?
朝木  今日は、いらっしゃいます? じゃ。
店員  ちょっと時間の方は、わかりかねますけども。
朝木  何時まででしたっけ?
店員  8時までです。
朝木  8時まで。
店員  はい。
矢野  いつも、やってる方は、いらっしゃらないんですか?
朝木  いつも、どなたがやってらっしゃる? おたくが?
店員  いえ、日によって違いますけども。
朝木  経営者の方が、ここにいらっしゃるときもあるんですか?
店員  経営者がほとんどおりますけども、……ちょっと用事で出かけておりますので。
朝木  経営者の方がだいたいここにいらっしゃる?
店員  失礼ですが、どなた様ですか?
矢野  ちょっと取材。
店員  ああそうですか、はい。

――午後8時前、店内に客がいなかったので、両名、再訪問――

矢野  まだ、帰っておられない?
店員  まだ、帰ってきていないんですが。
矢野  終わりごろには、来られるんですか?
店員  ええー、ちょっとはっきりしたことはわからないんですけど。
矢野  あなたが経営者ではない?
店員  ええ。
矢野  ああそうなんですか。
朝木  経営者の方は、何とおっしゃる方ですか?
矢野  お名前ぐらいは?
店員  「○○(店の名前)さんとか、「○○(店の名前)」だけは知ってますけども。
朝木  でも、雇われてるんなら。
店員  つい、最近なんで。
矢野  何月くらいから?
店員  え、3月くらいから。
朝木  経営者のお名前くらいは、ご存じのはずですよね。
矢野  なんかね、取材というのはね、6月19日に、市会議員が万引きをしたという話を聞いたんですよ。
店員  私はわかりませんけども。
矢野  聞いてない?
朝木  あなたは、何日お勤めですか?
店員  私ですか?
朝木  はい。
店員  私は週3回で、もう一人の方が週3回。
朝木  こっちの店長さんは、だいたい毎日?
店員  はい。
朝木  あなたは何曜日?
店員  私は、火、水、金です。
朝木  そういう話は、全然聞いてません?
店員  今のとこ、何も……。
朝木  話くらいは、聞いてるんじゃないですか? こういうことがあった、という……。
矢野  でも、店長さんとは、会うんでしょ?
店員  はい、会います。
朝木  店長が、「こういうことがあったのよ」ぐらいの……。
矢野  警察に被害届を出されてるという……。
店員  店長に聞いてみないとわかりませんので。(※)
朝木  (※)こういうことがあったんだから、気をつけるようにぐらいのことは……。
矢野  特にね……。
店員  万引きはいっぱいありますから、そういうものは心掛けてはおりますけどね。
矢野  よくやられる?
朝木  よくやられるんですか?
店員  いらっしゃいませ。もうしわけございません。今、ちょっと……。

――客が一人、店内に入ってきたので、矢野、朝木両名退出――

 以上が反訳のすべてである(「録音の内容は反訳のとおり」とする矢野の供述によれば、テープにもこれ以上の録音は存在しないということ)。確かにこのかぎりでは、矢野と朝木が被害店を訪問したのは2回であり、店員が証言した矢野の威迫発言も含まれていなかった。すると、「オーナーに、無実の人を罪になると伝えてください」と言い残していったというパート店員の証言は聞き違いだったか、あるいは記憶違いということなのだろうか。


(第13回へつづく)


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万引き被害者威迫事件 第13回
素性を明かさない「取材」

 前回紹介した矢野の録音によるパート店員との会話記録によれば、明代の最初の取り調べが行われた日に彼らが被害店を訪問したのは2回であり、「脅し」と受け取れる発言も存在しない。しかし矢野にとって弱いのは、威迫発言があったとすればそれはただちに明代の犯人性を裏付ける証拠となるのに対して、仮に威迫発言がなかったとしても、それが明代の無実を晴らす証拠とはなり得ないということだった。

 矢野が提出した店員との「会話記録」の内容に基づいて具体的な尋問が行われたのは2回しかない。その1つは平成12年2月23日、東京地裁八王子支部で行われた万引き被害者を原告とする『東村山市民新聞』裁判における尋問である。この尋問で被害者の代理人弁護士は「訪問回数」ではなく、「取材」目的で来たはずの矢野と明代の行動や発言の不自然さを追及している。

 パート店員の証言によれば矢野と明代の訪問回数は3回だった。ところが矢野は「会話記録」を提出し、2回しか行っておらず威迫発言もしていないと主張した。その結果、尋問では回数が問題とされたが、本質的に重要なのは回数そのものではなく、この日に矢野と明代が店員に対して「何を言ったか」なのである。矢野の言い分を聞こう。

被害者代理人  これはテープの反訳ということで、原告の店にあなたがいらっしゃって取材されたというときの店員とのやりとりが書いてあるものなんですけれど、それでよろしいわけですね。

矢野  そのとおりです。

代理人  この反訳文で見ていきますと、あなたは最初に、来店した目的つまり取材ということをおっしゃってませんね。

矢野  私の目的は経営者ないしは店長の○○さん、○○さんという名前もわからなかったわけですから、経営者の方、責任のある方に取材をしたいということで、それをまずその方にお会いをするという作業をしたのが最初の経過だと思いますが。

代理人  この反訳文をずっと読んでいきますと、……店員が「失礼ですが、どなた様ですか」といったのを受けて、あなたが……「ちょっと取材」というようなことで、取材目的で来たという部分のやりとりはここの部分しかないんですか。

矢野  そのあとにありますよ。

代理人  午後7時ごろとなってますから、この日2回いらっしゃってるんですよね。

矢野  そうです。

代理人  7時ごろにいらっしゃったときの取材目的で来たというやりとりはこれだけじゃないんですか。

矢野  だから、帰る前にもう一度出直すという趣旨でその目的を伝えたということです。店主の方本人じゃないから、そういうふうに伝えて、伝えておいていただきたいという趣旨ですからね。

 普通は、名前を名乗り、次に来訪目的を告げるのが取材の順序である。ところが矢野は、最初に店主の名前を聞いておきながら、自分たちのことについては名前を聞かれても名乗ってもいない(最後まで2人は身元を明かさなかった)。さらに「どなた様ですか」と聞かれても、矢野は「ちょっと取材」と話をそらして名乗らなかった。つまり矢野は、「どなた様ですか」と聞かれなければ、自分たちの聞きたいことだけを聞いて、用件もいわずに立ち去った可能性もあるということである。きわめて自己中心的な態度であり、これはどうみても尋常な取材姿勢とはいえまい。

 一般論としては、相手や状況によっていきなり質問を突きつけた方がいいと判断する場合もないわけではない(その場合でも、名前を聞かれて答えないということはない)。しかしこの会話記録を見るかぎり、この「取材」がそのような状況にあったものとは見えない。来訪目的が「取材」であることを最後に伝えたのは、この会話が「店主に会うための作業」で、「店主にそう伝えておいていただきたいという趣旨」だったなどと矢野は供述するが、矢野も明代もこれが「何の」取材なのかは明らかにしていない。「店主に会うための」会話だったのならなおのこと、自分たちが何者なのか、何のための取材なのかを明確に伝えておかなければならない。とすれば、何の取材なのかも素性も明らかにしない矢野と明代の態度は、やはり客観的に見て「取材」に行ったものと理解することはきわめて難しいというほかなかった。


(第14回へつづく)


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万引き被害者威迫事件 第14回
隠し録りだった「会話記録」

 矢野のいう1回目の訪問時に、「取材」の目的も素性も明かさなかった矢野と明代は、次の訪問時には「取材」の目的らしきものを口にしたが、やはり2人が何者であるのかについては明らかにしていない。被害者の代理人は続いてこの点を追及した。 
  
代理人 2ページ目、午後8時前というのは2回目にいらっしゃったときですね。

矢野 はい。

代理人 まだ帰っておられないというようなやりとりの中で、この中であなたが取材に来たということを告げた部分を示していただけますか。

矢野 真ん中からちょっと下のところに、「取材というのは6月19日に市議会議員が万引きしたという話を聞いたんですよ」というふうに説明してあるはずですが。

代理人 ほかの部分はありますか。

矢野 それだけいえば十分だと思いますけどね。店主の方に取材をしたいということを再三言ってますので、それだけ伝えれば伝わるというふうに私は考えておりますが。

代理人 「取材の内容は市会議員が万引きをしたという話を聞いたんですよ」というふうにおっしゃってるけど、東村山市民新聞だけどということはおっしゃってないようですよね。

矢野 店主の方じゃないからそこまではよろしいんじゃないですか。

代理人 でも、取り次いでもらうにはそれぐらい言うのが普通じゃないですか。

矢野 それは考え方の問題で、店主の方が前にいればこういうふうなことで取材に来ましたと、名刺を出すとか、そういう手続きになりますけども、その方は、店主の方はいつ帰ってくるかもわからないという、私のお見かけしたところ、電話で連絡して来ないように言ったように見えましたので、その範囲にとどめただけですが。

代理人 あなたは取材されるとき、この件は別として、取材に自らいらっしゃることが多いんですか。

矢野 大事な件は編集長ですから行きます。

代理人 名刺とか、そのときには先方に置いてきたりしますか。

矢野 置いてくる場合もあります。そういう名刺を持っておりますから。

代理人 このときはどうでしたか。

矢野 先ほどもお話ししたでしょう。店主の方はいらっしゃいますかということをお聞きしたんですよね。いたら取材に応じてくださるということであれば、名刺を交換するとか、そのやりとりはありますよ。それはなかったんです。

代理人 取材に行って本人がいなかったんで、もう6月30日は会えなかったわけですよね。

矢野 はい。

代理人 あなたとしてはこのあとまたいるときに訪ねてこようかということは考えませんでしたか。

矢野 いや、その様子から見て、これは簡単に会える相手ではないなというふうに理解しました。

代理人 それはあなたの理解ですね。

矢野 7時に来て8時に帰る予定の人が帰ってこないわけですから、ああ連絡取ったんだなというふうに思いましたよ。

代理人 そういうことで来ても会えないだろうというふうに考えたということですか。

矢野 そうですね。直接行くと、反訳にも入っておりますが、お客さんがいますから、非常に取材としてはやりにくいんですね。お客さんが来ましたから出ていってくださいという趣旨で最後出ざるをえなかったんですから。いわゆるそういうのを直撃取材というんですか、直接取材をするというのは無理だという判断をしたんです。

代理人 あなたとしては直接店主本人に会えなければ自分の素性を明かす必要もないし、名刺を置いてくる必要もないというふうに考えたということですね。

矢野 そのとおりです。

代理人 これは録音されたものなんですが、この録音については店員は知ってましたか。

矢野 私は申し上げておりませんが。

代理人 テープかなにか見えるようなかたちで。

矢野 申し上げておりません。

代理人 いわゆる隠し録りですね。

矢野 それはそのとおりです。

代理人 ほかの取材でもそういうことはやられるんですか。

矢野 たまにはあります。大事な取材のときには、あとで担保が必要ですから。

代理人 要するに、録音しますよとも録音しますともいわないと。

矢野 そうですね。

 矢野は店員に対して「取材の内容は市会議員が万引きをしたという話を聞いたんですよ」と話しかけているが、パート店員がこれを「取材」内容の説明と受け取ったとしても、それでもなお身元を明かさなかった点について、矢野は相手が店主ではなかったからだと答えている。しかし、相手が誰であれ「取材」は「取材」である。どんな取材でも、取材相手が多い方がいいのは当然なのだから、相手が店員だろうとこれもやはりりっぱな取材活動であり、店主ではなかったから身元を明かす必要がないというのは合理的説明とはいいがたい。

 余談だが、最近、矢野と朝木直子はホームページで、市民が彼らに何か質問したい場合、さらに「回答をご希望の方は住所氏名もご記入を」と書いている。市民が市議会議員である矢野と朝木直子に何かを聞くには、氏名だけでなく住所までも明らかにしなくてはならないが、彼らが市民に何かを聞こうとする場合には相手の仕事を滞らせても、(住所はともかく)名前も名乗らなくてもいいということらしい。あるいはまさか、被害店に出向いた矢野と明代はそのとき、こっちも名前を名乗らないかわり、相手からの回答も必要ないと考えていたのだろうか。そんな「取材」はあり得ない。

 また、矢野はこのときまだ被害者が店に帰っていなかったことをもって「簡単に会える相手ではない」とか「連絡取ったんだな(その結果、店主は店に来ないことにした)」などと考えたというが、矢野がそう考えた根拠は説得力に乏しい。「社会的信用にかかわりますので、やはり市民新聞として総力を挙げて取材調査をして真相を究明しなければいかん、それを市民の皆さんに説明する責任があるだろう」(「許さない会」裁判での供述)とりっぱな「社会的責任感」に燃えて「取材」に行ったにしては、パート店員とのたったこれだけのやりとりでもう取材をあきらめたというのでは「新聞」の名に恥じよう(尋問の時期は前後するが、1つの事実に対する同一人物の供述なのであり、時期が前後するからという理由で整合性がなくても仕方がないということにはなるまい)。

 矢野は代理人の厳しい追及の前に、素性を明かさなかったことについて裁判官になんとか説得力のある弁明をしようとするあまり、「(本人には)直接取材をするというのは無理だという判断をした」というところまで行ってしまったようにみえる。しかしこれは、その後の矢野と明代の行動とも矛盾する。その2日後の平成7年7月2日、矢野は被害者本人に直接電話をかけ、同日、明代は支持者の小坂渉孝をともなって被害店に行き、被害者本人と顔を合わせているからである(この日の状況については拙著『民主主義汚染』でも触れたが、のちにあらためて詳述する)。

 この尋問では矢野の主張する「来訪目的」の不自然さ以外に、矢野と明代の特異な「取材手法」も明らかになった。本人がいなかったからとして、名前を名乗る必要のないと考えた相手との会話を隠し録りしていたのである。矢野あるいは明代が常にテープレコーダーを持っているという話はよく聞いたことがあるが、取材対象とは認めていないはずのパート店員との会話まで隠し録りする必要があるとはどういうことなのか。彼らがパート店員からなんらかの情報を引き出し、あるいは言質を取ることを期待していたとみられてもやむを得まい(再度訪問した場面では、特に明代がそう思わせる質問をしている)。

 通常、隠し録りという取材手法がアンフェアなものであることはいうまでもない。当然、隠し録りだったことを指摘されることは、矢野にとって心証的に不利な材料であるといえる。しかし矢野は、隠し録りであることを素直に認めた。「録音をそのまま反訳」したとして提出した「会話記録」に録音を通告する発言が存在しない以上、通告したと主張することは「会話記録」そのものの信用性を疑わせることになる。「録音については店員は知っていましたか」と聞かれた矢野は隠し録りを認めるほかなかったのだろう。


(第15回へつづく)

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万引き被害者威迫事件 第15回
万引き被害者の証言

 矢野は、明代の最初の取り調べ当日に被害店に行ったのは「取材」目的であり、被害者を脅すような発言はいっさいしていないと4度の尋問で供述している。一方、パート店員から矢野が言い残していった発言の内容を聞き、それを「脅し」と受け止めた被害者本人はどう供述しているのだろうか。また矢野側は、被害者のこの証言をどう否定しようとしたのか。まず、『聖教新聞』裁判における尋問(東京地裁=平成11年11月15日)の様子をみよう。

(主尋問)

被害者代理人
 あなたが被害届を出されたのちに、今回原告になっている矢野穂積さんまたは朝木明代さんが、あなたのお店に来たということはありますか。

被害者 あります。

代理人 何回ぐらい、ありますか。

被害者 全部で、朝木さんが3回、私は確認してます。

代理人 一番最初に来たときは、あなたはお店にいましたか。

被害者 いません。

代理人 じゃあ、どうして来たということがわかったんですか。

被害者 留守番に頼んでおいたパートさんに話を聞きました。

代理人 そのとき、お店に来て、何か矢野さんなり朝木さんが言っていったということはあるんですか。

被害者 はい。店長を出せということと、それから、訴えられるぞみたいな感じをいったという話を聞きました。

代理人 それは矢野さんがいったんですか、朝木さんがいったんですか。

被害者 矢野さんです。

代理人 朝木さんは何かいっていたということは、報告を受けてますか。

被害者 朝木さんは、お店の外で待っていたようです。

代理人 というように、パートさんがあなたに報告したんですね。

被害者 はい、そうです。


(反対尋問)

矢野代理人
 あなたのいう事件(万引き事件)があったあとに、朝木さんがあなたの家に3回来たとおっしゃっていますね。それは間違いないですか。

被害者 ええ。

代理人 そのときに、あなたの答の中で「店長を出せ」とか「訴えられるぞ」とか、そういうことをいわれたと、あなた自身が聞いたかどうかは別として、そういうことをいわれたと。

被害者 パートさんに「店長を出せ」と、矢野さんがいったと、聞きましたけれども。

代理人 あなたのいうように、朝木さんあるいは矢野さんが、朝木さんが万引きをしたというあらぬ疑い、こちらの主張からするとあらぬ疑いをかけられたんで、その事実関係について調査をした経過があるんですね。だから、これは東村山市民新聞というメディアを持っていますから、その新聞紙上で報道するための取材という意味もあるんです。この甲74号証(矢野が提出した「会話記録」)を見て頂くとわかるんですが、取材で、矢野さんが行って話をした経過があるんです。このときはちょうどあなたがいらっしゃらなかった。
 これはちょうど平成7年6月30日の午後7時ごろというふうに記録されていて、これは客観的には間違いないんですが、これはそのときの店員さんとのやりとりを録音したものを反訳したもの。この中には「経営者の方はいらっしゃいますか」とか、そういう質問をしてますが、少なくとも「店長を出せ」とか、あるいは「訴えられるぞ」とか、そういうようなことは、どうも読んでいただくとわかるんだけれども、録音されてはいないんです。

被害者 そうですか。

代理人 そうすると、あなたはその店員さんから聞いた話というのは、本当に訪ねてきた人が「店長出せ」とか、あるいは「訴えられるぞ」とかいうふうにいったというふうに聞いているんですか。

被害者 私が、そうですね、私がね。

代理人 あなた自身は、そういうふうに思っているということですか。

被害者 そうですね。

代理人 客観的な事実は知っていますか。

被害者 事実……その当時の。

代理人 要するに、どういうふうにそのパートさんにいったかということは知っていますか。

被害者 いえ、知りません。

 矢野側の反対尋問で最も重要な意味を持つのは、矢野側代理人から示された「会話記録」と、代理人の「これは客観的には間違いないんです」、「(脅しと受け取れるような発言は)録音されてはいないんです」という発言である。矢野と明代が店に来たときの様子については、被害者もパート店員から話を聞いただけで、直接現場を見たわけではない。「会話記録」を目の前で見せられた被害者が、それまで信じていたパート店員の話にいくばくかの不安を覚えたとしても不思議はない。しかも、矢野とちがって被害者が証言台に立つのはもちろん初めてである。矢野の代理人は、被害者もしょせんは矢野の発言を直接聞いたわけではなく伝聞にすぎないという弱点をつくことで「脅された」という被害者の確信を動揺させようとしていた。

 さらに、弁護士から「客観的な事実は知っていますか」と聞かれた被害者が、見ていない事実について「知りません」と答えてしまったのも無理もなかろう。それでも被害者が「聞いて知っている」と答えれば、代理人は「あなたは見たんですか」とたたみかけただろう。被害者は矢野が「脅し」と受け取れる発言をした現場を見たわけではない。矢野側の反対尋問の狙いは、「会話記録」を突きつけて被害者の認識の曖昧さを印象づけ、主尋問での「訴えられるぞみたいな感じをいった」という被害者の供述をひっくり返すことにあり、最後のやりとりをみるかぎりでは、矢野側の狙いは一応成功したようにみえた。


(第16回へつづく)

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万引き被害者威迫事件 第16回
裁判長を怒らせた矢野尋問

 被害店への訪問目的に関して被害者本人に対する最後の尋問が行われたのは平成12年2月23日(被害者が提訴していた『東村山市民新聞』裁判=東京地裁八王子支部)である。裁判の争点は「明代の万引きの事実はあったか」であり、被害者側代理人による主尋問では「万引き犯をどうして朝木明代と認識したのか」という点に尋問の大半が割かれ、平成7年6月19日の出来事についての尋問はされなかった。

 続いて矢野側代理人と矢野本人による反対尋問が行われたが、その後半で被告である矢野本人が被害者に対する尋問に立った。一連の朝木事件関連裁判の中で矢野が自ら尋問したのはこれが最初で最後である。矢野本人による万引き被害者に対する尋問を見よう。

矢野  あなたは別件の裁判(『聖教新聞』裁判)で、矢野とか朝木議員があなたのお店に3回来たというふうに証言されてますが、いかがですか。

被害者  いかがですかというか、それは本当ですかということですか。

矢野  間違いありませんかということです。

被害者  3回というのがですか。

矢野  はい。

被害者  3回という記憶が正しいかどうかというのは、1つは朝木さんと矢野さんが、たぶん警察から呼び出された日の夜だったと思いますけれど、パートさんのいるときに二人でみえて、外で朝木さんが待ってらして、矢野さんがパートさんに「店長はいるか」ということを聞いて、その次に、たまたまいなかったものですから、その日のうちの時間をずらして、何分かわかりませんが、もう1回来たということを話していました。その後矢野さんが来たということは聞いてないし、私も確認しておりません。もう一つは、朝木さんが、いつだったか忘れましたが、お礼参りというんですか、に来まして、男の方と朝木さんと、私が一人で立っているときにお店の中に入ってきて、にたっと笑って1周回って帰っていったということがありましたので、それで3回です。

矢野  3回来たのかと聞いたんです。

被害者  矢野さんが3回来たということはないと思います。

矢野  1日ということですか。

被害者  1日に2回。

矢野  朝木さんは何回ですか。

被害者  お店に来たのが、パートさんの話を聞けばそのときの2回。それから私のときに1回と、傘をさしてお店の前まで来たのが1回です。

矢野  朝木議員は何回なんですか。

被害者  4回来てます。

矢野  朝木議員は4回来ているんですか。

被害者  矢野さんと2回一緒に来て、お礼参りに1回来て、それから傘をさして時間をはかったかのように時計を見てお店の前まで来てまた帰っていきました。

矢野  私が1日に2回来たのと、朝木議員が4回だということですね。

被害者  はい。

矢野  私があなたの店に行ったときのお話ですが、パートさんから取材で来たというふうには聞いてませんか。

被害者  それはわかりません。

矢野  覚えてないんですね。

被害者  はい。
 
 実はこの尋問の前に1つ、記録に残っていない尋問がある。弁護士から引き継いだ矢野が最初の質問をしたときのことである。被害者が答える前に裁判長が介入して、矢野にこう聞いた。

「その質問は本件と何の関係があるんですか? 質問の意図は何ですか」

 矢野は裁判長に向かってこう答えた。

「原告(被害者)の人間性を明らかにしようと思いまして」

 矢野が被害者の「人間性」を問おうとしたとは驚きだが、矢野はまず相手を困惑させて動揺させ、自分のペースに引き込むつもりでもあったのだろうか。しかし、矢野の返答を聞いた裁判官は即座に厳しくこういった。

「法廷は人間性を問う場所ではありませんよ」

 矢野はただちに質問を撤回したが、この時点で裁判長は矢野の尋問全体の意図と方向性を見抜いていたのでないだろうか。

 さて、この裁判の争点は矢野と明代が『東村山市民新聞』で、万引き被害者が万引き事件を捏造し、根拠もなく明代に万引き犯の濡れ衣を着せたかのような報道をしたことに違法性があるか否かという点にあった。矢野が明代の無実を主張するのなら事実に基づいて被害者を追及すればよいのであり、とりわけ明代の死後、明代の万引き犯の汚名を晴らすと言い続けてきた矢野が、明代の万引きを主張する当事者との直接対決の場という絶好の機会を前にして、事件とは無関係の話を持ち出すヒマなどあるまい。要するに矢野は、被害者の主張を正面から突き崩す事実的根拠を持ち合わせていないがゆえに本筋から離れたところで被害者の主張の信用性を低下させようとしたのだろう。

 最初の質問を撤回したあとの矢野の尋問の内容も、まさに本質を離れた部分で「脅し」発言の存在を否定しようとする狡猾きわまるものというほかない。矢野がこの尋問の中で、被害者がパート店員から聞いた矢野の「脅し」発言の内容ではなく、来訪回数のみを執拗にただしているのは事前に十分計算されたものである。

 パート店員の証言によれば、平成7年6月30日、矢野と明代が被害店に来たのは3回で、うち最後の1回は矢野だけが店内に入り、明代は外で待っていた。7月2日に店にやって来たのは明代だけである。事件から4年半がたち、しかも法廷という場所で、この間さんざんビラで立て続けに「根拠もなく朝木明代に万引きされたとして被害届を出した」などと誹謗され、直接は関係のないメディアの裁判でも「虚偽の証言」をしたとして相次いで提訴してきた矢野本人と直接対峙し、被害者がすべてを自分が体験したわけではない訪問回数について混乱が生じたとしても無理はない。

 被害者は1年前の『聖教新聞』裁判での尋問で明代の訪問回数について「全部で、朝木さんが3回、私は確認してます」と答えている。被害者の記憶の中でこの「3回」とは、おそらく6月30日に店に入ってきた2回と7月2日の1回を合わせたものだったのだろう。矢野は『聖教新聞』裁判での被害者の供述をふまえながらまず、「矢野とか朝木議員があなたのお店に3回来たというふうに証言されてますが、いかがですか」と聞いた。矢野の質問には被害者の供述にはなかった「矢野とか」という文言がいつの間にか入り込んでいた。おそらく矢野は、その後に明代が1回行っていることを前提にこう聞いたのだろう。そうなれば、明代も矢野も6月30日には2回しか行っていないことになり、少なくとも回数に関しては、矢野の提出した「会話記録」の信憑性が裏付けられることになるわけである。これが矢野の狙いであり、この尋問の場においては、矢野は被害者を自分の土俵に引き込むことに成功した。

 矢野と明代の発言の順序にしてもパート店員の証言とは食い違っている。事件発生後、矢野と明代、さらには彼らの支持者である小坂渉孝らによる執拗な嫌がらせを受けてきた被害者にとって、矢野と明代の記憶はできれば脳裏から消し去りたいものにほかならなかった。矢野と明代によるお礼参りに関する主要な事実は矢野が被害者に対して「証拠もないのに訴えると罪になる」という威迫発言をしたことで、その他は枝葉の話にすぎない。被害者が矢野の威迫発言以外の部分について記憶が混乱していたとしても矢野と明代の行動に関する評価にはなんら影響がないし、細部に関する被害者の記憶の混乱を誰も責められない。

 一方矢野は、「私が1日に2回来たのと、朝木議員が4回だということですね」と最後に念を押し、「はい」という供述を引き出した。このやり取りで矢野は、尋問の目的を達したと考えたにちがいない。それが判決に影響するかどうかは別にして、矢野は一応、訪問回数の上では「威迫発言は存在しない」と主張できる根拠を得たことになったのである。

(第2部 了)

(第17回へつづく)


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万引き被害者威迫事件 第17回
記録されていなかった発言

『東村山市民新聞』の記事によって名誉を傷つけられたとして万引き被害者が矢野と朝木直子を提訴していた裁判で、東京地裁八王子支部は平成12年11月29日、矢野と朝木に対し連帯して100万円の支払いを命じる判決を言い渡した。その後、矢野と朝木は控訴したが平成15年7月31日、東京高裁が矢野らの控訴を棄却し、終結している(この裁判の詳細についてはあらためて書く機会があろう)。

 しかし、矢野と明代による被害者に対する威迫の事実関係については直接の争点ではなく、一審、二審とも判決文の中では触れられていない。矢野の側からすれば、敗訴はしたものの、威迫の点においてはわずかに、明代が万引き犯であると主張する側の傍証を否定する材料だけは残すことができたということになるのだろう。しかも矢野はこの裁判で、被害者の口から「矢野が来たのは2回」だったという供述を引き出し、矢野が提出した「会話記録」が正確であると主張できる言質を取ったかたちとなった。

 ところが一方、被害者は一貫して矢野が「『無実の人を訴えると罪になる』と言い残していった」と証言している。「行ったのは2回だ」とする矢野の主張と、会話記録には存在しない発言が「あった」とする被害者の主張の根本的な食い違いをどう理解すべきか。パート店員の証言が勘違いだったのか、その報告を受けた被害者の思い込みにすぎないのか。あるいは、そのどちらでもないとすれば、矢野の提出した反訳に偽造があることになる(矢野自身が4度の尋問で「会話記録は反訳のとおり」と供述している以上、たんなる誤りではあり得ない)。

 そこで私は、矢野が「正確」に反訳したと称するテープ(矢野がダビングして証拠提出したもの)によって、矢野反訳の正確性を検証してみることにした。「許さない会」裁判までは威迫発言の有無が直接的な争点ではなかったため、それまで誰もテープを聞き直すことによって反訳の正確性を検証したことはなかったのである。テープを直接聞くことによって、反訳の正確性だけでなく、平面的にしか再現できない反訳からはうかがい知れない言葉の調子や語気の強弱などといった、矢野と明代による「取材」の全体的な雰囲気も感じ取ることができるだろうとも考えた。

 私が店員との会話を録音したテープを聴いたのは平成14年10月のことである。同年10月3日、「許さない会」裁判で矢野が提出したものである。この日の尋問でやはり矢野は、会話は反訳のとおりであり、被害店に行ったのは2回であると供述している。では、実際にこの録音テープを聴いた結果はどうだったか。

 まず、矢野がいう1回目の訪問時の記録からみていくと、1回目については反訳のとおりだった(本連載第12回参照)。その口調も店員を責めるようなものとはあまり感じられなかった。しかし、その内容をみると、矢野が「失礼ですけど、どなた様ですか?」と聴かれた際、「ちょっと、取材」と答える様子は、やはり話をそらして名乗らなかったという雰囲気であることは否定できない。また、店に入った矢野の最初の問いかけである「こちらの方は?」という発言も、断定はできないものの、見方によっては、相手が被害者本人ではないことを矢野と明代が認識していたことを示しているようにも聞こえよう。なお、矢野がいう1回目の訪問時に明代が店の営業時間について「何時まででしたっけ」と聞き、「8時」までであることを確認していることにご注意いただきたい。

 矢野のいう2回目の訪問時の会話記録では、二人の口調とそれぞれの姿勢に若干の変化が感じられた。最初は矢野が口火を切るかたちで話しかけているのは1回目と同じだが、途中から明代が積極的、主導的に質問するようになり、口調も最初は穏やかだが、しだいに問い詰めるような調子に変化している。たとえば矢野が提出した会話記録の最後半の「お話ぐらいは聞いてるんじゃないですか? こういうことがあったという……」や「店長が『こういうことがあったのよ』ぐらいのことは……」という明代の発言には、「何も知らない」としか答えない店員に対するなにか苛立ちのようなものさえ感じられた。このあたりになると、矢野は詰問調になってきた明代の質問に割って入り、むしろ双方のなだめ役になっている。

 このしだいに高揚してきた感のある明代の発言の中に1カ所だけ明らかな「記録漏れ」があった。テープを聞くと、本連載12回目の※と※の間には次のような明代の発言があった。

「おかしな人たちですね」

 その口調は低く強く、どう聞いても店員を責めているようにしか聞こえない。続いて矢野が「へぇーっ」と、明代の詰問をなんとか中和しようとしたのか、小さく意味不明の声を上げている。

「どういう事情かわからないから取材に行った」という明代が、万引きの話は何も聞いていないという店員の話を聞いて、何度も確認するというのならまだわかる。しかし、店には店の事情というものがあり、店主がパート店員に万引き事件のことを話していなかったとしてもさほど不審なことではないし、店員が「聞いていなかった」ことについて仮に明代が不審を持ったとしても、いきなり「おかしな人たちですね」とまで飛躍し、非難する理由はあるまい。少なくとも明らかに冷静さを欠いた発言であり、被害店に対して明代が特別の感情を抱いていたと思われかねない発言である。だから矢野は、反訳で注意深く削除したのではないかと推測できた。

 つまり、明代が被害店に対して特別な感情を抱いていたということになれば、矢野がこれまで法廷で供述してきた「身に覚えがなく、どういうことなのかを確認するために行った」、すなわち中立的な立場で「取材に行った」とする趣旨の主張に大きな疑問符がつくことになる。矢野が意図的にこの発言を反訳から削除したのは明らかだった。この点について、私が作成した新たな反訳に基づいて行われた「許さない会」の尋問(平成14年11月28日)で矢野は、

「これはたぶん、発言がだぶっているので、十分に聞こえなかったので、反訳のときには起こしてないんだと思いますが、こういう部分があったとしてもおかしくないと思いますけども」

 と答えている。しかし、明代の語尾のあたりで矢野の「へぇーっ」という意味不明の声がわずかにかぶっているものの、明代の発言は明瞭に録音されていたのである。


(第18回へつづく)


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万引き被害者威迫事件 第18回
矢野は録音テープの編集を否定

 矢野のいう2回目、「午後8時前」に行ったとする会話記録の、正しく反訳された発言の中にも不自然な点がある。2回目の冒頭部分にある矢野の「終わりごろには来られるんですか?」という質問である。矢野の主張によれば、1回目に行ったとする「午後7時ころ」、矢野と明代は被害店が8時には閉店することを確認している。だから矢野と明代は、閉店まぎわの「午後8時前」にもう一度行ったと主張している。「午後8時前」とはすなわち「終わりごろ」である。

 その「終わりごろ」に行った矢野が、「終わりごろには来られるんですか?」と聞くだろうか。逆にいえば、実際に彼らが行ったのが「終わりごろ」ではなかったから「終わりごろには来られるんですか?」と聞いた、ということなら少しも不自然ではない。つまりこの発言は、矢野のいう時間帯が「8時前」ではなくもっと前だったことを示すものではないのか。

 パート店員の証言によれば、明代の最初の取り調べ当日、矢野と明代が被害店に現れたのは「午後5時20分頃」「午後7時頃」「午後8時前」の3回である。仮に事実がそうだとすれば、矢野と明代は午後5時20分に来て閉店時間を確認し、午後7時頃に来たとき、矢野の会話記録にあるようなやりとりをしたということなら、矢野の「終わりごろには来られるんですか」という質問は少しも不自然ではない。

 矢野が法廷に提出した録音テープはもちろんダビングされたものである。私が聞いたかぎりでは、明代の「おかしな人たちですね」という発言が記録から削除されていたこと以外に一カ所、プッと録音が途断したような不自然な音が入っていた。それが何の音なのかはわからないが、ダビングである以上、複数の声がかぶっていない箇所なら、マザーテープを停止させることである発言を消すことも不可能なことではない。

 もちろん、矢野は一貫して否定しているが、仮に彼らが3度(被害者は最後は矢野が1人で入ってきたと証言している)被害店に行っており、3度目に矢野が被害者に対する威迫と取れる発言をしていたとしても、その録音をダビングの際に削除することは、会話の途中と違ってきわめて容易なことは誰が考えても明らかである。2回目の会話が終了した時点でダビングも終了すればいいだけなのだから。いずれにしても、少なくとも明代の「おかしな人たちですね」という発言が「会話記録」から削除されていたという点において、矢野の提出した「会話記録」の信用性は大きく揺らいだことだけは事実だった。

 これらの疑問について矢野はどう応えたのか。平成14年11月28日に行われた「許さない会」裁判の反対尋問における矢野の供述をみよう。

「許さない会」代理人  このテープなんですけれども、一連のつながりのテープとして反訳を出されました。そのテープ自体、ダビングはともかく、テープを編集しておりませんか。

矢野  そういうことありません。お渡ししたテープそのものが一連のもので、途中で止まっておりますけれどもね、一連のテープですから、編集するようなことはないですね。

代理人  途中では止まってるというのは、1回目訪問、2回目訪問の間に止まってるということですね。

矢野  そうですね。1時間待ちましたから、1回帰ったときに、それは止めているということですね。

代理人  お店に行って会話してる途中では、テープを止めたということはありませんか。

矢野  いや、止めてないですね。それは専門家に鑑定していただければ、すぐわかることだと思いますよ。

代理人  ……あなた方がいう2回目に行ったときの会話(矢野が提出したテープに基づいた新たな反訳)の中に、「録音テープ途断の跡」というふうに書いてあるんですけども、そこでテープが1回切れてると、で、またスタートしてるというふうに言ってるんですが、記憶ありません?

矢野  それは、だから、鑑定書でもお出しになればいいと思いますが、まだ帰ってきてないんですかって聞いてますから、8時少しぐらい前に行ったときに録音をしていたものですから、途中で止めたということはないですね。

代理人  テープ自体はいじってないと。

矢野  そうですね。

 テープ途断の跡については、そう聞こえるにすぎないのかもしれないし、矢野がダビングの段階でテープを編集したと断定できる証拠はない。しかし、矢野が提出した「会話記録」の時間帯が違うということになれば、すなわちそうすることによって矢野が3回目の訪問時の矢野の発言をなかったことにしようとしたとすれば、テープが「一連の」ものであり、テープの改ざんがなかったのだとしてもなお、矢野が「会話記録」を改ざんしていないということにはならない。


(第19回へつづく)


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万引き被害者威迫事件 第19回
矢野自身が証明した「会話記録」の作為性

「許さない会」代理人による尋問は続いた。次に代理人がテーマとしたのは、矢野が2回目、「8時前」に行ったとする発言の中で、閉店まぎわであるにもかかわらず「終わりごろには、来られるんですか?」と質問していることの不自然さについてである。少し長いが、非常に興味深い尋問なので、「市民派」を自称する東村山市議会議員、矢野の生の供述をノーカット、編集なしでじっくりご覧いただこう。

代理人  前回、供述の中で、店が8時までだというふうに聞かれたんですね。

矢野  そのとおりです。

代理人  で、8時少し前なら帰ってるんですかというふうに聞いて、それで8時少し前に行ったんだとおっしゃいましたね。

矢野  そのとおりです。

代理人  あなた方の反訳だと、正確にいうと、終わりごろには来られるんですかと聞いてる。

矢野  そうですね、たぶんそういう聞き方だったと思いますね。

代理人  それに対して、店員が、ええーちょっとはっきりしたことはわからないんですけど、というふうに答えてる。

矢野  そういう会話の前に、8時ごろというのが、どっかでやりとりで出てると思いますが。

代理人 「何時まででしたっけ?」と朝木さんが聞いて、「8時までです」と。

矢野  そうですね。

代理人  そうすると、終わりごろには来られるんですかと聞いて、まあ、はっきりしたことはわかんないんですけどと。

矢野  どっかに発言があったと思います、店員の方が、いつごろ帰るのか。

代理人  示しましょうか。

矢野  この部分ですね。1ページの下から4行目に、朝木さんが、経営者の方がここにいらっしゃるときもあるんですかと聞いたときに、店員が、ほとんどおりますけれどもちょっと用事で出かけておりますというやりとりがあったので、で、8時に終わるということですから、ちょっと用事で出ているけれども8時という終わりの時間には帰ってくるっていう判断をしたんだと思います。

代理人  あなたが、「終わりごろには、来られるんですか?」と言ってますね。

矢野  ええ。

代理人 「ええー、ちょっとはっきりしたことはわからないんですけど」というふうに答えてるね。

矢野  はい。これはもう店主に連絡が行ったんだろうというふうに判断をあとでしましたですね。

代理人  あとでね、なぜ店員がこういうふうにいうのかなということに関して。

矢野  はい。

代理人  この段階の話を聞いてるんだけど。

矢野  その段階も変だなと思いましたけどね。言葉濁してますから。

代理人  で、前回の尋問見ると、終わりごろには来られると聞いたんで、それで8時前に行ってみたんだと。

矢野  そのとおりです。

代理人  そうすると、終わりごろには来られるんですかというふうに聞いて、それでその次にもう1回行ったというふうにならないんですか。

矢野  どういうふうな御質問なのかちょっと理解しにくいんですが。

代理人  終わりごろには来られるんですかというふうにあなたは聞きましたね。

矢野  そうですね。8時というのがありましたから。

代理人  で、それを聞いたんで、前回の証言では、聞いたんで8時前にも行ってますというふうにおっしゃったんですよ。

矢野  都合2回行ったうちの最初は7時前後かというふうに答えてると思うんですが、そのあと終わりごろ、つまり8時の終業よりも少し手前で行ったんではないかということで2回。

代理人  2回とか3回とか聞いてるわけじゃなくて、あなたは、話の流れとして、お店の終わりごろには来られるんですか、来ますと。で、それを肯定的な返事というふうに受け取ったので、8時少し前にも行きましたと。

矢野  そうですよ。それは前回の供述どおりです。

代理人  そうすると、終わりごろには来られるんですかというふうな質問は、終わりごろに行った前のときに聞いた質問じゃないの。

矢野  ほとんど質問の意味が理解できませんですね。2回行って、7時前と8時前に行ったというだけのことですから、それ以外行ってないんで。

代理人  話の流れを聞いてるの。

矢野  流れはそこに反訳してるとおりですよ。続きはちゃんとなってるじゃないですか。

代理人  もう1回示します。あなたは終わりごろには来られるんですかというふうに聞いてるわね。

矢野  ありますよ。

代理人  ということは、このとき終わりごろだったら、こんなこと聞かないでしょう。

矢野  全く質問の趣旨がわかんないですね。終わりごろに、つまり8時が終業時刻だとお聞きしてるから、終わりごろに行ったのに、終わりごろには来てないんですかというふうに確認したのはおかしくないじゃないですか、全然。

代理人  終わりごろに来てないんですかというふうに確認するんだったらおかしくない。あなたはそういうふうに聞いてないから確認してる。

矢野  全然そういうふうには取りませんよ。

代理人  もう質問の趣旨をわかったようだから。

矢野  わかってないですよ、全然。まるで通じませんですね。

代理人  私の質問の趣旨は、あなた方が2回目に行った、その2回目は終わりごろに行ってなくて、7時ごろに行ってるから、終わりごろには来られるんですかというふうにこのときに聞いたんじゃないかですかと。

矢野  予断が入ってて、質問の前提が間違ってるじゃないですか。なんで7時ごろなんですか。2回目は8時前ですから。

代理人  だから、そのときに、終わりごろには来られるんですかというふうにあなたが聞いてるから、僕は聞いてるの。違うなら違うっていえばいい。

矢野  8時前に行ったときの会話でしょう、それ。つまり8時前というのは、8時が終わりですから、終わりごろにはもう帰ってると思って行ったのに、いないみたいだから、終わりごろには来てないんですかというふうに確認しただけでしょう。前提がやっぱ違うんじゃないですか。

代理人  前提がもちろん違うんですよ。だから、御質問してるわけですよ。

矢野  根拠が不明ですよね、8時前じゃないという。

代理人  いいでしょう、話はわかってくれたようだから。

矢野  いや、全然理解してませんですよ。

「終わりごろには、来られるんですか?」という質問の不自然さについて矢野は最後まで認めようとはしなかった。しかし矢野はこのとき、自ら反訳した「会話記録」の作為性を自分自身の供述によって証明してしまったことにまだ気づいていないようだった。


(第20回へつづく)

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万引き被害者威迫事件 第20回
自ら発言内容を変えてしまった矢野

 前回紹介した尋問の流れをみると、当初、矢野が弁護士の質問の意図がどこにあるのかよくわからなないまま答えていたが、途中からその意図に気づいた様子がうかがえる。閉店まぎわに「終わりごろには来られるんですか?」と聞くことの不自然さについて、その内容に踏み込まれたくない矢野はなんとか「行ったのは2回」であると、話題を回数にすり替えることで会話記録が事実であることを主張しようとした。

 しかし、弁護士からはっきりと「終わりごろには来られるんですかというふうな質問は、終わりごろに行った前のときに聞いた質問じゃないの」と追及されると、「ほとんど質問の意味が理解できませんですね。2回行って、7時前と8時前に行ったというだけのことですから、それ以外行ってないんで」と、やはり発言の内容に触れられることを避けた。意味明瞭な質問を受けた矢野が、ここではなぜ「2回行って」などと答えるのか。

 弁護士の一連の質問の意図はいうまでもなく、「終わりごろには、来られるんですか?」という質問が「8時前」ではなく「7時ごろ」の話であり、「8時前」には矢野が提出した会話記録に残されていない発言があったはずだというところにある。だから、矢野にとってこの質問がなされた時間帯は「8時前」でなくてはならない。矢野がここで「理解できませんね」といいつつ「2回行って、7時前と8時前に行ったというだけのことですから」などと反論を試みているのは、弁護士の質問の意味を十分に理解したからにほかならなかった。

「もう1回示します。あなたは終わりごろには来られるんですかというふうに聞いてるわね」

 再度、弁護士がこう詰め寄ると、矢野が「全く質問の趣旨がわかんないですね」といいながら、自分の質問が不自然ではないことについて主張したのも、弁護士の質問の趣旨を理解していたということである。

 しかし矢野は、自分の質問の合理性を認めさせようとするあまり、自分の発言を言い換えてしまった。矢野は「終わりごろには、来られるんですか?」という明らかな疑問文を、「終わりごろには来てないんですかというふうに確認した」というのである。「来ていないんですか」なら現在、つまりそう「確認」したのが「8時」といえるかもしれない。しかし矢野が録音し、反訳した「会話記録」に残っている発言は「来られるんですか?」なのである。「来られるんですか?」が現在ではなく未来について尋ねていることは明らかで、だから矢野は、あくまで現在のことを聞いていることにするために「来ていないんですか」へと自らの発言を変えてしまったということである。

 言い換えれば、矢野は自分の発言の文言を変えなければ、「終わりごろには、来られるんですか?」という「8時前」の発言の合理性を説明できないところまで追い詰められていたということだろう。この事実こそ、2回目の訪問が「8時前」ではなかったことを裏付けている。では、矢野のいう「2回目」の訪問とは何時のことなのかといえば、録音テープが一連のものであるという事実から、また会話の流れからしてもそれは実際には「午後7時ころ」だったという結論になる。矢野は「会話記録」の時間を、それぞれ「午後5時20分頃」を「午後7時ころ」に、「午後7時ころ」を「午後8時前」にすり替えた上で、裁判所に証拠として提出したのである。

 矢野はなぜ訪問時間をずらす必要があったのか。1つは、取り調べの終了からわずか1時間後にもう被害店に行ったのでは、「身に覚えがない」といっているにもかかわらずあまりにも早すぎる、それでは明代が犯人であることがバレかねないと考えたためであり、もう1つ最大の目的は、被害店の閉店時刻は8時だから、それ以降は行きたくても行けない、2回しか行っていないと主張するためである。そうすることよって3回目の訪問がなかったことにし、矢野が言い残した「オーナーに、無実の人を訴えると罪になると伝えてください」という発言がなかったことにするためにほかならなかった。

 矢野が法廷に提出した「会話記録」は時間がそっくりずらされているという点において偽造であり、録音テープは仮に提出の範囲では編集されていないとしても、3回目の訪問時の記録がすべて削除されているという点において偽造ないしは変造されたものといわれても仕方あるまい。

 私は尋問を終えて法廷を出ようとする矢野に近づき、今日の供述内容について確認しようと声をかけた。すると矢野は、私の質問も聞かず、凄味をきかせてこういうと、朝木とともに法廷から出て行った。

「いくら追及しても、何も出てこないぞ」

 何も出てこないかどうかは別にして、これはいったい「明代は万引きの濡れ衣を着せられたあげく、他殺に見せかけて殺された」と涙ながらに主張し、「万引き犯の汚名を晴らす」と言い続けてきた「被害者」の元同僚のセリフだろうか。明代が無実で、矢野もまたアリバイ工作と威迫行為に加担していないのなら、その事実を誠実に訴えればいいだけではないのか。そもそも「何も出てこないぞ」などというセリフが何の抵抗もなく真っ先に口をついて出てくること自体、矢野がすでになにか常軌を逸した状態にあることを示しているように思えてならなかった。


(第21回へつづく)


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