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民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒

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多摩湖寿会事件 第8回
社協担当者が伝えた「弁護士の見解」

 平成28年12月議会の一般質問で、朝木は「元市議による多摩湖寿会での横領をいつまで隠蔽するのか」について聞くとし、その最初の質問として「同問題に対する社協の対応」と「返金された42万4500円の処理の仕方」を聞いた。「社協の対応」については、朝木自身が9月議会で自ら「経過」を説明しているから、すでに朝木はよく知っているはずだが、あえて再度、所管の口から答弁させようということなのだろうか。

 これに対して所管の健康福祉部長は、まず「社協の対応」について朝木が9月議会で自ら説明したことにはいっさい触れず、冷静に次のように答弁した。

健康福祉部長  (平成28年)8月17日に社協で実施した話し合いでございますが、これまでの相談経緯、新旧役員の双方の主張、補助金に関わる会計処理の調査内容、社協顧問弁護士の見解などを社会福祉協議会担当者が説明をしております。

 9月議会で朝木が自ら説明したとおりで、なんら変更点はない。社協担当者が説明した内容は、「顧問弁護士の見解として、1として『不正に抜き取られた(筆者注=朝木の主張)のは補助金の部分でないこと』、2として『市老連の会計監査も通っていること』、3として『多摩湖寿会の総会においても過年度決算は承認されており、お金も返金されていて、示談が済んでいる』という理由により、『何の問題もない』という見解を伝えた」というものである――と朝木自身が説明している。このうち、「不正に抜き取られた」という文言以外については、社協がそのように説明をしたことは事実である。

 では、「返金された42万4500円の処理の仕方」についてはどうか。

健康福祉部長  返還金の使途については……社協担当者は「帳簿等を確認している最中であるので、一定の結論が出るまではそのまま保管するように」指示をしたと聞いております。しかし現会長は、「約42万円については寿会のものであり、仮に返還等が発生しても現役員で責任を持つ」とする返答をしたという形で報告を受けております。

 これに対して朝木は次のように質した。

朝木  ちょっと私が聞いている話と違いますけど、少なくともこの時点では、この元会計がお金を抜き取ったことは認めたということですよね。それは社協も行政も知ってるんですね。

 健康福祉部長の答弁について、朝木はどの部分を「私が聞いている話と違う」といっているのか、社協が寿会会長に指示したという内容のことなのか、あるいはそれに対する寿会会長の返答のことなのかはわからない。「違う」というのなら、どこが違うのか明らかにすればいいのではあるまいか。

誘いに乗らなかった部長

 しかし「違う」といいながら、朝木はその点には触れず、山川が「お金を抜き取ったことは認めたということですよね。それは社協も行政も知ってるんですね」と、それまで所管が一言も述べていない論旨で確認を求めた。

 朝木は9月の一般質問で、「山川は返金はしたが、『私は今年(平成28年)の寿会50周年記念事業のためにお金を積み立ててあげていただけで、横領ではない』と主張している」と説明している。朝木は山川が「お金を積み立ててあげていた」と説明していることを知りながら、その主張を認めず、一方的に「盗んだ」と主張していた。

 寿会会長から山川が返金した42万4500円の処理の仕方について聞かれた時点で社協と所管が知っているのは、山川が「返金をした」という事実だけである。山川が「返金したこと」と「金を抜き取ったことを認めたこと」とはまったく別の話だが、朝木はあえて「返金したこと」と「抜いたと認めたこと」という2つの事実をごちゃまぜにして、所管に確認を求めているようにみえる。

 朝木のこの質問に対して健康福祉部長が「返金したことを知っているか」と聞かれたものと勘違いし、うっかり「知っております」と答弁しようものなら、たちまち「行政は山川が寿会の金を抜き取ったことを認めた」ことになってしまう。朝木にはそんなしたたかな計算があったのではあるまいか。

 しかし健康福祉部長は、朝木の誘いには乗らず、淡々とこう答弁した。

健康福祉部長  返金がされたという事実は、この段階では確認をしております。以上です。

 このあたりから朝木は、この日の質問の狙いが、行政に対して「山川は寿会の金を横領した」と認めさせるところにあることを露骨に見せ始め、質問の口調もしだいにきつくなってきた。「山川が寿会の金を抜き取った」と健康福祉部長に認めさせる誘導質問に失敗した朝木は、健康福祉部長に次のように詰め寄った。

朝木  取ってもないお金を返金する人はいないでしょう。

 これまで朝木と健康福祉部長との間で、山川が「寿会の金を盗んだのか、そうでないのか」についてのやりとりはいっさいなされていない。したがって、朝木の上記の発言はもはや質問ではなく、朝木の個人的な意見にすぎない。しかも行政に関する意見ならともかく、行政とは関係のない個人的な意見に対して所管が答弁する必要はあるまい。

 朝木は「山川が寿会の金を抜いた」とする主張に対する答弁が期待できないと直感したのか、今度は山川と寿会会長が交わした「誓約書」の話を持ち出した。誓約書には、山川が社協の評議員等を辞任する旨、および「今後金銭的な内容についてはこれをもって一切申し立てをしない」と記載されている。朝木は山川が数種類の組織の役職を辞任することを認めた事実をもって、「山川が寿会の金を盗んだことを認めた」と主張したいようだった。

(つつく)
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多摩湖寿会事件 第7回
「横領」を前提とした質問

 平成28年11月30日に行われた朝木直子の一般質問は、朝木が「社会福祉協議会は虚偽の報告をしています」と一方的に主張したあと、次の質問に移った。その冒頭、朝木は質問のテーマについてこう述べた。

朝木  本題に入りますけれども、「元市議による多摩湖寿会での横領をいつまで隠蔽するのか」というようなことで伺います。

 すでに「元市議が多摩湖寿会で横領という犯罪を犯した」とする事実が存在することを前提にした質問であることがわかる。それを市が隠蔽したとすれば、市もまた共犯ということになるが、何を「伺う」というのか。朝木はまずこう聞いた。

朝木  9月議会で指摘した元市議による多摩湖寿会で発覚した横領について、社協の対応はどのようであったのか、(1)8月17日(筆者注=平成28年)に社協で多摩湖寿会の前年度役員、現年度役員及び市老連、高齢介護課職員、第三者の立会人にて協議した内容を伺います。また元会計から返金された42万4500円についてはどのように処理をするのか伺います。

 朝木が「元市議による多摩湖寿会で発覚した横領」と主張する出来事について、朝木が平成28年9月議会の一般質問で説明した「事件の概要」をあらためて紹介しておこう。



(朝木が説明した「事件の概要」)

 今年の6月17日、当市の補助対象団体であります、補助金の交付対象団体であります老人クラブ、多摩湖寿会にて2012年(平成24年)度から2015年(平成27年)度会計における不正処理が発覚。今年度の会長をはじめとする役員による調査の結果、経費の二重計上、会費、祝い金等の未納入などにより、4年間で合計42万4500円の不足金があることがわかった。

 平成24年度から27年度は、通常2人で受け持つ会計業務を1人の人物が受け持っていたため、その前会計に連絡をし、7月1日に多摩湖ふれあいセンターにて役員が問い質したところ、寿会の会計から上記方法により42万4500円を抜き取ったことを認め、同日にこの42万4500円を返金した。



 このうち、「経費の二重計上、会費、祝い金等の未納入」があり寿会の会計帳簿に収入として記載されていなかったこと、つまり本来は寿会の会計帳簿に計上されるべきであるにもかかわらず計上されていない金があり、前会計の山川は寿会会長に対し42万4500円を返金した――上記の朝木による経過説明のうち、ここまでは事実である。ただし、朝木が続く説明の中で〈この前会計は、「私は今年(筆者注=平成28年)の寿会50周年記念事業のためにお金を積み立ててあげていただけで、横領ではない」と言い張り〉と説明しているとおり、山川はその42万4500円について「抜き取った」(=「盗んだ」、あるいは「横領した」)ものではないと主張している。

 すると、山川の主張を前提とすれば、「山川は寿会50周年記念事業のために簿外で積み立てていた42万4500円を会長に返金した」ということになる。会計担当として、簿外で積み立てたという行為が不適切な行為であることは間違いない。しかし、朝木の主張するようにこの行為を「横領」とまで断定していいのかどうか。

「金銭的解決」を意味する誓約書

 さて、山川が寿会会長に42万4500円を返金したあとの経過は、朝木の説明によれば、以下のとおりだった。



(「返金」後の行政の見解=朝木の説明)

 多摩湖寿会は、平成24年度から27年度の会計において不正があったこと、及び返金されたこの42万4500円の処理について市老連に相談をしたところ、市老連は……返金された42万4500円については、行政に返金があり得るので、手をつけないでほしい」と、現寿会会長に伝えた。その際、過年度の会計について、……行政も社協もなんら問題なしとの認識を持っており、元会計についても……お咎めはなしという趣旨のことも、寿会会長に伝えた。

筆者注=平成28年8月17日になり、市老連の見解は)「寿会と前会計で話し合い、示談書を作成し、示談してほしい」とのことであった。……(筆者注=同日、寿会会長と山川は)誓約書を作成し、本人も署名、押印した。



 この「誓約書」とは「示談書」と題された文書ではないものの、「誓約書」には「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との文言が入っている。したがって、内容的には示談書と同等のものと理解していいのではあるまいか。

刑事告訴の可能性

 しかし、この経過説明の終わりに朝木は次のように説明した。

〈8月の25日に、寿会は前会計を呼び、正式な示談について話し合いを持ったが、この前会計は、「私は今年の寿会50周年記念事業のためにお金を積み立ててあげていただけで、横領ではない」と言い張り、「横領を認め、謝罪すれば刑事告訴はしない」という示談は成立しなかった〉

 その前に、山川は42万4500円を寿会会長に返金し、寿会会長との間で「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との「誓約書」を交わしている。朝木はそのことを認めた上で、「(その後に)正式な示談について話し合いを持ったが、……『横領を認め、謝罪すれば刑事告訴はしない』という示談は成立しなかった」と述べているのである。

 難解な話だが、朝木は「誓約書」を交わしたことは認めるが、その上でさらに山川は寿会会長との間で「『横領を認め、謝罪すれば刑事告訴はしない』という示談をすべきだと主張しているようだった。寿会会長も当然、同じ考えなのだろう。山川に「横領」を認めさせたいということなのだろうか。

「横領」とは「他人から委託されて預かっているものを自己の利益のために使ってしまう(処分する)こと」である。したがって、山川がした行為を「横領」といえば、「山川は寿会会員から預かっている金銭を自己利益のために使ってしまった」という意味であることになる。すると、「誓約書」を交わした後に「山川が横領した」と主張することは、「誓約書」にある「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との文言に反することになるのではあるまいか。

 朝木は、「『横領を認め、謝罪すれば刑事告訴はしない』という示談は成立していない」という。しかし、そもそも「誓約書」を交わした上で、「横領を認め、謝罪すれば刑事告訴はしない」という示談があり得るのだろうかという疑問もある。いずれにしても朝木が平成28年9月以降、寿会会長と山川が「誓約書」を交わした事実およびその内容を知った上でなお、「山川は寿会の金を横領した」と主張していることだけは確かだった。

 なお朝木は、「横領を認め、謝罪すれば刑事告訴はしない」という示談は成立していないというのだが、現在のところ、寿会会長や朝木が山川を告訴・告発したという情報は届いていない。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第6回
社会福祉協議会の中立性に疑義

 平成28年11月30日に行われた朝木直子の一般質問は、通告書に従い、「1.社協の監査は適正に行われているか」から入った。社協が東村山市内の老人クラブの会計監査を行うようになった経過、監査の内容、範囲、決算関係書類の確認方法、責任の所在等である。そこまでは一応、あまり違和感のない普通の質問だった。

 様子がおかしくなったと感じたのは、「(多摩湖寿会以外の)他のクラブに聞いたところ、補助金の使途については社協からは厳しく指導されており、帳簿の内容も指導手引きの内容に沿ったものだった」と前置きし、次のように聞いたときである。朝木はやんわりこう聞いた。

朝木  老人クラブによって監査の方法や指導が違うようなことっていうのはあるんでしょうか?

 この質問が、彼らの政治広報紙『東村山市民新聞』第188号(平成28年10月31日付)で〈社会福祉協議会事務局の中には、山川・元公明市議の横領に見て見ぬふりをした職員がいるのではないかとの疑惑が出ている。〉、〈元市議だと、特別扱いなのでしょうか?〉と記載したことと無関係でないのは明らかである。朝木としては「社協が山川だけを特別扱いした」ということにしたいのだろう。

「(多摩湖寿会以外の)他のクラブに聞いたところ、補助金の使途については社協からは厳しく指導されており、帳簿の内容も指導手引きの内容に沿ったものだった」というからには、多摩湖寿会以外の老人クラブの会計責任者すべてから事情を聞いた上で、多摩湖寿会以外の老人クラブに対する社協の扱いは多摩湖寿会に対する対応とは異なっていることを確認したということなのだろうか。

 朝木の質問は公的性格を持つ社会福祉協議会の中立性・公平性に疑義を呈するものである。したがって上記の朝木の質問は、多摩湖寿会以外のすべての老人クラブに対する調査を行い、確認が取れたというのでなければ、軽はずみな発言として慎むべき内容である。東村山市内には、多摩湖寿会以外に50の老人クラブが存在する。仮に調査を行ったのだとしても、ここまでいうからには当然、アンケートなどの表面的な調査では十分とはいえない。

 朝木の質問に対して健康福祉部長は次のように答弁した。

健康福祉部長  ……老人クラブによって異なった方法で監査をすることはないというふうに認識をしております。しかしながら、……各老人クラブの自主性、主体的な会の活動を重んずるがゆえに一部拡大した解釈などがあったことは認めざるを得ません。

 監査で特定のクラブに便宜をはかったり、不公平な扱いをした事実があれば大変な不祥事で、そんなことがそうそうあるはずがない。なおここで健康福祉部長がいった「拡大解釈」とは、補助対象経費がどこまで認められるのかについての解釈に、拡大し過ぎた部分があったという趣旨である。補助対象経費として認めていた経費の中に、規則上は認められていないものまで認めていたものがあったということだった。要するに、これまで補助対象経費の扱いについてはけっこう緩かったということでもあろう。

 健康福祉部長の口から「拡大解釈」という文言から出ただけでも朝木にとっては収穫だったろう。「拡大解釈」といえば聞こえはいいが、判断の誤りではないかといわれれば反論できない。朝木が行政のミスを認めさせたかたちだった。

朝木の深謀

 ただ、朝木の狙いはその点にあるのではない。さらに朝木は質問を重ねた。

朝木  ちょっと今気になった「拡大解釈」という問題ですけれども、これが特定の老人クラブにだけ許されていたという現状はありますか?

 所管としては多摩湖寿会に限定した問題と割り切るしかない。所管はこう答弁した。

健康福祉部長  少なくとも所管としては、そういう認識は持っておりません。

 所管の答弁に対して、朝木は根拠を示して反論することはなかった。これで終わってしまえば、ただ所管に「社協は不公平な扱いはしていない」と答弁させただけとなり、朝木は何のために質問したのかということになる。

 しかし朝木の狙いはその先にあった。朝木は次のように質問を継続させた。

朝木  ……老人クラブによって監査の方法は変えてないよということで、……(手引きによって)監査が行われて、補助対象経費、対象外経費の区分けがされる……それを前提にして伺いますけれども、この多摩湖寿会の今、平成26年度の領収書と帳簿がここにあるんですけれども、……同じように監査をしているということであれば、……拡大解釈もまあ若干あるかもしれないと……勘案したとしても、何十件というね、たとえばお酒、……ビールとかいいちこから始まって神社へのお祝い金から、……下見に行った役員数人が東武ホテルの食事、東武ホテルで食事代として6400円の支出とか、こういうわけのわからないものがいっぱい貼ってあるわけですよ。東武ホテルもそうだしファミリーレストランの食事の領収書から宴会の酒類、備後ゲーム用品、それから市内外の寿司店、中華料理店の飲食費……神社へのお見舞い、神社へのお祝い、これを4年間にわたって市老連(筆者注=東村山市老人クラブ連合会)は認めてきたということであるのか。そうするとね、……この手引きについては、これはどういう位置付けで考えているのか、ちょっとお答えいただけますか。

 ここでいう「手引き」とは、「どこまでが補助金の対象となる経費なのか」についての手引きのことである。朝木からこの「手引き」の位置付けを聞かれた所管は、「補助金の対象となる経費について、老人クラブを指導していただくためのガイドライン」であるとの趣旨の答弁をするしかなかった。すると、それまで朝木が挙げた、ホテルでの食事代や神社へのお祝い金などの支出はこの「手引き」に沿ったものなのかということになる。

 警察が犯罪者を問い詰めているのならともかく、ここは取調室でも裁判所でもなく、議会なのだった。議会では自分の把握している事実を述べた上で、疑問点を問えばいいのではあるまいか。朝木の質問は、相手の言質を取った上で、自分のつかんでいるネタを後から出していき、相手をやり込めようとするもののように思える。「手引きの」の位置付けなど、あえて議場で聞くような話ではない。

 しかし朝木は、「手引き」の性質をわざわざ所管に答えさせた上で、さらにたたみかけた。

朝木  ……では、この手引きに基づいて、一律に監査したということであれば、なぜこの多摩湖寿会の、この帳簿、領収書が4年間にわたって監査を通ってきたのか。……真相が知りたいので、この原因について伺います。はっきり答えてください。

 ここまでくると朝木が冒頭でやんわり「社協の監査の公平性」を聞いたことの意図が見えてくる。ここで朝木は、「公平といっているにもかかわらず、多摩湖寿会に対する監査の状況は公平とはいえないのではないか」といっているのである。健康福祉部長は次のように答弁した。

健康福祉部長  ……今回確認をさせていただいて、一定、議員からもご指摘が、決算特別委員会でございましたように、会計として不適切なものがあるということで今回確認をさせていただいております。……会の自主性、主体性を重んじるあまり、拡大解釈の部分が出てしまったというような形で報告を受けているところでございます。

 所管は社協の監査に落ち度があったことを認め、9月議会以降に行った再調査の結果、補助金の返還が発生するような状況であることを説明した。それでもなお朝木は、「社協が市に虚偽の報告をした」と主張したのだった。

 朝木としては、「社協が山川を特別扱いした結果、不正な会計報告を見逃した」という結論に持っていきたかったのだろう。しかしこの点はまだ、ほんの入り口にすぎなかった。

(つづく)
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東村山市議会傍聴記(平成29年3月議会一般質問)
 平成29年3月3日、東村山市議会では一般質問が行われた。この日、午前11時30分から朝木直子の一般質問が始まったが、朝木の質問は昼食休憩を挟んで午後4時30分まで続いた。東村山市がある資料を市民に提供したことを朝木が問題視して追及し、その答弁をめぐって何度も議会運営委員会が開かれるなどして、議会の進行が止まったのである(この質問内容についてはいずれ詳述する)。この5時間のうち、実際に質問と答弁が行われたのはせいぜい1時間程度だったのではあるまいか。

 この日の朝木の一般質問のタイトルは〈多摩湖寿会で発生した元市議による横領事件について〉である。朝木はこのテーマを平成28年9月議会から続けており、同議会の決算特別委員会での質問を含め、議会で取り上げるのは4回目となる。

 多摩湖寿会の会員たちとおぼしき市民が10人ほど傍聴に訪れていた。朝木の質問中、議会の進行が止まった際には、質問者の朝木直子と多摩湖町を地盤とする自民党の東村山市議蜂屋健次がたびたび傍聴席の寿会会員とおぼしき市民のところまでやってきて、なにやら話し合っているという光景が見られた。

 私の座っていたのは議場の左端で、寿会の人たちが座っていたのは右端だったから、何を話していたのかその内容は定かではない。ただ、議会が止まった際には寿会の中心的人物(会長と思われる)が議長に向かって大声で何かを訴え、議長からたしなめられるという場面もあったから、朝木の質問内容が寿会、とりわけ会長にとっても切実な問題であることがうかがえた。

傍聴席で携帯カメラを向けた寿会「会長」

 それにしても、何時間も議会が止まるのはめったにないことと思うが、議会が中断している最中に、傍聴席でもめったにない事件が起きていた。私の記憶では午後4時ごろのことである。私は元東村山警察署副署長の千葉英司と並んで傍聴席の左端に座って再開を待っていた。ふと傍聴席の右端に目をやると、どうしたのか、寿会の会長とおぼしき人物が、まずその人物の通路を挟んですぐ左側の市民(寿会会員と思われる)を携帯電話で撮影し始めた。

 それまで、その寿会会長と思われる人物は寿会会員と思われる市民たちに飲み物を差し入れるなど非常に気を遣っている様子だったから、記念写真でも撮っているのだろうかと思って見ていた。するとそのうち、その人物は携帯をすっと私たちの方に向けたのである。それが目的だったとすれば、まず会員たちに携帯を向けたのは、カムフラージュのつもりだったのかもしれない。

 携帯がこちらの方向に向けられたことに気がついた私と千葉は、ただちにその人物に向かって大声で怒鳴りつけた。

「こっちを撮るんじゃない」

 とっさのことで、また相手との間には相当の距離があるから、おとなしい声では聞こえないし、撮影を止めさせることもできない。だから、われわれの口調が強くなったのは致し方ない。

 寿会会長とおぼしき人物は、われわれが自分に対して怒っていることにすぐに気がつき、携帯を下に向けた。われわれが何をいっているのかにすぐに気がついたことを考えると、やはりこの人物の狙いはわれわれにあったとみるのが自然なようだった。このことについて、寿会会長とおぼしきこの人物からわれわれに対して直接的な反論はいっさいない。

 われわれが怒鳴ったことに対して、そばに座っていた2人の傍聴者から批判があった。1人はわれわれの方を向いて「そんないい方をしなくてもいいじゃないか」という。しかし距離があり、撮影を止めさせるには大きな声で、強くいうしかなかろう。撮影しようとした側を批判しないのは本末転倒である。

 もう1人の批判は「あなたも撮影してるじゃないか」というものだった。しかし私が「私は議長の許可を受けて、議会の開会中に議場(公人)を撮影しているだけで、傍聴席の私人を撮ってはいません。私人を勝手に撮るのはダメなんですよ」と説明すると、この傍聴者はすぐに理解してくれた。

割り込んできた蜂屋健次(自民党)

 そんな傍聴者とのやりとりがあった直後のことである。議場内にはその寿会会長とおぼしき人物の近くで、市の職員と自民党議員の蜂屋健次がわれわれの正面を向いて座っていた。すると、今度は蜂屋が割り込んできた。蜂屋は私に向かって薄笑いを浮かべて、「まあそんなに怒らなくても」という趣旨のことをいったのである。

 この議員は傍聴席で他の傍聴人からカメラを向けられることがどういうことか理解できないようだった。だから私は蜂屋をこう怒鳴りつけた。

「おまえ、傍聴人をからかうようなことをいうんじゃないよ」

 すると蜂屋は、私に対して「『おまえ』といったな」と強い不快感をにじませながら、議場から出ていった。「捨てぜりふ」というのだろうか。

蜂屋は自分の支持者が非難されていることに気がつき、支持者をかばおうとしたのだろう。支持者を大事にしようとする気持ちは人情かもしれないが、それも時と場合による。寿会会長とおぼしき人物がわれわれに携帯電話のカメラを向けたことは事実なのだから、蜂屋は市会議員として、それが自分の支持者であろうと、カメラを向けた側を注意すべきなのである。カメラを向けた側にはなんらの注意もせず、カメラを向けられた側に対してのみたしなめるような発言をするというのは、やはり筋が通らないのではあるまいか。

 かつて東村山市議会では「草の根市民クラブ」の矢野穂積が傍聴席にカメラを向け、また朝木直子が市役所の敷地内で千葉にカメラを向けた。また平成21年3月議会では、矢野が東村山に連れてきた右翼が傍聴席をビデオで撮影し、ユーチューブに上げたという事件があった。そのときには、右翼に対して議長が削除を求めるまでに発展した。

私の知るかぎり、傍聴人が傍聴席を撮影するという事件が起きたのは、上記の右翼によるビデオカメラ撮影事件以来のことである。しかし、傍聴席を無断で撮影しようとした者を自民党の市会議員があからさまに擁護した例は記憶にない。

(了)
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多摩湖寿会事件 第5回
「横領」を前提とした質問

 平成28年9月議会で市に対して「多摩湖寿会の会計問題」を再調査するよう求めたにもかかわらず、矢野穂積と朝木直子はその結果を待たず、彼らの政治広報紙である『東村山市民新聞』第188号で「山川元市議が多摩湖寿会の金を横領した」と断定する記事を掲載した。東村山市健康福祉部が9月議会での答弁に基づいて、朝木に対する答弁を行ったのは平成28年11月30日に行われた平成28年12月議会の朝木の一般質問のときだった。

 それに先立ち、朝木と矢野は平成28年11月22日、次のような一般質問通告書を議長宛提出していた。その見出しは朝木が「1 社協の監査は適正に行われているか」、「2 元市議による多摩湖寿会での横領をいつまで隠ぺいするのか」の2本、矢野が「1 パワハラと市長らの責任」と「2 多摩湖寿会で発生した横領事件の責任」の2本である。朝木の質問の2項目を見れば、それらがいずれも『東村山市民新聞』第188号で取り上げたテーマそのものであることがわかる。

 朝木の通告書のうち、「1 社協の監査は適正に行われているか」ついては政治広報紙ですでに矢野が〈山川・元公明市議の横領に見て見ぬふりをした職員がいるのではないかとの疑惑が出ている〉と記載し、「読者の声」として〈なぜ元市議が担当した(不正な)会計が社協の監査を通ったのか〉と記載していた。しかし朝木の質問通告書には「社協の職員が横領を見て見ぬふりをした」とする趣旨の記載はなかった。朝木は質問通告書で、老人クラブの監査における社協の役割や責任など一般論的な質問の他に、〈(6)「監査」により不適正な会計は過去5年間に何件あったか、またその内容を伺う。〉〈(7)老人クラブ会計の「監査」が適正に行われていなかった場合、その責任の所在は。〉という具体的に踏み込んだ質問を記載していた。

 ここまではまだ少しは冷静さが保たれていたようにみえる。しかし、「2 元市議による多摩湖寿会での横領事件をいつまで隠ぺいするのか」に至っては、所管の答弁を待つ以前に「横領事件があった」と決め付けていて、なにかこの一般質問通告書の内容そのものによって市民に対し、彼らの主張を伝えようとしているような印象も受ける。この一般質問通告書は、一般質問よりも前に市議会のホームページで公開され、一般質問当日には傍聴者に貸し出されるのである。

 朝木が提出した一般質問通告書の「2 元市議による多摩湖寿会での横領事件をいつまで隠ぺいするのか」には3つの質問事項があった。

〈1.9月議会で指摘した元市議による多摩湖寿会で発覚した横領について、社協の対応はどのようであったか。〉

〈2.9月の決算委員会で、健康福祉部長は多摩湖寿会不正会計について「調査する」と答弁した。その後どのような調査をしたか。〉

〈3.今回のような横領事件を二度と起こさないための再発防止について伺う。〉

 の3項目である。これらの質問もまた「横領」の存在を前提とするものであることがわかろう。これを読んだ市民が、「多摩湖寿会では本当に『横領事件』があったのか」と受け取ったとしても不思議はない。さらに朝木は、上記〈3.今回のような横領事件を二度と起こさないための再発防止について伺う。〉の中で「横領」を前提とした次のような質問を通告していた。

〈(5)市に提出された平成24年度から平成27年度の「収支報告書」は虚偽であったことが明らかとなった。過失ではなく故意(悪意)であることも内容から明らかであるが、この事実について、市はどう対処するのか。〉

〈(6)虚偽の収支報告書を提出し、補助金(公金)を着服した元市議に対し、今後どのような措置を考えているか。刑事訴訟法第239条第2項もふまえ、市の見解を伺う。〉

 上記の「刑事訴訟法第239条第2項」とは、「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」という規定である。朝木は平成28年9月議会で市に対して「再調査」を求めた上で、「これは横領の可能性が非常に高いですから、横領であった場合には、きちんと告発をしていただきたい」と主張していた。しかし、12月議会に向けた一般質問通告書では、市側の「再調査」の結果を待つことなく、「横領」を前提として市の対応を質していることがわかる。実質的には「告発すべき」という主張にほかならなかった。

「再調査」の結果、市が「横領」の事実を認定した時点で「告発すべき」と主張しても遅くはないと思うが、朝木にはそのような選択肢はないようだった。上記(5)と(6)の質問通告書の記載は市側に対する強い牽制でもあったのだろうか。

蜂屋議員が「解説」していた市民

「横領」を前提とした質問を通告していた朝木の一般質問が始まったのは平成28年11月30日午後2時ごろだった。東村山市議会の本会議場は改修工事に入っていて、その日は委員会室で行われていた。委員会室は扇形の本会議場と異なり、大きな会議室を2つつなげたほどの広さの長方形の部屋で、傍聴席から見て奥側に議員がこちら側を向いて座り、議員に向き合うかたちで答弁側の市長、副市長をはじめとする市の担当者が座っていた。議長席はちょうどテニスの審判のように、右に市側、左に議員側を見渡せる位置に設置してあった。

 傍聴席は市職員の背中側に座るかたちとなる。午後の休憩を挟み、私は傍聴席の最前列、一番奥の位置に座った。するとその直後、4、5名の女性たちが入ってきて、傍聴席のほぼ中央部の最前列と2列目に固まって座った。

 その中のリーダー的人物が、9月議会で朝木が一般質問を行った際にも数人で傍聴に来ていた市民のうちの1人であることがわかった。9月議会の際、彼らは朝木の質問が終わるとすぐに議場を出ていったが、まだ本会議中だというのに、自民党の蜂屋健次がわざわざ議場を抜け出して彼らのところにやってきて、「(多摩湖寿会の問題は)今後は市がどう対応するかですね」などと市議会議員らしく「解説」していたという。

 蜂屋の地盤が多摩湖町であること、市議会議員の蜂屋が本会議中にもかかわらず議場から出てきて今後の見通しを話していたこと、蜂屋の発言から彼らが朝木の質問に強い関心を持っていたとみられること等からすると、彼らはたんに朝木の質問に関心を持っていただけでなく、多摩湖寿会の関係者、それもかなり重要な立場にある人たちなのではないかと推測された。もちろん多摩湖寿会の関係者なら当事者だから、朝木の質問に関心を持つのは当然である。

 平成28年11月30日午後、傍聴席の中央付近に固まって座ったのも9月議会のときと同じ市民たちだった。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第4回
「研修の入浴料を着服」と断定

「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と主張する『東村山市民新聞』188号の4面は、〈横領をした元公明党議員は元市議会副議長だけでなく〉〈こんな人物が市監査委員を!〉と題する「編集長朝木直子」の署名記事である。1面の記事が「横領」の内容を総括的に主張していたのに対して、この記事では〈経費の二重計上にとどまらず〉ほかにも「横領」の手口があるとして、具体的な「不正」に言及している。その中でとりわけ注目されるのは次の2つの事例である。1点目は「研修の際の入浴料」で、朝木は次のように記載している。



(「入浴料」に関する記載)

 研修旅行先で会員20人が入浴したとして入浴料1万円が研修費(公費)として計上されていることにも驚きますが、調査の結果、入浴したとされている日はその入浴施設は改修工事中で、「入浴の事実自体があり得ない」ことも明らかとなっています。



 つまり朝木は、「山川は入浴できなかったにもかかわらず、入浴したものとして1万円を経費として計上し、それに対する補助金1万を着服した」と主張しているものと理解できよう。その根拠は「入浴施設は改修工事中」だったというもので、だから入浴するのは不可能だったというのである。「入浴できなかった」というのは事実なのだろうか。

 仮に「改修工事中」だったとしても、入浴できるか否かは、その工事の内容や規模と、工事がいつまでかかったかによるのではあるまいか。したがって、「改修工事中」だったからといって、入浴が不可能だったとまではいいきれない。朝木の主張にはどこまで裏付けがあるのだろうか。

 2点目は、朝木が裁判所で山川を「泥棒」呼ばわりした際に出てきたものである。朝木は次のように記載している。



(福祉募金に関する記載)

 会員から集めた「福祉募金」も行方不明になっているなど、山川昌子元市議が返金した42万4500円の他にもかなりの不正会計があることは明らかです。



 ここでは「福祉募金も行方不明」と記載している。通常は募金が「行方不明」になることは考えにくく、「他にもかなりの不正会計があることは明らか」と記載していることからすれば、この福祉募金に関する記載もまた「山川が不正会計によって着服した」とする主張であると理解できよう。具体的に山川がいかなる方法で「福祉募金」を着服したというのだろうか。また、朝木はどんな調査を行った結果として「行方不明」と断定しているのか、その根拠はどこにあるのだろうか。

 さらに朝木は、〈会計帳簿に添付された領収書には、市内の寿司店での飲食費や中華定食屋の「ギョーザライス」や「チャーシューメン」などまで含まれ、山川元市議の私的な飲食費と思われる経費が多くみられます〉と記載している。山川が多摩湖寿会の経費で私的な食事をしていたというのだが、朝木はどんな根拠によって、その領収書が山川が私的な飲食をしたものだと「思われた」というのだろうか。

市長に対しても牽制

 なお、記事の最後で朝木は〈この人物は、渡部市長とも懇意にしています。〉と記載している。どういう狙いなのか定かではないが、朝木が平成28年9月21日に行った決算委員会での質問の最後で、所管に対し、

「これは横領の可能性が非常に高いですから、横領であった場合には、きちっと告発していただきたい」

 と主張したことと関係しているのではないかと私は考えている。つまりこれは12月議会に向けて、「市が告発しなければ『懇意』ではすまなくなる」という市長に対する牽制なのではあるまいか。

寄せられた「市民の声」

 4面には朝木の署名記事だけでなく、「納得いかないコーナー」という「読者の声」欄に、朝木らの主張する「横領」事件に関して一般市民から寄せられた(という)次のような2件の「声」が掲載されている。



(『東村山市民新聞』に寄せられた「市民の声」①)

 多摩湖老人クラブでの横領の件で、元会計本人は「私はハメられた!」とか多摩湖寿会の現役員の悪口を言ったりして、まったく反省していません。お金を返したからいいと思っているのでしょうか? だとしたら警察はいりませんよね。悪質なので徹底的に調査して、なぜ4年間も発覚しなかったのか解明してください。(多摩湖町ほか多数)



 山川によれば、この件で「私はハメられた」などという発言をしたことはいっさいないという。するとこの「現役員の悪口」なるものはいったいどこから出てきたものなのか。本人が否定している発言を、この「多摩湖町の市民」が聞くはずはない。この重大な齟齬をどう理解すべきだろうか。



(『東村山市民新聞』に寄せられた「市民の声」②)

 老人クラブの会計をやっています。会計は社協(筆者注=社会福祉協議会)から厳しく年度ごとに帳簿や領収書を監視されます。それなのに、なぜ元市議が担当した会計が社協の監査を通ったのか納得がいきません。元市議だと、特別扱いなのでしょうか?(市内高齢者)



 上記の投稿は、「山川が多摩湖寿会の金を横領した」との事実を前提とするものであり、また2面の〈社会福祉協議会事務局の中には、山川・元公明市議の横領に見て見ぬふりをした職員がいるのではないかとの疑惑が出ている。〉とする矢野の主張に重なるものである。市の組織である社協が、元市議だからといって特別扱いするとはにわかには考えられないが、この投稿者はなにか社協をやり玉に上げたい理由でもあったのだろうか。

 実は平成28年9月7日に朝木直子がこの問題をめぐって行った一般質問の中で、「寿会会長が今回の件について社協に相談した際、社協から『過年度の会計について、市老人クラブ連合会の監査及び寿会総会においてすでに承認されているので、元会計(山川)についてもお咎めなし』との認識であることを告げられた」とする経過説明を行っている。現実にその後も、寿会会長に対して社協が直接、同様の回答を行ったという経緯があった。

〈社会福祉協議会事務局の中には、山川・元公明市議の横領に見て見ぬふりをした職員がいるのではないかという疑惑が出ている。〉とする矢野の記載に加え、同じ趣旨の上記②の投稿をあえて掲載するとはよほどのことである。寿会会長の意に沿わない判断を示した社協に対する理屈を超えたこだわりのようなものでもあったのだろうか。あるいは、これもまた市長に対してと同様に、社協に対する牽制、脅しと受け止めることができるのではあるまいか。

 こうみてくると、矢野らの政治広報紙『東村山市民新聞』第188号の記載は、「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と大々的に宣伝するだけでなく、市や市長に対するアピール、牽制という狙いがあったのかもしれない。朝木が求めた「再調査」に対する答弁が行われる12月議会は、平成28年11月末に迫っていた。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第3回
「横領」、「着服」と記載

 1面トップで〈元公明市議が横領〉とする見出しの記事を掲載した「草の根市民クラブ」の政治広報紙、『東村山市民新聞』第188号の本文をみていこう。

 ビラは冒頭で「横領」の内容について総括的に次のように記載している。

〈……山川昌子・元公明市議が……「多摩湖寿会」の会計を担当した2012年度から2016年度の四年間に、一度支出した経費を再び帳簿に二重計上したり、一度の買い物で領収書とレシート両方をもらい、別々の経費に計上したり、また受け取るはずのない「廻田小PTA総会への祝い金」など実際には支出のないお金を支出したことにして着服するなど会予算の2割以上を横領していた。〉

 念のために確認しておくと、「横領」とは「他人または公共の物を不法に自分の物とすること」である。資料によれば、多摩湖寿会の年間予算は60万円前後だから、朝木は「山川は会計を努めていた4年間に約50万円を横領していた」と主張していることになる。

 続けて記事は次のように記載している。

〈さる8月17日(筆者注=平成28年)、事件発覚後事態を重くみた「多摩湖寿会」側が、横領金の一部約42万円を返還すること、および市内の団体の代表などは全て辞任するよう求めたところ、団体の一部の代表は辞任、横領金の一部約42万円を「多摩湖寿会」側に山川昌子元市議は返還したという。〉

 それが「横領金」かどうかは別にして、山川が「約42万円を返還した」ことは山川本人も認めている(ただその理由について、山川は「横領したからではない」と説明している)。しかし記事は、それでも多摩湖寿会側はまだ納得していないとして次のように記載している。

〈被害を受けた「多摩湖寿会」側は「許せない、横領金はあらゆる方法を使って全部返してもらう」と怒りを露にしている。〉

 その上で、多摩湖寿会は山川が謝罪し、すべての「横領金」を返さない場合には、告訴・提訴を検討するとしているということである。現在のところ、多摩湖寿会が山川を告訴したり、返金訴訟を起こしたという事実はまだない。しかし記事によれば、矢野と朝木は平成28年10月初め、〈山川昌子元市議が横領した金員のうち公金に当たる部分の返還を求めるよう〉東村山市長に対して監査請求を行ったという。

市が「再調査」に追い込まれたと主張

 2面では〈パワハラ横行の渡部市政〉〈創価学会信者が多すぎる市役所・社会福祉協議会事務局〉と題する矢野の署名記事で、彼らのいう「横領」事件に触れて次のように記載している。

〈また、山川・元公明市議による横領事件について、行政は、朝木議員による9月7日の市議会一般質問では「(横領されたのは)補助金の部分ではないので、任意団体内部の問題にはお答えできない」などと逃げ回ったが、同21日の市議会決算特別委員会では、不正が公金に及ぶ証拠を突きつけられ、観念したのか「再度、調査する」と答弁した。〉

 上記の矢野が記載した市側の答弁のうち、市側が「(横領されたのは)」などと答弁した事実はない。また、決算特別委員会で市側が「再度、調査する」とする趣旨の答弁をしたのは事実だが、その理由について市側は「ご指摘をいただいた細かな項目につきましては、市の方でも確認ができていない部分がありますので、再度調査させていただきます」と答弁したにすぎず、〈不正が公金に及ぶ証拠を突きつけられ〉たためではない。

上記の市側の答弁の背景に関する矢野の記載は、政治広報紙らしい恣意的解釈というべきだろう。矢野はなぜ、決算特別委員会で市側も「山川・元公明市議による横領事件」の存在を認めたかのように、また朝木から「不正が公金に及ぶ証拠を突きつけられた」かのように記載するのだろうか。

社会福祉協議会にも疑惑の矛先

さらに矢野は、上記のような「前代未聞の不祥事が放置されていた」として、その責任追及の矛先を、老人クラブの会計監査を担当している社会福祉協議会に向け、次のように主張している。

〈社会福祉協議会事務局の中には、山川・元公明市議の横領に見て見ぬふりをした職員がいるのではないかとの疑惑が出ている。横領事件を引き起こした山川・元公明市議は、当時社会福祉協議会の評議員。(本事件により辞任)〉

 どこからそんな「疑惑」が出ているのかは明らかではないが、矢野は多摩湖寿会の会計監査を行った社会福祉協議会が、社会福祉協議会の評議員を務めている山川の「横領」に目をつぶり、隠蔽したといっているのだろうか。いずれもしても、この記事も「山川が多摩湖寿会の金を横領した」との事実を前提としたものであることに違いはなかった。

 よく似た趣旨の記載は3面にもあった。3面では〈公明を擁護〉〈土方桂市議ら横領事件を擁護!〉と題する記事で、「老人クラブ(「多摩湖寿会」)を舞台に山川昌子・公明党元市議が前代未聞の横領事件を惹き起した」と前置きした上で、次のように記載している。

〈この老人クラブ「多摩湖寿会」の会計監査を担当しているのが、同じく公明党の大橋朝男元市議である。山川元市議が横領した四年間のうち、三年間はこの老人クラブの「会計監査」を担当し、不正でデタラメな決算報告書に認印を押し、適正だとしていた。責任を問われても仕方のない態度だ。〉

 どんな裏付けがあるのかわからないが、多摩湖寿会の監査を担当していた元公明党市議もまた「山川の横領」を隠蔽したという趣旨であると理解していいだろう。記事が事実とすれば、社会福祉協議会もこの元市議も「横領」の共犯ということになる。すると、矢野らが行ったという監査請求の対象は山川以外にも広げた方がいいということになるのではあるまいか。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第2回
事情聴取の日にビラを発行

「山川が詐欺事件に関与した」とする記事を提訴した裁判の控訴審は平成28年10月17日に結審した。1回で結審したその口頭弁論の状況をみるかぎり、山川にとって最悪でも一審判決が維持されるのではないかと予想された(実際には、山川の付帯控訴が認容され、矢野と朝木に対して一審よりも35万円の増額となる50万円の支払いが命じられた)。

 矢野と朝木はこの状況をどうみていたのだろうか。控訴状を提出した直後ならまだしも、その主張を山川から証拠をもって否定され、たった1回の口頭弁論で終結となった時点ではもう、逆転判決は難しいだろうというのが本音だったのではあるまいか。

 控訴審終了後に朝木が山川に対して「福祉の金を奪って大泥棒」などの暴言を浴びせた事実、また平成28年9月以降、多摩湖寿会における会計問題を追及している事実からみると、矢野と朝木は逆転判決に期待するというよりはむしろ、新たな材料によって山川に仕返しをする方向に切り替えていたとみるのが自然だったのかもしれない。実際に、山川が提訴して以後、矢野らがビラで「詐欺事件」に触れたことは1度もなかった。

結審の日から2週間後、矢野と朝木は自ら、新たな材料によって山川を攻撃する方針であることを明らかにした。矢野らは平成28年10月31日付で彼らの政治広報紙『東村山市民新聞』188号を発行したが、その紙面は大半が多摩湖寿会関連の記事で埋められており、「山川が多摩湖寿会の金を横領した」と断定していたのである。

結論の前にビラをまいた事情

 折しもこの平成28年10月31日は、平成28年9月議会で朝木が多摩湖寿会の会計問題について「再調査」を求めたことに基づき、東村山市が多摩湖寿会前会長と前会計の山川、それに現会長に対してヒアリングを行った日だった。9月議会で朝木に対して「再調査をする」と答弁した市は、12月議会で改めて答弁するために、約束どおり再調査をしようとしていたことがわかる。

 いうまでもなく、ヒアリングとは事情聴取のことであり、市が当事者に対してなんらかの結論を伝える場ではない。市は当事者、関係者から事情を聞いた上でなんらかの結論を出そうとしていた。つまり10月31日の時点で、市は朝木が求めた「再調査」を始めたばかりの段階であり、結論を出しているはずがなかった。ところが、「再調査」を求めたにもかかわらず、朝木も矢野も市の調査を無視し、自らの政治広報紙で「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と断定したということだった。

 朝木も矢野もなぜ市の結論を待てなかったのだろう。1つには、市が結論を明らかにするとみられるのは12月議会における朝木の一般質問の日であり、その日程は11月下旬以降になる可能性があった。山川を「詐欺に関与」と断定した裁判の控訴審判決は12月7日である。「山川が横領した」とする記事によって控訴審判決の印象を薄め世間の目をそらすには判決より前に市内にばらまく必要があるが、12月議会を待っていたのでは間に合わない。

 朝木が市の結論を待たなかったのには、もっと大きな理由があったのではないかと思う。詳細は後述するが、実は朝木がこの「問題」を議会で取り上げる数カ月前、市側は現会長に対して「何の問題もない」とする見解を示しており、そのことを朝木が知らなかったわけではない。9月議会で朝木が取り上げた際にも市側の見解に変化はなかった。だから、朝木は市の「再調査」の結果について彼らの主張に沿うものとなることを期待しておらず、最初から12月議会を待つつもりはなかったとみるのが妥当なのかもしれない。

顔写真付きで「横領」と断定

 いずれにしても、9月議会における朝木の質問に対する市側の結論が示されていない段階で発行された『東村山市民新聞』第188号1面トップ記事の見出しは次のようなものだった。



(『東村山市民新聞』第188号1面トップ記事の見出し)

〈元公明市議が横領! 老人クラブから〉

〈市議四期、市議会副議長、市監査委員を担当した人物が〉

〈創価・元市議が4年間にわたり〉

〈一部返金するも「これは横領ではなく積立金だ」と開き直り〉



〈元公明市議が横領! 老人クラブから〉の見出しの真下には山川の顔写真が配置され、そのすぐ右隣から始まる本文の冒頭には〈市内多摩湖町に住む山川昌子・元公明市議〉とあるから、読者は見出しの「元公明市議」が山川を指していることを容易に知ることができる。つまり記事は、誰が読んでも、朝木らが「横領」したと主張する人物が誰なのかがすぐにわかるように、見出しと写真、本文冒頭部分の位置関係がうまく計算されたものである。

 しかも記事で使用した写真は、前回の記事では東村山創価文化会館だったのに対し、今回はモロに山川の顔写真を(無断)で使用しているところに、朝木と矢野の山川に対する怨念が前回にも増して深くなっていることをうかがわせた。山川の写真の下には〈元市議が老人クラブ会計から横領〉とのキャプションが付けられている。

前回の記事では山川はまだ「関与」にとどまっており、直接的な犯罪者としてまでは描かれていなかった。もちろん「関与」であっても十分に山川の社会的評価を低下させるものなのだが、今回、山川は「関与」ではなく「横領」をした当事者と断定されている。

「詐欺に関与」と書いた記事では、提訴された矢野らはほとんど一方的に敗色濃厚な状況にあった。その山川に対する怨念の深さと前回との位置付けの違いが写真の使い方にも表れているように思えた。

 朝木による2回の議会での質問に続き、矢野と朝木は彼らの主張を思いのままに発信する政治宣伝ビラ『東村山市民新聞』で「山川が横領した」と断定するに至った。この経過をみるかぎり、矢野と朝木が新たな材料によって本格的に山川攻撃を再開させたとみるのが自然のようだった。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第1回
裁判所での暴言

 元東村山市議の山川昌子が現職東村山市議の矢野穂積と朝木直子(いずれも「草の根市民クラブ」)を提訴していた裁判の控訴審で、朝木らの控訴理由に対して山川が証拠を示して反論、朝木らは法廷でたいした再反論もできず、平成28年10月17日午前11時ごろ、東京高裁は結審を言い渡した。

 入口に近い被控訴人席に座っていた山川が先に退廷し、そのあと矢野と朝木、それに彼らの代理人弁護士が続いて出てきた。朝木らは足早にエレベーターの方へ向かい、山川を追い越して行ったが、そのとき朝木は山川に対しておかしなことをいったのである。朝木は嘲うようにこういった。

「山川さん、文化協会を辞めたんでしょう」

 山川がムッとした様子で「辞めてませんよ」と答えると、朝木は今度は周囲に聞こえるほどの声でこういったのである。

「福祉の金を奪って、大泥棒だな、大泥棒」

 そばにいた矢野も、「大泥棒」といいながら朝木の後をついていった。朝木の声は静かな裁判所の中で、思いのほか周囲に響いていたらしい。閉廷したばかりの法廷から女性書記官が何かあったのかと出てきて、左右を確認したほどだった。私も千葉も、朝木らが何のことをいっているのかさっぱりわからかった。そばにいた私たち以外の傍聴人も驚いたのではなかろうか。

 直前に結審となった裁判の方は、確かに朝木と矢野を不機嫌にさせてもなんら不思議のないような終わり方ではあった。しかしそれにしても、「福祉の金を奪って、大泥棒だな」とはめったに聞けない悪口雑言である。しかし、なにやら具体的な裏付けがあるような響きも感じさせた。「福祉の金を奪って、大泥棒だな」とは何のことなのだろうか。

 私と千葉は山川を誘ってそのまま地下の喫茶店に入り、山川から事情を聞くことにした。山川の説明によると、山川は平成28年5月まで老人クラブ、多摩湖寿会の会計を担当していた。まず、「福祉の金」とは何なのか。

「朝木は控訴審の陳述書に『山川は老人クラブ多摩湖寿会が集めた福祉募金を盗んだ』と書いていたので、『福祉の金』とは福祉募金のことだと思います」

「福祉募金」とは、東村山市老人クラブ連合会が市内の各老人クラブの会員を対象として毎年行う募金で、集計は各クラブ単位で行い、それを市老人クラブ連合会が取りまとめて福祉活動に役立てるという趣旨のものだという。朝木と矢野は、その募金を山川が「盗んだ」といっているのだろうか。山川は即座に次のように述べてその事実を否定した。

「福祉募金は多摩湖寿会の会長、副会長と、それから会計の私の3人で扱っているので、盗むことなど不可能ですし、そんなことあり得ませんよ」

 どんな根拠があってかはわからないものの、その「あり得ない」話を、朝木は「あった」といっているのだろうか。

裁判とは無関係の事実

 実はその2カ月ほど前から、朝木は市議会の一般質問等で上記の老人クラブ多摩湖寿会の会計に関して「山川が会の金を横領した」とする主張を繰り返しており、朝木の議会での追及に対し、東村山市は平成28年9月の時点で「再調査を行う」と答弁していた。その「再調査」の結果は市からはまだ報告されていない。

 ところが朝木は、「山川は詐欺事件に関与した」とする記事を提訴された裁判に、このまったく無関係の話を持ち出したのだった。朝木は平成28年9月25日に提出した陳述書の前半(全体の3分の1程度)で裁判に関係する言い訳を並べたあと、〈また、追記ですが〉と不自然な前置きをした上で次のように述べていた。

〈被控訴人山川はご自分の肩書を羅列しておりますが、そのうちの一つである「多摩湖寿会」……において……被控訴人山川が一人で務めていた「会計」業務において、経費の二重計上や会費等の未納入などにより、42万4500円の不正処理による不足金が現役員の調査により本年6月に発覚しました。現役員から指摘され、被控訴人山川は発覚した不足金42万4500円を返金し、訴状に記載されているNPO法人東村山市文化協会会長、東村山市日中友好協会会長……は辞任する旨の誓約書を、8月17日に多摩湖寿会現役員に対して書き、署名捺印しております。……〉

〈また、その後の調査で、……二重会計の経費や、実際には支出されていない出金伝票があり、さらに会員から集めた福祉募金が行方不明になっているなど、他にもかなりの不足金が発覚しています。〉

〈……被控訴人山川の行動は、元市議会議員という社会的信用を背負っている人物の行動とは程遠いと指摘させていただきます。〉

 ここに書かれているのは、「多摩湖寿会の会計を務めていた山川が不正な会計処理をしたこと」、「東村山市文化協会会長などの役職を辞任することになったこと」、「福祉募金が行方不明になっていること」、「山川はとうてい信用できるような人物ではないこと」などである。このうち多摩湖寿会関係の情報は現役員からのものであることがうかがえた。

 いずれも裁判とは無関係の事実である。つまり朝木は、山川の心証を悪化させる目的で多摩湖寿会の話を持ち出したものとみえた。しかも議会で市に再調査を要求し、まだその結果が出ていないにもかかわらず、一方的に山川が会計を務める老人クラブで不正を働いていたと決めつけ、それを法廷で公表するとは、やはり節度をわきまえた主張とはいえないのではあるまいか。

 朝木はそれだけでは飽き足らず、山川に対して「泥棒」などという暴言を直接浴びせたのだった。陳述書に書いただけでは飽き足りないらしかった。「山川は詐欺事件に関与した」とする誹謗中傷の代わりのように突然始めた多摩湖寿会にまつわる追及を朝木がいつまで、またどこまで続ける気なのか、注視する必要があるようだった。

 ところで、朝木のいった「泥棒」という言葉で思い出したのだが、朝木は自分が泥棒(万引きで書類送検された朝木明代)の娘であることを、そのときだけは忘れていたのかもしれない。あるいは、朝木は母親に対しても「泥棒」呼ばわりしたのだろうか。

朝木はかつて千葉に対して「万引きした人間の娘といわれて私は人生を狂わされた。(朝木明代を書類送検した)あんたのせいだ」と大声で責めたことがあった。東村山市議だった母親の万引きが露顕し、書類送検されたことは娘の朝木直子にとっても大きな痛手だったのである。その気持ちは理解できないではない。

しかし、だからといって事実に基づいて捜査した千葉をなじるのは筋違いである。そうではなく、母親の責任を他人に転嫁し、自らをまったく省みないところに、朝木の人生を狂わせた本当の原因があるのではあるまいか。

(つづく)
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元市議名誉毀損事件 第48回(最終回)
被害者との遭遇

 山川の附帯控訴における請求をほぼ全面的に認容した判決から2週間後、山川は朝木に対して東京高裁が命じた50万円の支払いを求めた。するとこれに対して、朝木は「仮執行には応じるが、裁判は終わっていない」と負け惜しみの回答をしたものの、ほどなく全額を振り込んできたという。その数日後、山川の元には裁判所から矢野と朝木が上告受理の申し立てをしたとの知らせが届いた。矢野らはまだ「山川が詐欺事件に関与した」との記事が誤りだったと認める考えはないということらしかった。

 しかし、年が明けた平成29年1月8日、矢野らの主張を真っ向から否定する出来事があったと山川はいう。この日、山川は東村山駅東口にあるイトーヨーカドーに買い物に出かけた。余談だが、平成7年、万引きを見つかって追及された朝木明代が逃げ込んだ店であり、「朝木に万引きされた」という通報で駆けつけた警察官が、なぜか娘の朝木直子を探したという店である。

 さて、山川がそのイトーヨーカドーの駐車場に車を置き、店内入口へと向かっているときだった。前を、なにか見覚えのある女性が、ややおぼつかない足取りで歩いている。まさについこの前まで裁判の影の主役だった被害者その人のようだった。「○○さんじゃない?」、山川の声に振り返ったのはやはり被害者だった。被害者は驚いた様子だったが、すぐに山川に対してこう謝罪したという。

「私が相談に行ったことで迷惑かけちゃって……」

 朝木に相談に行った被害者が、その結果、朝木といっしょになって山川を非難するかたちになったことは、被害者もよく理解している。被害者が山川に述べたこの一言は、気まずい思いがありながら、それでも、朝木に相談に行ったことで、結果として山川を責める側に立ってしまったのは本意ではなかったという思いを伝えたかったもののように思えた。本件記事が『東村山市民新聞』に掲載された直後、山川をよく知る被害者の知人が被害者に電話したところ、「山川さんには何の恨みもない」と話していたという証言もあった。

 少なくとも、「山川に騙された」と思っているのなら、こんな言葉が出るはずがなかった。矢野と朝木がいかに「山川は詐欺に関与した」と主張しようと、当の被害者が山川を責めるどころか謝罪しているのだった。矢野らの上告がまったく被害者の意思とは無関係の虚妄であることを物語っていた。

入院していた被害者

 ところで朝木は、一審で被害者の陳述書を提出しなかった理由について、控訴審で提出した陳述書で次のように供述していた。

〈本件「東村山市民新聞」に記事を掲載するための取材をしている段階で、○○(筆者注=被害者の実名)さんの方から、「私自身も泣き寝入りしたくないので事実を公表していただくことは必要だと思うが、山川さんの関係者による嫌がらせが怖い。」という趣旨のことを仰っていたことや、私どもが責任を負う記事の報道によって起こった訴訟に、取材元の市民、しかも高齢で独居している被害者の○○(同)さんを巻き込むことはしたくないと思っておりました……〉

 被害者が朝木に対して「泣き寝入りしたくない」と訴えたとしても、それ自体は不思議ではない。しかし山川に遭遇して「迷惑をかけた」と謝った被害者が、「泣き寝入りしたくない」相手として山川を想定していたとはとうてい考えられない。まして、「山川さんの関係者による嫌がらせが怖い」と訴えるなどあり得ないとみるべきではあるまいか。とすれば、上記の記載は朝木の不実ぶりがいかんなく発揮された作文と考えるのが自然だろう。

 その日、山川が本人から聞いたところによると、被害者は平成28年2月に体調を崩し、同年10月まで入院していたという。前々から体調がすぐれず、病院に行ったところ、入院の必要があると診断されたとのことだった。平成28年2月前後といえば、朝木がようやくまともな主張を始めた時期だった。被害者は体調の悪い中、朝木から資料の提供などを求められたのではないかと推測する。しかし一審で最後まで陳述書を提出しなかったのは、被害者が入院中だったからだと考えれば納得がいく。

 矢野と朝木は控訴審でついに被害者の陳述書を提出したが、その日付は平成28年9月7日である。被害者は「10月まで入院していた」というのだから、この陳述書を入院中の病院で書いたことになるが、現実にそんなことは不可能とみるべきだろう。陳述書には被害者の直筆の署名がなされている。朝木が作成して、署名だけをしてもらったということではあるまいか。

暴かれた印鑑証明書の謎

 そのこと自体は珍しいことではないし、なんら責められるようなことでもない。また、普通の裁判であれば、重要な証人が入院していたとしても、あえてそれを隠し通す必要もあるまい。しかし、一審で山川が被害者本人の陳述書を提出すべきと主張しても、矢野と朝木が被害者が入院中であることを明らかにしなかったということは、彼らは被害者が入院中であることは隠すべきと判断していたとみるべきだろう。

 断定はできないものの、その理由は、被害者の陳述書や朝木の陳述書の中に、被害者の思いとは異なる内容が含まれていたからなのではあるまいか。朝木の陳述書にある「私自身も泣き寝入りしたくないので事実を公表していただくことは必要だと思うが、山川さんの関係者による嫌がらせが怖い」という被害者の言葉と、山川と遭遇した被害者が山川に謝った言葉との落差からみると、被害者の言葉として供述された内容の中には朝木の作文が入っていると考えても不合理とはいえまい。

 入院中であることが明らかになれば、その陳述書を書いたのは朝木なのではないかと疑われる――そう朝木は考えたのだろう。控訴審の口頭弁論で山川は被害者に対する尋問を申し立てた。これに対して裁判官は却下の決定を下したが、朝木はさぞかし安堵したのではあるまいか。

 陳述書の提出に際して、本来は必要のない印鑑証明書まで添付したのも、陳述書は被害者本人が書いたものであることを強調するためだった。なぜそんな当たり前のことを強調する必要があったのかといえば、そこに嘘が書かれているからであると理解できよう。

 そのことを教えてくれたのは、たまたま出会った被害者の一言だった。山川には、不実との長い闘いのしめくくりとして、あまりにもでき過ぎた偶然のように思われた。しかしその偶然によって、被害者もまた救われたのではあるまいか。

(了)
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