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多摩湖寿会事件 第55回
事情を理解していた朝木

 朝木は一般質問で山川の陳述書を「引用」した際、陳述書以前に山川が説明していた事情にはいっさい触れなかった。しかし、福祉募金を誤って帳簿に記載したことについて、山川は平成29年 7月18日付準備書面で次のように主張している。



(平成29年7月18日付準備書面における山川の主張)

「原告が平成24年度の会計簿に上記(2)の記載(筆者注=福祉募金について「出金」だけを記載したこと)をしたのは事実であるが、この記載は、原告が会計を始めた年(筆者注=平成24年)で、福祉募金を会計帳簿上『収入』として扱うべきかどうかわからず、また集計後にそのまま市老連に振り込んだことから、とりあえず『支出』欄に『2万4603円』と記載したのである。」

「原告は平成24年度の会計監査の際(筆者注=平成25年)、社会福祉協議会の担当者から『福祉募金は収入にも支出にも該当せず、集計したものをそのまま市老連に振り込むのだから会計帳簿には記載しないように』との指導を受けたため、翌年(筆者注=平成25年度の帳簿)から会計帳簿には記載しなくなった。」



 上記の記載を読めば、山川が市の担当者から「福祉募金は帳簿に記載しないように」と指導されたのが「平成24年度の会計監査の際」すなわち平成25年度と説明していることが明らかである。だから山川は、「翌年から会計帳簿には記載しなくなった」のである。したがって、「翌年から」とは「平成25年から」ということになる。

 山川が準備書面における上記の主張について裁判所に訂正を申し立てた事実もない。訂正を申し立てていないということは、上記の主張が維持されていることを意味するのは訴訟上の常識であり、そのことを朝木が知らないはずはない。

 当然、朝木が上記の説明を読んでいないということもあり得ない。朝木はすでに、山川が「福祉募金は帳簿に記載しないように」との指導を受けたのが平成24年度の監査の際、すなわち平成25年であることを十分に認識していたのである。

 また、山川が多摩湖寿会の会計に就いたのが平成24年5月であること、福祉募金を会計帳簿に記載したのが誤りであることを知って記載しなくなったのが平成25年であることは証拠上明らかで、当然、そのことについても朝木は知っていた。山川が寿会の会計に就いたのは平成24年なのだから、まだ寿会の会計に就いていないその「前年」である平成23年に山川が市の担当者から「福祉募金は「出金」だけを記載するように」などとの指導を受ける道理がないことも、常識的に理解できよう。しかし、朝木は一般質問で、山川が平成29年11月22日付陳述書を提出する以前に知っていた背景事情について一言も説明せず、しかも陳述書の記載について原文とは異なる「引用」をしたのだった。

 すると、朝木が一般質問で、「元会計担当者の書面です」と前置きし、質問の根拠とした「引用」部分=

「確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

 との箇所に、山川の陳述書には記載されていた「、翌年から」が脱落していたことを、どう理解するのが自然だろうか。

 陳述書以前の山川の説明および客観的な事実背景について朝木がいっさい説明しなかったこと、「、翌年から」の5文字が脱落している以外は正確に引用していることからすれば、朝木は一般質問で「、翌年から」を意図的に脱落させた、つまり山川の原文を改ざんした上で引用したとみせかけた--こう理解するのが最も自然なのではあるまいか。

脱落させた目的

 朝木はなぜそんな手の込んだ一般質問を企図したのだろうか。「市の担当者はそんな指導を本当にしたのか」という朝木の質問と、それに対する「そういった指導はないものと思っております」という健康福祉部長の答弁によれば、福祉募金の「出金」だけを帳簿に記載したことについて、山川は「市の担当者から指導を受けたからそう記載した」と虚偽の説明をしていることになる。

 この質疑を聴いた他の市議会議員、市職員、傍聴者が「山川は福祉募金の記載について虚偽の説明をしているのか」と理解することは明らかである。ではなぜ山川は福祉募金の記載について市に責任を転嫁するような虚偽の説明をするのか。それは山川が福祉募金の「入金」を記載せず「出金」だけを記載することによって多摩湖寿会に支出させ、着服したことを隠蔽するためだ――朝木の質疑を聴いた者は遅かれ早かれそう考えるのではあるまいか。そう仕向けることが朝木の狙いだったのだろう。

 朝木はこの質問と答弁の結果を裁判所で主張しようと考えていた可能性もある。裁判所にどこまで通用するかは疑問ではあるものの、一般質問でも主張したように、「山川は平成29年11月22日付陳述書において福祉募金についての主張を変え、市の担当者からそう指導されたから『出金』だけを記載したと主張している」と主張した上、健康福祉部長は『そのような指導はしていない』と答弁した」と一方的に主張することはできる。山川が朝木の「引用」の誤りに気づいていなければ、山川の対応に混乱が生じる可能性がある。

 質問後、朝木は私に対してニヤリと笑った。その意味は健康福祉部長に想定通りの答弁をさせたことに対する自画自賛ではなく、「引用を改ざんした」という本心を隠そうとする本能的なものだったのではないかという気がする。もちろんその時点ではまだ、朝木のそんな巧妙な策略に気がついてはいなかったのだが。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第54回
脱落していた文言

 朝木が一般質問を行った当日、私は朝木が通告していない質問を行い、その内容について健康福祉部長が一方当事者である山川に対する事実確認をしないままに答弁したことに問題があったと考えていた。これだけでも、東村山市議会ではアンフェアな質疑がまかり通る状態にあったといえるのではないかと思う。それが私の感じた違和感の原因だったのだろうと、その日は考えていた。

 しかしどうやら、朝木の質問の狙いは市の担当者に予期せぬ質問をぶつけることだけでなく、その核心は別のところにあった。私がそのことに気がついたのは、改めて録音を聞き直したときである。

 朝木は「元会計担当者の書面です」と前置きして山川の陳述書を「引用」した。しかし、「引用」として読み上げたその箇所には、福祉募金の「出金」だけを帳簿に記載したことについて、山川が市の担当者から指導された時期の理解を左右する文言だけが脱落していたのである。重大な箇所の脱落だった。なお、「引用」箇所におけるその他の文言はすべて一致していた。

 朝木の「引用」部分と山川の陳述書の該当箇所を比較してみよう。



(朝木の「引用」)

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

(山川の陳述書の記載)

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので、翌年から記載しなかった」



 朝木が「引用」した箇所と山川の陳述書における記載を比較すると、朝木の「引用」には山川の上記の記載の最終行にある下線部、「、翌年から」が脱落していることがわかる。

 朝木は上記の「引用」の直前に「元会計担当者の書面です、裁判所に提出した。」と前置きし、「引用」終了後には、「こういうふうに書いてあります」と発言している。したがって、朝木は「山川はこう主張している」とする根拠として上記のように「引用」したものと理解できる。

「、翌年から」が削除された朝木の「引用」によれば、山川は福祉募金を帳簿に「出金」だけを記載したことについて、記載した「前年」に市の担当者から指導を受けたからだと主張していることが明確化された状態になっている。「、翌年から」が入れば、「前年」の理解は変わってくるのである。

 この「引用」の前に、朝木は山川の主張を次のように紹介していた。

「集めた募金は帳簿に入金の記載をしてはいけないというふうに市の担当者から指導があったそうです。なので、支出だけを書いたと」

 上記の朝木の主張が、朝木が「元会計担当者の書面です、裁判所に提出した」として「引用」した、原文とは異なる一文に基づいていることは明らかである。朝木の「引用」に基づけば、朝木が上記のように理解したのも無理はないということになる。

背景事情に触れなかった朝木

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので、翌年から記載しなかった」

 この山川の陳述書の記載にある「前年」(下線部)がいつのことなのか、わかりにくい文章であることは否定できない。この文章を表面的に、あるいは悪意をもって理解する場合には、「募金の入金は会計簿に記載しないように」と指導されたのが、山川が帳簿に記載する「前年」すなわち平成23年のことであると誤読される恐れがないとはいえないかもしれない。「年を明確に示さず、前年とか翌年とかとなっているから誤解を生むのだ」という批判もあろう。

 しかし、背景事実を理解すれば、上記のように理解するのは誤りだということがわかるのではあるまいか。

 まず、山川が福祉募金について「出金」だけを記載したのは山川が多摩湖寿会の会計を担当するようになった平成24年度の会計帳簿だけなので、朝木が脱落させた「翌年」が平成25年度を指していることは明らかなのである。

 さらに、福祉募金について帳簿に「出金」だけを記載した平成24年度の「前年」には山川は寿会の会計は就いていないから、「出金」だけを記載した時点ですでに市の担当者から「募金の入金は会計簿に記載しないように」などとの指導を受けていた道理がない。したがって、「募金の入金は会計簿に記載しないように」との指導を受けたのは、朝木が主張する「平成23年」ではなく、誤って「出金」だけを記載した平成24年度の会計帳簿の監査が行われた際、つまり平成25年の監査の際なのである。

 しかし、朝木はなんらの背景説明もなしに、
 
「確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

 と、山川の陳述書における説明から「翌年から」の文言を脱落した状態で「引用」した。

 朝木の「引用」によれば、ここでいう「前年」とは、「出金」だけを記載した平成24年の「前年」、つまり「平成23年」としか理解できなくなる。その結果、山川は「市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので『出金』だけを記載した」と主張しているということになってしまうのである。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第53回
福祉募金に関する一般質問

 平成29年12月1日、朝木は健康福祉部長に対し、山川が行った会計処理について「監査が甘かったという以外の問題はないとふうな認識でいいんでしょうか」と聞き、健康福祉部長に「少なくとも現状ではそういう風に認識をしております」と予定通りの答弁をさせた上で、質問通告をしていない福祉募金の件について切り出した。以下はその質疑である。



(福祉募金に関する山川の説明についての朝木の質疑)

朝木  それでは伺いますが、この元会計は、公の文書に記載してあることでありますけれども、福祉募金の横領がありました。どういうことが起きたかというと、会員から集めた福祉募金を、会計帳簿には入金せず、集めたその金額をね、会計帳簿には入金せず、出金だけ、支出だけした、ということで、集めたお金が簿外に置かれて、それを自分が持っていたというふうなことになってます。わかりますよね。

 で、この集めた募金が結局、会計帳簿には入金しないで、支出だけ、会計帳簿から支出すれば、当然、簿外にお金が置かれるわけですが、この指摘に対して、この元会計担当者は、これは市の担当者が、こういう指導をしたというふうにはっきりと、市の担当者の指導によるものだというふうに言い始めているんですけれども、これはもし本当だとしたら、大変な事態だと思うんですけれども、こういうことを、こういう指導はあったんでしょうか、なかったんでしょうか。

健康福祉部長  少なくとも私が知る限りでは、そういった指導はないものと思っております。

朝木  ないものと思っているというよりも、この間ずっと調査をしているわけですから、こういう指導があった、要するに、募金を集めたと、集めた募金は帳簿に入金の記載をしてはいけないというふうに市の担当者から指導があったそうです。なので、支出だけを書いたと。

 私、全く信じてるわけじゃありませんけどね。普通でいえば、あり得ない話だと思ってますが、当市の監査委員まで務めた方がそのようにおっしゃっているのでね、だからこれは市の担当者の指導によるものだというふうに言い始めてるんですよ。なので、この点はちょっとしっかりと答弁をしていただきたいと思うんですが、間違いないですか。

健康福祉部長  市の担当者が指導したことはないということです。以上です。

朝木  元会計担当者の書面です、裁判所に出した。で、寿会の会員の方から、

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

 ――こういうふうに書いてあります。これはじゃあ、事実ではないということで間違いないですね。これ、公の文書に書いてあることですから、しっかり答弁してください。

健康福祉部長  把握はしておりません。以上です。

朝木  はい、では次にいきます。



 朝木はめずらしく満足げに質問を切り上げた。なお反訳には表れていないが、健康福祉部長の最初の2つの答弁までに10分近くがかかっている。いずれも担当者に事実確認を行ったためである。ただし、山川が本当に、朝木が質した趣旨の主張(「福祉募金の『出金』だけを帳簿に記載したのは市から指導があったためだ」とする主張)をしているのかどうかについての確認は、当然ながら行われていない。

当事者に確認しないまま答弁

 仮に、朝木が事前に通告していれば、健康福祉部長も山川に確認していたかもしれない。いずれにしても、健康福祉部長は市が山川に対して、福祉募金については「入金」を記載せず、「出金」だけを記載するよう指導したかどうかについて確認しただけで、もう一方の当事者である山川には確認しないまま答弁したということである。著しくバランスを欠いた答弁だったとはいえないだろうか。

 東村山市議会における議会運営のルール、あるいは議会質問に対する行政側の対応ルールが、事実の確認ができなくても答弁していい、ということになっているのかどうかは定かでない。ただ一般社会では、相手方から質問されたことに回答するにあたって、その前提を確認するのは常識ではないかと思う。

「山川は虚偽の説明をしている」との結論

 さて、朝木の主張は大要以下のようにまとめられるだろう。



①山川は福祉募金の際、会計帳簿に「入金」を記載せず「出金」だけを記載した。この出金分が多摩湖寿会から支出され、簿外に置かれて、山川が着服した。

②山川は会計帳簿に「入金」を記載せず「出金」だけを記載したことについて、「市の担当者がそのように指導したので『出金』だけを記載した」と主張し始めている。
(なお、この点に関する山川の主張が最近になって変わったとする趣旨の朝木の主張については、平成29年7月18日付準備書面で山川が「原告は平成24年度の会計監査の際、社会福祉協議会の担当者から「福祉募金は収入にも支出にも該当せず、集計したものをそのまま市労連に振り込むのだから会計帳簿には記載しないように」との指導を受けたため、翌年か会計帳簿には記載しなくなった。」と記載していることを前提としている。しかしこの事情について、議場内の誰も知る者はいない。)

③上記②について「そのような事実があるか」と質問したのに対し、健康福祉部長は「そういった指導はないものと思っております」と答弁した。

④上記②の主張について、朝木はその根拠として山川が提出した平成29年11月22日付陳述書の一文を引用した。

――元会計担当者の書面です、裁判所に提出した。で、寿会の会員の方から、

(ここから引用)「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」(引用終わり)

 こういうふうに書いてあります。――



 朝木が上記質問の最初に「元会計担当者の書面です、裁判所に提出した。」と述べていること、最後に「こういうふうに書いてあります」と結んでいることから、上記カッコの部分が山川の陳述書を引用したものと判断できた。

 質疑の上では、朝木が説明する山川の主張内容を健康福祉部長が否定する形になっていた。その結果、「山川は福祉募金について会計帳簿に『出金』だけを記載したことについて虚偽の説明をしている」との質疑が形成されたという印象を持った。  

 朝木の一般質問が終わり、議会は休憩に入った。傍聴席から議会事務局の方向に降りていくと、ちょうどエレベーターに乗り込む朝木に出くわした。朝木は私に向かって、ニヤリと笑みを浮かべた。「どう? うまくやられたでしょ」と自賛しているようだった。

何ともいえない違和感

 この日の朝木の質問とそれに対する答弁には何とも言い難い違和感を覚えていた。その理由は2つあった。

 1つは、福祉募金に関する通告がいっさいなされておらず、にもかかわらず、一般質問としてなんらの疑義も出されないまま受け入れられたこと。2点目は、朝木の質問に対して健康福祉部長が、山川がそう主張しているとして朝木が質した市側の対応については担当者に確認したものの、一方当事者である山川に対しては事実確認をいっさいしないまま答弁したことだった。その答弁は、朝木の主張及びその前提(山川が主張しているとする内容)を追認したようなものだった。

 朝木は質問通告をしないまま質問をぶつけることで健康福祉部長を混乱させ、その結果、自分に有利な答弁を引き出した――。この時点で、なんともいえない違和感の理由を私はそう理解していた。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第52回
通告のない質問

 朝木と清水の陳述書に対して、山川が反論するかたちの陳述書を提出した第6回口頭弁論から3日後の平成29年12月1日、朝木は東村山市議会で一般質問を行った。朝木が平成29年11月22日付で提出した一般質問通告書には、「多摩湖寿会で発生した元公明党市議による横領事件について」と題して次のような質問内容が記載されていた。



(朝木の一般質問通告書の記載)

1.多摩湖寿会と当市所管との補助金返還に関わる協議の進捗状況について、9月議会での答弁以降の経過を伺う。

(1)多摩湖寿会との具体的な協議内容、経過を伺う。
(2)不正を行った元会計との具体的な協議内容、経過を伺う。
(3)今後、補助金返還のための方策をどのように検討しているのか伺う。

2.補助金返還額について、平成24年度の返還額は16万8566円、平成25年度の返還額は4万766円、平成26年度の返還額12万1954円、平成27年度の返還額12万1643円、がそれぞれ確認されているが、以下伺う。



 上記の「2」にはさらに細目が記載され、さらに質問は「3.捜査機関への協力について」と続くが、朝木の質問は上記「1.(1)」の途中でまったく通告のない内容へと強引に方向転換する。その内容はまさに山川との裁判の重要な争点そのものに及ぶものだった。おそらく朝木にとって、その質問が最も重要だったのではないかと思えた。

 さて、朝木はざっと補助金返還をめぐる協議内容等を聞いたあと、今回の補助金の返還が発生したことについて、「監査が甘かったこと以外に市側に問題はなかったか」と問い、健康福祉部長は「特にそういったことはございません」と答えた。想定通りの答弁だった。具体的に何かといわず、漠然と「問題はなかった」と聞かれて「問題があった」などと答えるはずがない。

 あえてそう答えさせたのではないかと私には思えた。朝木は健康福祉部長の言葉尻を捉えるかたちで「それでは伺いますが」とまったく通告していない福祉募金に関する質問に強引に持ち込んだ。

 東村山市議会では、通告していない質問はできないことになっている。議員の質問に対して市側が正確な答弁をするために、十分な準備をするためである。質問のたびにいちいち事実関係等を確認していては議事に著しい遅滞をきたし、行政執行にも影響を与えることになる。市議会規則が、「質問しようとする議員は通告をしなければならない」と定めているのは、そのような事態を避けるためである。

 朝木の福祉募金に関する質問は、一見すると当初の質問に継続して行ったもののようにみえる。しかし内容的には、通告書には一言も存在しない「福祉募金」に関する質問なのだから、まったく別の事前確認を必要とする事項ではなかっただろうか。実際に健康福祉部長は何度も答弁に窮し、担当者に事実関係を確認せざるを得なかった。本来なら「答弁できない」という答弁も許される質問内容だったように思える。朝木はなぜ、通告をしないまま「福祉募金」について質問したのだろうか。

「福祉募金」の記載に固執

「福祉募金」とはいうまでもなく、朝木と清水が「山川が盗んだ」と主張しているこの裁判の重要な争点の1つである。朝木と清水は「山川は福祉募金を盗んだ」とする主張の根拠について、平成24年度の会計帳簿に「入金」を記載していないにもかかわらず「出金」だけを記載している点であると主張している。

 その「出金」額と同額が福祉募金として市労連に振り込まれていることは確認されている。したがって、帳簿上、「出金」は福祉募金とは別に出金されたことになるから、「福祉募金として出金したことにして着服したのだ」と朝木らは主張しているのである。

 これに対して山川は、平成29年7月18日に提出した準備書面で次のように主張していた。



(福祉募金に関する山川の準備書面における主張)

 原告は平成24年度の会計監査の際、社会福祉協議会の担当者から「福祉募金は収入にも支出にも該当せず、集計したものをそのまま市労連に振り込むのだから会計帳簿には記載しないように」との指導を受けたため、翌年から会計帳簿には記載しなくなった。



 ここでいう「平成24年度の会計監査の際」とは平成25年であり、「翌年」とは当然、平成26年(平成25年度の帳簿)を指しているのは明らかである。山川は平成24年度の会計帳簿に誤って福祉募金の「出金」だけを記載したが、平成25年度以降は記載していない。上記の主張について、山川が訂正を申し立てた事実はない。このことはすでに朝木も確認している事実である。

 山川は、第6回口頭弁論に先立って提出した平成29年11月22日付陳述書では、「出金」だけを記載した理由について改めて次のように説明していた。



(福祉募金に関する陳述書の記載)

「加藤さん(筆者注=前多摩湖寿会会長)は、募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので、翌年から記載しなかったものであり……」



 朝木の代理人がこの陳述書を受領したのは同年11月24日である。朝木が質問通告書を提出したのが同年11月22日だから、この陳述書の内容を質問することについては記載できなかったということだった。それでも朝木は、急遽、山川が提出した陳述書の上記記載に基づき一般質問を行ったのである。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第6回口頭弁論
原告・被告双方が陳述書を提出

 発言等によって名誉を毀損されたとして元東村山市議の山川昌子が多摩湖寿会会長の清水澄江と東村山市議、朝木直子と矢野穂積、武蔵村山市議の天目石要一郎を提訴していた裁判は、平成29年11月28日、第6回口頭弁論が行われた。

 口頭弁論に先立ち、まず被告の朝木、矢野、清水、天目石が陳述書を提出し、それを受けて山川が陳述書を提出していた。清水は前回、第5回口頭弁論で多摩湖寿会理事2名および多摩湖寿会前会長、加藤幸雄の陳述書を提出していたので、山川は陳述書で被告らに対してだけでなく多摩湖寿会理事らの陳述書に対する反論も行った。

 また、その反論にともない、訴因の1つである平成28年11月30日の議会傍聴席における朝木と清水の発言を記録した録音データも証拠として提出した。

発言をめぐる供述

 上記の発言をめぐる被告らの供述を確認しておこう。



①朝木の主張(平成29年4月20日付準備書面1)

〈同日の東村山市議会本会議後の休憩中、被告清水と被告朝木が委員会室の出口に向かおうとした渡部市長の前に立ち塞がり、「告発すべきだ」と詰め寄ったり、「市長、首飛んでも仕方がないですね。お気の毒に」などと毒づいた事実はない。……

 ……被告清水と被告朝木は、この日の市の答弁について納得がいくものではなかった旨の私的な会話をしたという範囲で認め、その余は否認する。

 原告の主張と整合する陳述書を提出する訴外宇留嶋には後述の通り虚偽供述の動機があり、その供述は信用できない。〉

②清水の主張(平成29年4月20日付準備書面)

〈平成28年11月30日の東村山市議会本会議後の休憩中、被告清水と被告朝木が委員会室の出口に向かおうとした渡部市長の前に立ち塞がり、「告発すべきだ」と詰め寄ったり、「市長、首飛んでも仕方がないですね。お気の毒に」などと毒づいた事実はない。……

 ……被告清水は、本会議後に傍聴席で、被告朝木と、当日の市側の答弁について納得がいくものではなかった旨話し合ったことはあるが、その具体的な内容について詳細に記憶しているものではない〉

③清水の供述(平成29年11月10日付陳述書)

〈私は、議場から退出する渡部尚市長に対し、きちんと調べてください、と求めました。市長の退出後、朝木議員に、よく追及してくださいました、などと感謝と労いの言葉を伝えました。

 ただ、これは私と渡部市長との間の会話、私と朝木議員との間の会話であって、第三者に向けて私が何かを大声で訴えた、というようなものでは全くありません。〉

④多摩湖寿会理事、小川康子の供述(平成29年9月17日付陳述書)

〈清水さんは、市長が退出するタイミングで何か市長と言葉を交わしていたようですが、あくまで普通の会話といった様子でしたし、特に大声で叫んだり、市長以外の人に呼び掛けるといったことはしていません。〉



 このように、被告らはいずれも原告が主張する傍聴席における発言の存在を否定していた。被告らの発言については私がすでに陳述書を提出していたが、朝木と清水らは私の陳述書の内容を寄ってたかって否定しようとしていたということになる。このため山川はやむなく、事実を確定させるために音声データを提出したのである。

音声データ確認のための弁論

 音声データを再生すれば、朝木が市長に「告発すべきだ」と詰め寄ったり、清水が「市長、首飛んでも仕方がないですね。お気の毒に」などと毒づいたことは事実であり、さらに朝木と清水が具体的な事例を挙げて山川が横領したとする主張を繰り返していたことは明らかだった。

 第6回口頭弁論で録音データが話題になり、朝木の代理人は「聞き取りにくかったが、発言は確認できた」といい、裁判官も音声データの再生については問題なかったとした。ところがどういう事情だったのか、清水の代理人だけはどうしてもデータを再生できず、発言について確認ができていないという。

 データ自体に問題がある可能性もあるので、山川は清水の代理人にその場でデータ媒体の交換を申し出たが、代理人はこれを断ったという。代理人が交換を断った理由はわからないが、裁判官は訴因の事実について原告被告双方が確認していた方が効率的と判断したのか、音声データを確認するための第7回口頭弁論を12月20日に開くことを決定した。

 当事者の面前で音声データを再生することによって、傍聴席における発言についての被告らのこれまでの主張が事実に基づくものだったのかどうかが白日の下に明らかになる。事実の争いがなくなれば、あとはその発言が名誉毀損の不法行為に該当するかどうかの判断ということになる。法廷で「いった、いわない」の争いがなくなるだけでも無駄が省けよう。

 なお、第6回口頭弁論では、朝木、清水双方から尋問の申請が提出されていたことに基づき、朝木、清水及び多摩湖寿会加藤前会長に対する証拠調べ(尋問)を行うことも決定した。加藤前会長は「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とする誓約書を交わした際には山川側の当事者だった。しかしどういうことなのか、今度は清水側の証人として出廷する。

 尋問は平成30年1月23日午前10時15分、東京地裁立川支部408号法廷で行われる。

(了)
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多摩湖寿会事件 第51回
清水の側に回った前会長

 加藤前会長が、自分が承認していたにもかかわらず、今ごろになって山川が1人で会計を担当していたことを批判した陳述書の主張は、「今回の問題は、自分はまったくあずかり知らなかったことであり、すべては山川の責任だ」という趣旨のものでもあった。清水澄江らを相手方として交わした誓約書に山川と同じ立場で名を連ねていることと明らかに矛盾する行為である。

 当初は山川の側にいたはずの加藤前会長が、いつの時点かは定かでないが、いつの間にか清水会長の側に回ったことは確かなようだった。加藤前会長はどういう理由で清水澄江にすり寄ったのだろうか。それをうかがわせる出来事があった。

 提訴から1カ月後の平成29年2月4日、山川は前会長の自宅を訪ねた。そのとき、山川はまだ加藤前会長が清水の影響下に取り込まれていることを知らなかった。山川の用件は、山川が簿外に保管していた金があること、それを返還しなければならないが、どういう名目で返還すべきかを相談にいったこと、またその日が、清水が山川に対して請求書を送付した日よりも前だったことについて陳述書で証言してもらうことだった。

 清水は「請求書を送付して請求するまで山川は簿外の保管金があることを隠匿しており、清水が請求しなければそっくり着服するつもりだった」(趣旨)と主張している。しかし、清水が山川に請求書を送付したのは平成28年6月26日であり、山川が上記の用件で加藤宅を訪ねたのは同年6月17日だった。しかも、山川が簿外で金を保管していた目的が多摩湖寿会設立50周年記念事業の足しにする予定だったことも、その際に前会長に説明していた。

 同年5月8日、多摩湖寿会の総会で清水澄江会長以下、新役員が決定した。清水新会長以下、役員はすべて入れ替わることとなった。その前日、清水以下、のちに新役員となる4名の会員が集まって何かの打ち合わせをしていたという話が、現会長のもとに届いていたという。翌日の総会当日、清水が新会長に立候補すると賛同の声が上がり、すんなりと賛成多数で清水が会長に就任することになった。前会長が打ち合わせの内容として聞いていたとおりの結果だった。

 同年5月11日、新旧役員が集まって業務の引き継ぎを行った。当然、その中には会計帳簿も含まれる。その際、山川は本来なら、簿外で保管していた保管金についても引き継ぐべきだったが、加藤前会長に相談してからと考えて、その日に引き継ぎはしなかった。このため、同年6月17日、どういう形で引き継ぐのがいいか相談するために、山川は加藤前会長の自宅を訪ねたのである。

上申書に署名した前会長

 山川は提訴後、清水から請求されるよりも先に会長に保管金の返還方法を相談していたことについて前会長の証言をもらっておこうと考えた。それが平成29年2月4日、山川が加藤前会長宅を訪ねた用件だった。

 同日、山川は会長の自宅で事情を話し、用意した上申書に署名捺印してくれるよう依頼した。加藤前会長は山川の要請に応じた。その上申書の内容は以下のようなものだった。

「私は、平成28年6月17日午後4時ころ、山川さんが自宅を訪ねてきて、『多摩湖寿会50周年記念事業のために簿外で保管していたお金があって、寿会に返還しなければならないが、どういう名目で返せばいいでしょうか』という相談を受けたことに間違いありません。」

態度を変えた前会長

 この上申書が作成されたのは平成29年2月4日である。ところが、加藤前会長はその日のうちに山川に電話をかけてきてこういった。

「『平成28年6月17日に来た』というだけなら署名するが、『50周年記念事業のため』という文言があると署名できない。よく読まないで署名した。すぐ返してほしい」

 山川が「でも加藤さんは、内容を否定しなかったじゃないですか」というと、加藤前会長はこんな言い訳をした。

「『50周年の話は聞いていない』と大野さんに話した」

「これが表に出ると、お墓も東村山に買ったのに、住んでいられなくなる」

 ここでいう「大野さん」とは、清水会長と山川、加藤の間で「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との誓約書を交わした際の立会人であり、現在は寿会の新理事で清水会長側の人間、大野清吉のことである。

 加藤はその大野に「50周年の話は聞いていない」といったという。たぶん、清水が山川を「横領した」と騒ぎ始めてすぐにそういったのだろう。加藤は新役員らにそういってすべての責任から逃げたということになろうか。

 その加藤がいまさら「平成28年6月17日に山川から50周年記念のために簿外で保管していたことを聞かされた」などと証言すれば、「すべては山川の一存でやったことであり、寿会が請求書を送付するまで他の誰も知らなかったことこそ横領の意思があった証拠である」ということにしたい清水の目論見に水を差そう。そうなれば、今度は自分も清水一派から責め立てられる――加藤はそう考えたのだ。それしても、「東村山に住んでいられなくなる」とは、清水澄江とはよほど恐ろしい人物なのだろう。

 加藤前会長が最初の上申書を返してくれといってきたため、山川は新たな上申書を作成して加藤宅に持参した。山川はまずすでにもらっていた署名捺印入りの上申書の原本を加藤に返し、新たに作成した上申書を見せた。すると加藤は「これならいい」と署名捺印した。その上申書にはただ次の一文が記載されているだけだった。

「平成28年6月17日午後4時頃、山川さんが寿会の件で自宅を訪ねてきたことに間違ありません。」

 これなら「50周年記念事業」の文言もないし、何をしに来たのかわからない。加藤はホッと胸をなでおろしたのだろう。「これで東村山に住んでいられる」と。

 しかし山川は、加藤から最初の上申書を返してほしいといわれる前に、すでにコピーを取っていて、念のために保存していた。万が一、加藤が清水に取り込まれて事実に反する証言をするようなら、事実を立証するためにそのコピーを法廷に提出するしかないと考えていた。

 すると、第2回口頭弁論で朝木が早くも加藤の「今回の問題は、自分はまったくあずかり知らなかったことであり、すべては山川の責任だ」とする趣旨の陳述書を提出してきた。このため山川は、ただ「山川が訪ねてきた」と記載した上申書に加え、加藤が撤回を申し出た上申書のコピーを証拠として提出し、準備書面で加藤が山川に話した最初の上申書を撤回する理由を詳述した。

 加藤が虚偽の事実を証言した以上、撤回を主張した最初の上申書を提出することもやむを得ないだろう。その上で山川は、清水が山川に請求書を送付するより前に前会長である加藤に保管金の返還方法について相談していたこと及び「横領の意思」などなかったことを改めて主張したのである。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第50回
誓約書に反する主張

 同じ被告でも、原告からみて、多摩湖寿会会長の清水澄江と、清水が提供した情報に基づいて「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と主張した東村山市議の朝木直子と矢野穂積の立ち位置は異なる。とりわけ、平成28年8月17日、清水は山川との間で「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とする誓約書を交わした当事者である。したがって、山川は清水と朝木、矢野それぞれに対して内容の異なる準備書面を提出している。

 清水は「山川は寿会の金を横領した」とする主張及び、「入浴の事実がないにもかかわらずあったとして入浴料を着服した」、「福祉募金を盗んだ」、「寿会の金で個人的な飲食をしていた」などの摘示事実について、最初の準備書面でも主張を曲げなかった。この点は朝木と同様だが、山川は清水の主張に対してまず誓約書の存在に基づく反論を行っている。



(誓約書に基づく山川の反論)

(平成28年7月1日、原告が簿外で保管していた金を含めた42万4500円を返還した時点で)多摩湖寿会と原告の間で民法上の和解が成立した。原告が上記金員を返還したことを受けて、同年8月17日に、立会人を置き、「甲=清水澄江、清水昇(多摩湖寿会副会長)」、「乙=加藤幸雄(前多摩湖寿会会長)、山川昌子」との間で、「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との誓約書を取り交わした。よって法律上、示談が成立した平成28年7月1日以降、被告清水を含む多摩湖寿会役員一同はいずれも、原告に対して「原告は寿会の金を横領した」等との主張はすることは一切できないことになる。

 したがって、同日以降に被告清水が原告及び第三者に対して再三にわたり「原告は寿会の金を横領した」などと主張したことは和解を無視する暴挙であり、主張自体いずれも違法、不当なものである。



「42万4500円を返還した時点で民法上の和解が成立した」というのは弁護士の見解である。仮にそうでなかったとしても、平成28年8月17日には「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との誓約書を交わしているのだから、「原告は寿会の金を横領した」などと主張することは、誓約に違反することは明らかではあるまいか。「横領した」とする主張は、いうまでもなく誓約書でいう「金銭的な内容」にほかならない。

 ちなみに、山川が清水に返還した42万4500円は清水が山川に送付した請求書に基づくものである。時間的な経過からみても、誓約書はこの返還を前提に交わされたものだから、金の返還は受けておきながら、「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とする誓約は破っていいというのはあまりに身勝手というべきではないのだろうか。

誓約書の一方当事者

 読者もお気づきだと思うが、誓約書には「乙」として山川のほかに前寿会会長の加藤幸雄の名前が記されている。加藤が乙側で署名捺印しているということは、この会計問題について山川と同様の責任を負担していることを意味する。

 また清水が山川に送付した平成28年6月26日付請求書の末尾にはこんな記載があった。

「異存あれば申し立てて下さい。ご返答なき場合は前役員会に対し請求させて頂きます。」

 この文面からすると、請求書を送付した相手は山川だが、清水としては前役員全員にも責任があると認識していたことになる。前役員の中でも、最高責任者が前会長であることはいうまでもなかろう。清水も前会長もそう認識していて、だから誓約書を交わす際にも、前会長は山川側の当事者として署名捺印した――こう考えるのが常識的な見方だろう。

 誓約書には清水側である「甲」として現副会長の「清水昇」の署名があり、立会人「大野清吉」の署名捺印もある。「乙」側の当事者が山川だけでなく加藤も名前を連ねていること、すなわち加藤にも責任があることを清水以外にも2名が認識していることになる。ところが、この誓約書を交わした後、清水は山川に対して「横領した」などと主張する一方、前会長の加藤に対してはいっさい返金の要求などをしていなかった。

 これは不自然なことではあるまいか。誓約書締結後の清水の行動は、誓約書の内容に違反するだけでなく、ことさらに山川の責任を追及するものであり、「何らかの個人的な感情によるもの」であると山川は主張している。

不可解な前会長の供述

 一方、加藤前会長は、「乙」側に名を連ねているということは、誓約書の当事者であることを認識していないということはあり得ない。当然、山川と責任を連帯していることも理解していただろう。

 ところが、不可解なことに、加藤前会長はこんな陳述書を提出していた。

「(山川は)『会計は1人では会則違反である。誰もいないのであれば、自分が会計を手伝います』との申し出があったにも係らず1人で会計を続行した。」

「だから今回のような問題が起きたのであり、山川にすべての責任がある」、あるいは「山川は寿会の金を使い込むために1人で会計を担当すると主張した」とする主張のようだった。

 ただその前段で、加藤は「(会計は2名と思っていたが、山川が1人でもできると主張したのでその言葉を)信頼し本人の主張を尊重した」とも述べている。この流れからすれば、寿会の会計は本来は2人だが、今回は山川1人に任せることを会長である加藤が容認していたという客観的状況が存在することを前会長自身が説明しただけであるようにみえる。

 少なくとも前会長の加藤が、寿会の会計を山川1人に任せることを容認したことは加藤自身の陳述書から明らかである。容認したこと自体が会長の責任だということを加藤は理解していないのだろうか。自らの任命責任を棚に上げ、山川にすべての責任をなすりつけるとは、加藤前会長は無責任のそしりを免れないのではあるまいか。

 あるいは加藤には、そうでないと知りながら、山川の責任であるとする陳述書を提出しなければならない切迫した理由でもあったのだろうか。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第49回
「横領」の法的定義

 朝木は準備書面で、「原告が同会(筆者注=多摩湖寿会)の現金を保管中、自己の用途に充てる目的で現金を持ち出す等して横領したとの強い疑いを抱いた」と主張している。これは山川が簿外で現金を保管するにあたり、最初から自分のものにする意思があったと主張するものといえる。

 ところで、判例では「窃盗罪には不法領得という主観的要素が必要である」とされている。窃盗と同じ財産犯罪である横領を認定するにあたっても、本人に不法領得をする意思があったという要素が必要となると考えられる。

 したがって山川は、朝木らが「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と主張するには、山川に不法領得の意思があったことを立証しなければならないとして次のように主張している。

「被告らが『原告が横領した』とする主張を裏付けるには、原告が不法領得の意思・目的を持っていたとする自白あるいは原告が不法領得の意思・目的を持っていたことを裏付ける資料・証拠が必要となるが、提出された丙号証(筆者注=朝木らの証拠)の中に自白を裏付けるものは存在せず、被告らが抱いたとする『強い疑い』の根拠が証明されたとは到底いえない。」

 山川はこう主張した上で、「不法領得の意思」などなかったと主張している。

すぐに清水宅を訪ねた原告

 この点について朝木は、「山川が清水新会長から請求されてすぐに返還したことは、簿外で現金を保管していたことが不正行為であることを十分に認識していたからである」と主張している。つまり、山川がすぐに返還したことが、山川に「横領」の自覚があった証拠だというのである。

 平成28年6月26日、その1カ月前の5月に寿会新会長となっていた清水澄江は山川に対し、会計帳簿に未記載の入金があり、収入に計上されていないとして、その分を支払うよう求める請求書を送付した。請求書の末尾には、「ご返答なき場合は前役員会に対し請求させていただきます」との記載があった。

 仮に山川に横領、着服したという認識があったとすれば、清水は「返答がなければ前役員会に請求する」といっているのだし、こんな請求書など見なかったことにすることもできた。しかし山川は、清水からの請求書を読むとすぐに、簿外で保管していた金を渡すために清水の自宅を訪ねた。

 その理由について山川はこう説明している――。山川は簿外の保管金を早く返還しなければならないと考えていた。だから、すぐに返還に出向いたのである。けっして朝木が主張するように、「会長が請求するとすぐに返金したのは『横領』を自覚していたから」ではない、と。

 清水からの請求書が届いてすぐに山川が清水の自宅を訪ねたことには、もう1つ、重要な背景があった。清水からの請求書が届く9日前、山川は前会長の自宅を訪ね、簿外で保管していた金の扱いについて相談していた。山川は清水からの請求書を見てあわてて対応したのではないことがわかろう。

 前会長宅を訪ねた山川は、保管金の引き継ぎについて前会長からアドバイスを受け、話がまとまっていた。だから山川は、清水からの請求書を見るとすぐに清水宅に行くことができたのである。山川の説明に不自然な点は見当たらない。

「会長が請求するとすぐに返金したのは、山川が『横領』を自覚していたからだ」とする朝木の主張に対し、山川は上記の事情を説明した上で、「原告が保管金をすぐに返還したことをもって不正を認識していたとの被告らの主張は失当である」と反論している。

消された「共謀」の文字

 この準備書面で山川は、平成28年9月から11月にかけて朝木が行った「山川は多摩湖寿会の金を横領した」とする議会質問に根拠がなかったことを明確に裏付ける証拠を提出している。朝木が平成28年10月3日付で東村山市監査委員会に提出していた東村山市長措置請求(いわゆる監査請求)である。

 朝木の請求内容は、「東村山市長は、山川が違法に詐取した公金26万5435円を東村山市に返還させるよう求める」というもの。しかし、この請求書では原因となった事実について次のように記載されていた。

「多摩湖寿会会計山川昌子は〇〇(筆者注=マスキング)と共謀し、同会計金銭出納簿に二重計上する方法で同額を詐取した。」

 このうち、「〇〇」の後の「と共謀し」については二重線で消されていて、朝木が主張する「詐取」の主語である「山川」の後には「ら」が当初は付いていたが、この「ら」もやはり二重線で消されていた。この「と共謀し」及び「ら」が消されたのがいつの時点なのかは定かでない。しかし少なくとも、朝木がこの請求書を作成した時点ではこれらの文言が記載されていた。つまりこの請求書を提出した時点で、朝木は「多摩湖寿会における横領事件」には山川1人によるものではなく、他に共犯者がいると認識していたことになる。

 朝木が監査請求前の9月議会で行った質問では「共犯者」の存在についてはいっさい触れておらず、山川が「横領」するにあたって協力者がいたことをうかがわせる発言もなかった。つまり朝木はこの監査請求によって、9月議会における質問を自ら否定したことになる。

 いったい、この「共犯者」はどんな経緯で監査請求の相手方当事者として名を連ねることになったのだろうか。

監査請求の適当さ

 それをうかがわせるのが、監査請求書の末尾で朝木は、監査にあたっては、監査委員の1人である公明党市議の除斥を求め、その理由として「〇〇(筆者注=山川と連名で監査請求の対象となった人物=マスキング)が所属した政党と同一の政党」だからとしている点だった。山川が多摩湖寿会で会計を務めていた当時、元公明党市議だった人物が寿会の会計監査を担当していた。

 マスキングされ、朝木自身が監査請求の対象として削除した人物とはこの元公明党市議以外には考えられなかった。つまり監査請求で朝木は、「会計監査を担当していた元公明党市議は山川の横領を知っていたが見逃した」、あるいは「2人は最初から共謀して寿会の金を横領した」というストーリーを描いていたということになる。 朝木と矢野にすれば、2人の元公明党市議が「横領」に関与したということになれば、個人ではなく十分に「公明党の組織ぐるみの犯罪」という宣伝ができると考えたとしても不思議はない。

 しかし、それがいつの時点かは定かでないが、朝木はもう1人の元公明党市議の関与については撤回したのだった。最初から「山川と元公明党市議が共謀して寿会から横領した」などという主張に根拠はなかったということである。

 この監査請求は、「補助金は多摩湖寿会に対して交付されたものだから、個人は返還請求の対象とはならない」という理由で却下された。しかし、形式的な理由以上に、この監査請求が内容的にいかに適当で、社会をナメたものであるかがわかろう。

「山川は多摩湖寿会の金を横領した」とする根拠のあやふやさも推して知るべしというべきではないのだろうか。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第48回
「議員としての正当行為」という主張

 朝木らは議会や質問通告書などにおける「山川は多摩湖寿会の会計から横領した」との発言や記載について「原告の社会的評価を低下させるものではない」と主張する一方、「それらはいずれも市議会議員としての責務に基づいて行われたものであり、不法行為とはならない」(趣旨)と主張している。またどさくさに紛れて、朝木は矢野とともに個人的に発行している彼らの政治宣伝紙にすぎない『東村山市民新聞』までも「議員としての正当行為」と主張している。

 しかしこの『東村山市民新聞』に関する主張については、同ビラが彼らの個人的な政治宣伝媒体であることは明らかであり、そのような個人的なビラが免責の対象になることはあり得ないのではあるまいか。『東村山市民新聞』の記載をめぐり、これまでに矢野と朝木が提訴されたことは1度や2度ではない。しかし、これまで彼らがその記載について「議員としての正当行為だから免責となる」などという奇特な主張をしたためしはない。

 もちろん、「山川が詐欺事件に関与した」と記載して提訴された事件でも、矢野と朝木は「議員としての正当行為だから免責される」などという主張はしなかった。彼らの裁判の歴史の中で、『東村山市民新聞』も「議員としての正当行為だ」とするこの主張は際立って特異な主張なのだった。

 議会における発言や記載だけでなく、個人的な宣伝ビラまで「議員としての正当行為」と主張する代理人の考え方を理解するのは困難というほかない。「議員としての正当行為」という理由で逃げるのが得策と考えたのだろうか。

免責特権と地方議員

 さて、そもそも地方議員における「議員としての正当行為」とは何なのか。国会議員は憲法51条で国会での発言については免責されることが規定されている。言論の府である国会において自由な議論を保障するためである。

 その憲法の趣旨に照らして、地方議員もまた議会における発言については最大限の尊重がなされるべきだろう。朝木は「議員の正当業務行為」という言葉によって、地方議員の発言も国会議員の発言が保障されているのと同様に免責されるべきだと主張しているものと思われた。

 しかし、地方議員は国会議員のように議会での発言が憲法や地方自治法で保障されているわけではない。あくまで理念上、「地方議員も国会議員の発言同様、自由な言論が最大限に保障されるべきだ」という考え方が存在するにすぎない。

「地方議員も国会議員の発言同様、自由な言論が最大限に保障されるべきだ」という考え方自体に異論はない。しかし法律的観点に立てば、地方議員の議会における発言は国会議員とは異なり、無制限に保障されているわけではないということでもある。

 たとえば地方議会で、ある個人を名指しして殺人犯呼ばわりしても、無条件に免責されるのだろうかということである。憲法で発言が保障されている国会議員であっても、良識ある議員ならそんな発言は慎むだろう。すると、地方議会において、根拠もなく特定の個人を犯罪者呼ばわりするような行為については国会議員の免責規定とは別の判断もあり得るのではあるまいか。

「議員としての正当行為」

 では、「山川は多摩湖寿会の会計から横領した」と断定した朝木の議会質問や質問通告書の記載は「議員としての正当行為」として免責されるべきものなのか。山川は朝木のこの主張に対して次のように反論している。



(「議員としての正当行為」とする主張に対する反論)

 地方議員の議会における発言が……尊重されるべきであることは理解できる。しかし、被告朝木は当初から、『行政も社協もなんら問題なしとの認識を持っていた』こと、原告が横領の事実を否定していること、すでに寿会との間で和解が成立し、誓約書が作成されていることを認識しながら、確かな証拠もないまま、むしろそれどころか、改ざん・加工した証拠をもって原告を犯罪者呼ばわりした被告清水の申告を軽率にも信じ込み、原告に確認することなく、1度や2度ではなく5度にわたって執拗に(平成29年6月まで)議会で取り上げたことは正当業務の域を逸脱するものであり、……



 自分と行政の考え方が異なると考えた朝木が議会質問において真相を質そうとしたたけだというのなら、行政がなぜ「問題なし」と判断したのかを追及すればいいのであり、議会質問の場において、あえて「山川は寿会の会計から抜いた」などの発言をする必要はない。しかも議会質問を行うにあたり、朝木は清水から事情を聴いただけで山川にはいっさい確認していない。

 質問内容をみても、行政側の「犯罪とは断定できない」とする答弁にもかかわらず、朝木は「山川は寿会から横領した」とする主張を最後まで一歩も譲らなかった。つまり、朝木の質問はどうみても公平中立なものとはいえず、むしろ「山川は多摩湖寿会の金を横領した」という意図的な結論を清水と朝木が最初から共有しており、それを議会質問の中で市に認めさせることによって公が認める「犯罪」へと昇格させようとしていたようにもみえる。

 それが最後の「告発しないのか」とする市長に対する執拗な追及だったのではないか――。朝木の質問は、そんな疑いを持たれてもやむを得ないものだったのではあるまいか。

 市が「横領」を否定していること、朝木が山川にはいっさい確認しておらず、確かな根拠もないままに「横領した」と断定していることなどから、山川は朝木の議会における発言や記載について「市議会議員としての正当業務」を逸脱するものであり、無条件に免責されるべきではないと主張している。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第47回
「特定」に等しい記載 

 朝木は「①山川が主張する不法行為1」において、「『山川は多摩湖寿会の会計から横領をした疑惑がある』旨の事実を摘示したにすぎない」としただけでなく、「人物を特定していないから、山川の社会的評価は低下していない」とも主張している。この主張が認容されれば、山川の主張は棄却されることになる。

 朝木のいう「人物を特定していない」とは、朝木が「横領した」とする人物を名指ししていないということに尽きる。名指ししていなければ「人物を特定していない」ということになるのだろうか。

 この点について山川は、朝木は上記①の中で「平成24年度から平成27年度にかけて多摩湖寿会の会計についていた元市議会議員」と限定しているから、「120名の多摩湖寿会会員や社会福祉協議会、東村山市役所職員、議会関係者にとって、この『元市議会議員』が誰であるのかを特定するのは容易である」と反論している。

 多摩湖寿会の会員が会内で「多摩湖寿会の会計を務めていた人物は誰か」と聞けば、それが誰だったのかはすぐに判明するだろう。また市役所関係者なら、補助金執行の対象団体である多摩湖寿会の会計を誰が担当していたかを知ることは難しいことではなかろう。前後の文脈等から当該人物が特定可能な場合には、具体的に特定していなくても特定したに等しいのではあるまいか。

「疑惑」と「断定」の間

「①山川が主張する不法行為1」に関する山川の主張をまとめると、上記①は「『山川は多摩湖寿会の公金や会員から集めた金を横領した』との事実を摘示するもの」ということになる。

 朝木は摘示事実について、「会計の不正処理を行った元市議会議員は、新年会の会費やお祝い金……などで集金したお金を会計収入に入れず、……寿会会計から抜いた」と断定しているが、これについても「横領をした疑惑がある旨の事実を摘示したにすぎない」と主張している。断定表現をしているにもかかわらず、朝木が準備書面で「抜いた」との表現については知らん顔をし、「疑惑」を摘示したにすぎないと主張したことは理由があるように思える。

「疑惑」と「断定」では、立証のレベルに大きな違いが生じる。「断定」だと「横領の事実」を、直接的に立証しなければならない。しかしその摘示が「疑惑」にとどまるなら、「横領」そのものの立証までは求められない可能性がある。少なくとも朝木は「疑惑がある旨の事実を摘示した」にすぎないと主張しているのだから、「『疑惑』を立証すれば足りる」と主張しているということになろう。これに対して山川は、上記①が摘示するのは「山川は多摩湖寿会の公金や会員から集めた金を横領した」との事実であり、その「摘示事実について真実性・相当性を立証しなければならない」と主張している。

 なお①と同様に、「山川が主張する不法行為」2~4についても、朝木が「疑惑を摘示したにすぎない」と主張しているのに対し、山川は「摘示事実は横領したとの事実である」と主張し、「摘示事実について真実性・相当性を立証しなければならない」と主張している。また朝木が「元市議会議員が多摩湖寿会の会計から横領した」旨の事実を摘示したという範囲で山川の主張を認めた「山川が主張する不法行為」5、6、7、9、10についても当然、「摘示事実について真実性・相当性を立証しなければならない」と主張している。

詳細な事実摘示の立証も要求

 上記の「山川が主張する不法行為」1~10は、それぞれに微妙な違いはあるものの、「山川は多摩湖寿会の金を横領した」というものだが、上記のうち2、3、5、6、7、10についてはより詳細な発言、記載がある。2、3、7は「山川は福祉募金を盗んだ」というものであり、5、6、10は「山川は、多摩湖寿会の研修旅行で、入浴もしていないのに入浴したとして1万円の架空の支出を計上し、その1万円を着服した」というものである。

 最初の準備書面において朝木は、福祉募金の件も「入浴料」の件も具体的にいっさい主張していない。山川は「横領した」という事実だけでなく、上記の摘示事実についても具体的に立証する必要があると主張している。普通に考えれば、「横領」の文言がなかったとしても、「福祉募金を盗んだ」、「架空の入浴料を計上し、着服した」との事実摘示は、それだけでも十分な名誉毀損といえるのではあるまいか。

「発言」否認に対する反論

 裁判所内での発言(山川が主張する不法行為8)と議会終了後の発言(同12)については、朝木は発言の存在自体を否定している。その存在の認定については裁判所の判断に委ねるほかない。

 ただ議場での発言については、朝木は「この日の市の答弁について納得がいくものではなかった旨の私的な会話をした」という範囲で認めている。すなわち、発言の完全否定ではなく、内容において山川の主張を否定しているのである。しかし、清水との間で交わしたという具体的な会話内容を示さなければ、これはたんに虫のいい主張ということになるのではあるまいか。

 全体として朝木らの認否をみると、断定表現が含まれているにもかかわらず「疑惑の摘示にすぎない」と主張したり、「原告を特定していない」、あるいは「発言はしていない」などとして名誉毀損の成立自体を否定しているものがほとんどだった。これに対して山川は、上記のとおり、名誉毀損の成立を主張し、朝木には「山川は多摩湖寿会の会計から横領した」との事実について真実性・相当性を立証する必要があると主張した。「疑惑の摘示にすぎない」とする主張を裁判所がどう判断するのか、その点も裁判の行方を左右する争点であると思われた。

(つづく)
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