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多摩湖寿会事件 第62回
「大野発言」の信憑性

 誓約書に記載された文言および清水が示談書の作成を朝木に依頼するまでの経過と、清水、大野の供述の間における、これまでみてきた齟齬をどう理解すればいいのだろうか。

 清水は「誓約書には『(山川が)横領を認めて謝罪する』旨の記載がなかったから示談書を改めて作成する必要があった」(趣旨)と供述している。しかし、仮に大野発言((山川さんがやった)行為自体は1円でも横領、詐欺だよ。収めるには不祥事として、(山川さんが事実を)認めて頭をきちんと下げれば(清水澄江会長ら)現執行部も話し合いに乗れるんだから)が事実だったとして、それならばなぜ誓約書に「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言がいっさい記載されなかったのだろうか。

 誓約書を作成する際、山川が団体の役職を辞任することに関しては、ある団体の会長職については行事の関係から辞任の時期を考慮するなどのやりとりがなされた。ところがその一方で、清水らが供述する大野発言にもかかわらず、誓約書において「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言を記載するか否かについて議論があったなどという供述は誰からもなされていない。

 また、問題を解決するにあたって山川が「横領を認めて謝罪する」との文言を文書に記載する必要があると寿会役員らが認識していたとすれば、誓約書を交わしても最終的な解決には至っていないということになるから、その後の話し合い等についてなんらかの打ち合わせがあったとしてもおかしくない。ところが大野は誓約書を交わしたあと、「その日の集まりは終わりとし、みな、帰ることにしました」と供述するのみである。その後については、なんら打ち合わせなどなされなかったということと理解できる。

 この不可解きわまる事実と供述の間の齟齬が示すのは、清水が示談書に記載していた「(山川は)横領を認めて謝罪する」との趣旨は、誓約書には最初から含まれていなかったということではないか――。だから誓約書の時点では、「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言を記載するかどうかなど、議論もされなかったとみるのが最も自然なように思われた。

 誓約書に「(山川は)横領を認めて謝罪する」との趣旨が含まれていないとすれば、それはすなわち、「山川は横領を認めたがゆえに誓約書の作成に応じたということではない」ということにほかならない。当然、大野や清水らが供述する「大野発言」そのものの信憑性も大きく揺らいでくる。逆にいえば、大野からそのような発言はなかったとする山川や小山の供述の信憑性が高くなってくるということである。

「話し合い」に関する供述

 清水は「山川氏は、大野さんからの横領、詐欺という指摘を受け入れて、誓約書を自ら作成した」と供述する。ところが清水は、誓約書を交わしてからわずか4日後の平成28年8月21日になって、「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言が明記された示談書の作成を朝木に依頼した。誓約書には「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言が入っていないとの理由によるものである。

「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言を文書に明記するかどうかは天と地との違いがある。上記の文言を入れるということは山川が横領を認めるということであり、「横領はしていない」と主張している山川が、そのような示談書の作成に同意するはずがない。

 しかも、誓約書に「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」と記載しているにもかかわらず、「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言を入れた示談書を作成することは誓約書の趣旨に反する。そのような示談書を作成することについて、清水は別にしても、多摩湖寿会の他の役員は、誰も疑問に思わなかったのだろうか。

 では、誓約書の時点ではおそらく議論もされなかった文言を明記した示談書を作成するにあたり、多摩湖寿会の中ではどんな話し合いがなされたのだろうか。清水が提出した役員たちの供述をみよう。



(「話し合い」に関する供述)

「……8月17日の話し合いの場は……誓約書を作って終わりましたが、まだ、正式な示談書というものは取り交わされていませんでした。そこで、新年度の役員の間で話し合ったところ、正式な示談書を取り交わす必要があるのではないか、との意見が多くでました。」(清水

「山川さんを刑事告訴することについては、寿会の役員からも『もう一度、山川さんに示談をもちかけてみて、横領を認め謝罪すれば刑事告訴はしない方向で納めるべきだ』という慎重な意見が出ているとのことであり、澄江さんから私に、示談書を作成してくれないかとのご依頼がありました。」(朝木

「8月17日の後、数日してから、私は清水澄江さんから連絡を受け、山川さんの不正な会計処理について、きちんと示談書をつくって終わりにしたい、ついては、そこに立会人として私に立ち会ってもらえないか、できれば私の家にて示談書の調印を行えないか、と新年度の役員らが考えている旨伝えられました。」(大野清吉・新理事

「8月17日の会合後、私は清水さんから連絡を受け、8月25日夜に大野清吉さんの家に集まることとなりました。山川さんの会計在任時の会計処理について、新役員らとしては、正式な示談書を作って終わりにしようということになったとのことで、そのために、大野さん宅に山川さんとともに私も呼ばれることになったのです。」(前会長加藤幸雄

※筆者注=新理事の小川康子も陳述書を提出しているが、この「話し合い」に関してはいっさい触れていない。)



 清水によれば、誓約書ではまだ「正式な示談書は取り交わされていない」という。今回の問題は「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言を入れた示談書の作成によってやっと決着すると清水は考えていたことになる。すると、寿会内の話し合いも、誓約書は途中経過にすぎず、最も重要なのは示談書の作成を決定する話し合いなのではあるまいか。

参加していなかった立会人

 最も重要な話し合いの場である以上、その場所には当然、多摩湖寿会の役員だけでなく誓約書を交わした当事者が呼ばれてしかるべきである。ところが、「話し合いがあった」と一応具体的に供述しているのは清水のみで、寿会理事(役員)で誓約書の立会人である大野清吉と誓約書の当事者である寿会前会長の加藤幸雄は、ただ清水から「示談書を作ることになったから来てほしい」と連絡されただけだった。新理事の小川に至っては、最も重要な話し合いの場であるはずにもかかわらず、陳述書では一言も触れていない。

 誓約書を作成した経緯について、清水は「山川氏は、大野さんからの横領、詐欺という指摘を受け入れて、誓約書を自ら作成した」と供述している。ところが、「(山川は)横領を認めて謝罪する」との文言を入れた示談書についての話し合いの場には、その大野さえも参加していなかったのである。

 しかも大野への連絡によれば、清水は大野の家で「示談書の調印」をしたいという。調印とは、これから示談書の内容を詰めるのではなく、示談書はもう出来上がっているということだった。これもまた常識的に理解しにくいことではなかっただろうか。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第61回
非常識な要求

 平成28年8月17日、山川ら旧役員と清水ら新役員との間で誓約書が交わされた際、「あなたのやったことは行為としては横領、詐欺だよ」とする大野発言は本当にあったのだろうか。大野が提出した陳述書によれば、山川に対する発言は以下のとおりだった。



(大野が供述する「大野発言」の詳細)

(山川さん)本人が認めれば同じ町内のことなんだから何とか収めたいよ。いやかもしれないけれども、(山川さんがやった)行為自体は1円でも横領、詐欺だよ。収めるには不祥事として、(山川さんが事実を)認めて頭をきちんと下げれば(清水澄江会長ら)現執行部も話し合いに乗れるんだから。(筆者注=カッコ内も大野)



 その上で、

「清水さんら新年度の役員からは、公の職に就いている人間が横領だなんて考えられない、公の職からは身をひいてもらわないといけないという発言がありました。そこで、私は、山川さんに対して、『(公的な)役職から降りることを紙にしてくれ』と伝え(た)」

 と大野は供述している。これに対して山川は、いくつかの団体の役職を退任するという内容を記載して署名捺印したので、「清水や大野もこれを確認したということで署名捺印した」(趣旨)という。

 山川が務めていたのは任意の民間団体における役職であり、大野の上記供述にある「公の職」とは公的機関の職を意味する「公職」ではない。そもそも山川は横領を認めているわけではなく、横領したと確定もしていない時点で、それを理由に「横領したから公の職からは身を引くべき」と主張するのは、常識的にもまったくの筋違いである。

 団体の役職から退くべきかどうかは団体内の問題であって、団体とは何の関係もない多摩湖寿会の会長が口を出すなど、出しゃばるにもほどがあろう。つまり、「横領した」という理由で何の関係もない団体の役職を辞めろというのは、論理的整合性を欠くだけでなく、他人の家に土足で上がり込むような傍若無人の振る舞いというほかない。

 多摩湖寿会で起きた、この通常ではあり得ない、山川に対してなされた他団体の役職の辞任要求について清水は次のように供述している。

「私たちとしては、山川氏が詐欺や横領に当たる行為をしていながら、公的な団体で要職にあることは許されないものと考えましたので、それら役職をその日のうちに退くことを約束するよう求めました」

 驚いたことに、清水には、この辞任要求が常識を大きく踏み外したものではなく、他団体に対して失礼なことであるという認識さえなかった。

食い違う経緯説明

 しかし現実には、山川は役職を退くことを受け入れた。当時その場にいた前副会長の小山と山川によれば、その経緯は次のとおりだった。

――清水は「問題はない」とした東村山市の結論を受け入れようとせず、「私は納得できない」と息巻いた。このため、このままではいつまでたっても会が終わらないと考えた大野清吉が、清水に対して「どうすれば納得するのか」と尋ねた。すると清水は「山川さんが団体の役職を辞任すれば納得する」と答えた。

 清水の要求を受け入れたのは、もちろん横領を認めたからではない。しかし、清水を納得させ、この会を終わらせるには、ここで団体の役職を辞任することを約束するしかないと判断したと、山川は供述している。

 誓約書に団体の役職を辞任する旨を記載するに至った経緯について、山川および小山と大野らの供述は食い違っている。ただ、一部の役職については重要な行事が残されており、すぐには辞められないので、今しばらく続けたい旨を述べると、これについて清水らは反対しなかった――という点だけは一致していた。双方が誓約書に署名したことをもって「その日の集まりは終わり」となったと大野は供述している。

「大野発言」と誓約書の開き

 山川が誓約書に団体の役職を退く旨を記載したことについて、清水は「山川氏は、大野さんからの横領、詐欺という指摘を受け入れて、誓約書を自ら作成した」と供述し、大野もそれを匂わせる供述をしている。これらの供述によると、「横領」と山川が団体の役職を辞任することは無関係ではないから、誓約書には山川が「横領」を認める旨の意思が反映されていると主張しているように聞こえる。

 しかし現実に、誓約書には「横領」についてはその事実も謝罪の意思も、一言半句も記載されていないのである。この事実をどう理解すべきなのだろうか。

 しかも清水は、「(山川が)団体の役職を退くという誓約書を作って終わりましたが、まだ、正式な示談書というものは取り交わされていませんでした」と供述している。清水のいう「正式な示談書」には、「横領を認めて謝罪する」との文言が記載されていた。誓約書は「横領を認めて謝罪する」との文言が入っていない点において不完全なものと清水は主張しているのである。

 つまり、清水の示談書に関する供述は、誓約書には「横領を認めて謝罪する」との意味は含まれていないと主張するものほかならない。するとこの供述は、「山川氏は、大野さんからの横領、詐欺という指摘を受け入れて、誓約書を自ら作成した」とする誓約書に関する供述とは矛盾しているということになる。

 誓約書に関する清水の主張が事実とすれば、あえてあらためて示談書を作成する必要はなかったということなのではあるまいか。どうしても「(山川は)横領を認めて謝罪する」旨の文言が必要だというのなら、なぜ誓約書の時点でその旨の一文を入れさせなかったのだろうか。清水や大野の陳述書には、山川に対して「(山川は)横領を認めて謝罪する」旨の文言を入れるよう説得したとする供述はいっさいないのである。不可解に思えてならない。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第60回
示談書を作成する理由

 清水と朝木の供述によれば、清水ら新役員と山川および加藤前会長との間で「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」と明記した誓約書を交わしたあと、さらに示談書を作成しておくべきか否か、新役員の間で話し合いが行われたという。その「話し合い」の経緯や状況についてそれぞれ次のように供述している(なお、他の誓約書の当事者である前会長の加藤、立会人の大野、新役員の小川は、その「話し合い」について陳述書ではいっさい触れていない)。

「(示談書を交わす必要性があるかどうかについて)新年度の役員の間で話し合った」(清水)

「寿会の役員からも『もう一度、山川さんに示談をもちかけてみて、横領を認め謝罪すれば刑事告訴はしない方向で納めるべきだ』という慎重な意見が出ているとのことであり」(朝木)

 示談書に具体的にどんな文言が記載されていたかについて清水も朝木も明らかにしない。その理由は定かでないが、それがいかなる内容だったにせよ、示談書が山川の会計処理に関わるものであるかぎり、「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とした誓約書に反するものであることを免れるのは困難ではあるまいか。にもかかわらず、清水の供述が事実とすれば、新役員の間ではどんな理由で示談をもちかけるようにとの話が進んだのだろうか。

 清水と朝木はその理由についても明確には示さないが、前会長の加藤は、示談書を見た際、「山川さんが横領を認めて謝罪する」との文言があったと供述している。朝木の上記供述も加藤の供述に矛盾しない。示談書は「山川が横領を認めて謝罪する」旨の文言が明記されていたのだろう。誓約書と示談書の間には、「横領を認めて謝罪する」旨の文言が明記されているか否かという点において決定的な違いがある。

 示談書に「山川が横領を認めて謝罪する」旨の文言が明記されていたとすれば、誓約書作成の際に大野が山川に対して「あなたのやったことは行為としては横領、詐欺だよ」と発言したという清水の供述(大野自身のほか、新理事の小川康子、前会長の加藤も同様の供述をしている)も不自然なものとはいえなくなろう。むしろ、上記大野の発言はあらためて示談書を作成する重要な理由だった可能性も考えられよう。

現実的な違い

 山川は会計処理が不適切だったことは認めている。簿外に保管していた金も返還し、誓約書にも署名捺印した。しかし、「横領した」とする清水や朝木の主張については当初から一貫して否定している。

 朝木によれば、誓約書を交わしたあと、「寿会の役員からも『もう一度、山川さんに示談をもちかけてみて、横領を認め謝罪すれば刑事告訴はしない方向で納めるべきだ』という慎重な意見が出ている」という。「横領を認め謝罪すれば刑事告訴はしない」とは、裏返すと、「横領を認め謝罪しなければ刑事告訴を含めて、責任を追及する」ということにほかならない。

 誓約書と示談書の違いは、山川の行為を「横領として追及するかしないか」の違いでもある。現実に山川は「横領」を否定している。その結果、清水は寿会で出たとする「意見」を忠実に実行していることになる。しかし、山川が「横領などしていない」と主張し、当然、謝罪などしていないからといって、清水がそのことを理由に「山川は横領した」と追及することは誓約書に違反するのではあるまいか。
 
 朝木と清水によれば、「山川が横領を認めて謝罪する」旨が記載された示談書の必要性については、まず多摩湖寿会の役員の間で共通の理解があり、それに基づいて清水から朝木に作成の依頼がなされたという。朝木の陳述書によれば、清水は朝木と会った際、示談書の作成が多摩湖寿会としての決定事項として伝えている。すると、事実かどうかは別にして、清水と朝木の供述によれば、2人が多摩湖ふれあいセンターで会った時点ですでに新理事の間で十分な話し合いがなされていたということと考えられた。

補完し合う2つの「事実」

 誓約書には「横領」に関する文言がいっさい存在せず、示談書には「山川が横領を認めて謝罪する」旨の記載があった。したがって、誓約書の時点で、寿会内に「横領を認めて謝罪すべき」という意見があったとすれば、その後に寿会内で示談書の作成を検討したとしても、一応、その理由がなかったともいえなくなる。

 つまり、誓約書を交わす際に大野が山川に対して「あなたのやったことは行為としては横領、詐欺だよ」との発言をしたということ、および誓約書の作成からわずか3、4日の間に役員がどこかに集まって示談書の作成に関する話し合いを行ったこと--清水が供述するこの2つの事実は、(それが事実ではなかったとしても)互いに補完し合う関係にある。

 大野が上記の発言をし、誓約書を交わしたあとに寿会で示談書に関する話し合いが行われたという事実は、それが事実とすれば、清水澄江以外の新役員もまた、清水と同様に「山川は寿会の金を横領した」と認識していたことを裏付けることになろう。寿会役員の誰もが「山川は寿会の金を横領した」と思っていたということになれば、誓約書を交わした後も清水が「山川は寿会の金を横領した」と主張していることも、他の新理事の意思を代弁したものと判断される可能性があり、「公益性」が認定されるとすればその理由にもなり得るかもしれない。

 朝木によれば、朝木と清水が会ったのは同年8月21日という。大野は、同年8月17日は、誓約書を交わしたあと解散した旨供述しているから、この「話し合い」が行われたのが事実とすれば、平成28年8月18日から同20日の間ということになろうか。ただ、この「話し合い」が、いつ、どこで、役員の誰が集まって行われたのかは具体的に明示されていない。清水にしても朝木にしても、なぜこの重要な点を素通りするのか理解に苦しむところである。

 誓約書を交わした後に行われたという示談に関する「話し合い」に関しては、山川も前副会長の小山時子もその事実関係を知る立場にはない。しかし清水らが供述する、誓約書を交わす際の大野発言(「あなたのやったことは行為としては横領、詐欺だよ」とする発言。以下同)についてはその存在を真っ向から否定している。大野発言は本当に存在し、「話し合い」も本当になされたのだろうか。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第59回
誓約書の意義

 清水は平成28年11月10日までに自らの陳述書のほか大野清吉(新理事)ら他の多摩湖寿会役員の陳述書を提出し、平成28年8月17日に誓約書を交わした際、大野が山川に対して「(山川さんがやった)行為自体は1円でも横領、詐欺だよ。収めるには不祥事として、(山川さんが事実を)認めて頭をきちんと下げれば……」と発言したなど、清水以外の新役員も山川の会計処理をたんに不適切というに止まらず「横領」と認識していた旨供述している。誓約書を交わす際に、大野までが山川に対して「これは横領」などと発言したという話が出るのは初めてのことだった。

 事実とすれば、「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と認識し、責任を追及すべきと考えていたのは清水だけではないということになる。これは重要な事実と思われるが、清水は裁判開始から現在にいたるまで、なぜその事実を明らかにしなかったのだろう。逆に、なぜ今になってそのことを言い始めたのか、こう問う方が的確なのかもしれない。

 平成28年8月17日、大野(新理事)を立会人として清水(甲側として他に副会長)と山川(乙側として他に加藤前会長)の間で、山川が複数の団体の役職を辞任すること、および「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」と明記した誓約書を交わした。簿外に保管していた金を返還した上で、「これをもって一切申し立てをしない」と明記した誓約書に関係者一同が署名捺印しているのだから、これによって多摩湖寿会で起きた会計問題は「一切」すなわちすべて決着がついたというのが常識的な解釈である。

 清水は誓約書の位置付けについて、平成29年7月11日付第2準備書面で「原告(筆者注=山川)が今後行うべきことについて誓約した書面に過ぎず、原告のいう示談とか和解を根拠づけるものではない」と主張している。「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」とする誓約書は法律上の和解ではなく、記載された文言は、山川が複数の団体の役職を辞任するとした事項とともに、山川のみが遵守すべきものだとする主張である。

 清水は「誓約書を交わしたあとも『山川は寿会の金を横領した』と主張すること自体が誓約書の内容に違反している」という山川の主張を覆すには、こう主張するしかないのだろう。法律上の和解は、不法行為を主張する側と主張された側の双方が納得した上で一定の取り決めを行い、紛争を解決させるものである。誓約書には山川の署名だけでなく、相手方として清水らの署名もあるから、記載内容については双方が了解しているということになる。

 その上で、清水が「山川のみが守るべき事項」と主張する「今後、金銭的な内容についてこれをもって一切申し立てをしない」との文言を改めて確認すると、この文言には主語がないから、山川が遵守すべきものとして書かれたものであると特定することはできないように思える。山川が簿外で保管していた金はすでに寿会に返還している以上、この文言については、誓約書に署名した甲乙双方が遵守すべき事項と理解すべきなのではあるまいか。

示談書を必要とする根拠

 しかし現実には、誓約書を交わした後も、清水だけは「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と主張し続けた。最初の行動は、誓約書だけでは不十分として示談書を作成し、山川に署名捺印を求めようとしたことである。

 朝木の陳述書によれば、朝木は清水澄江が山川らとの間で誓約書を交わした4日後の平成28年8月21日、多摩湖ふれあいセンターの料理室で清水と会い、一連の経過について資料に基づき「事細かに」説明を受けた。その結果、朝木は山川の会計処理をたんに不適切というものではなく「横領と考えて間違いない」と思った。その上で朝木は、「(「簿外の保管金は返還されており、問題ない」とした行政側の判断には)大きな問題があると考えたこと等から、この問題を議会で追及する必要があると判断した」としている。

 朝木の陳述書によれば、その際、清水からこんな話が出たという。朝木は次のように供述している。

「寿会の役員からも『もう一度、山川さんに示談をもちかけてみて、横領を認め謝罪すれば刑事告訴はしない方向で納めるべきだ』という慎重な意見が出ているとのことであり、澄江さんから私に、示談書を作成してくれないかとのご依頼がありました。」

 朝木によれば、示談書の作成を持ちかけたのは清水であるという。それが事実かどうかはともかく、朝木も示談書を作成してほしいという清水の依頼を受諾した。

 また、寿会で示談書が必要とする方向でまとまったとする経緯について、清水は陳述書で次のように供述している。

「8月17日の話し合いの場は山川氏が詐欺や横領との指摘について反論、弁明することはなく、団体の役職を退くという誓約書を作って終わりましたが、まだ、正式な示談書というものは取り交わされていませんでした。そこで、新年度の役員の間で話し合ったところ、正式な示談書を取り交わす必要があるのではないか、との意見が多くでました」

 示談書を作成することになったとする「経緯」に関して、清水と朝木の説明に齟齬はない。誓約書を作成する際、大野が山川に対して「あなたのやったことは行為としては横領、詐欺だよ」といっていたと清水が供述していたことも、清水の供述する示談書への流れが不自然なものではないと思わせた。なお、清水は「正式な示談書」という文言を繰り返し、誓約書が「正式」なものでないかのように主張するが、立会人を立て、新旧役員の署名捺印がなされたものであり、誓約書が正式な合意書であることに違いはないのではあるまいか。

 ただ、清水が供述する大野の上記発言に関しては、現場にいた山川も前副会長の小山も、発言そのものを否定している。仮に山川と小山の供述が事実とすれば、清水が供述する誓約書作成の際の大野の発言は、「示談書が必要であるとする意見が多く出た」とする状況を不自然なものにしないための伏線として捏造されたものである可能性も疑われることになるが、事実はどうなのだろうか。それについてはその他の事実関係から推定していくしかないようだった。

尋問は延期に

 なお、裁判所の構成が3人の裁判官による合議制に変わったことで、平成30年1月23日(明日)に予定されていた尋問は大幅に延期となった。合議制になるということで、裁判所としては尋問の前に1度、通常の口頭弁論を開きたいとして日程調整を行った。

 平成29年末の時点で、裁判所は双方に対して平成30年1月18日から同年2月中旬までの間で都合を聞いた。山川はすぐに出頭可能な日時を提出していたが、被告側に差し支えがあるらしく、最初の期日である同年1月18日が迫っても期日の決定の通知は来なかった。

 山川がどうしたのかと思っていると、平成30年1月17日になって裁判所から今度は、「平成30年2月13日から3月23日の間」でという通知が届いた。山川は「可能なかぎり裁判所の都合に合わせる」と回答していたところ、同年1月19日、ようやく「次回口頭弁論を平成30年3月13日午後4時」から行うとの連絡を受けたとのことである。

 前回の口頭弁論の際に、特に時間を要する書面の提出を命じられたわけでもない。被告側にどんな差し支えがあったのかはわからないが、書面や証拠類の提出をなんら求められていない状況で、通常の弁論と弁論の間にこれほど長期の間隔が空くというのは異例なのではあるまいか。いずれにしても、平成30年3月13日に1度通常の口頭弁論を開き、証人尋問の期日は改めて決めることになるようである。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第58回
「訂正の意思はない」と回答

 山川が提出した平成29年11月22日付陳述書をめぐっては、福祉募金に関する説明部分を朝木直子が記載内容を改ざんした上で東村山市議会の一般質問で取り上げるという普通では思いもつかない愚挙に出た。この質問について山川は、議会を利用して原告を陥れようとする悪質な発言であるとする趣旨の準備書面(平成28年12月7日付)を提出した。

 山川は裁判所に準備書面を提出するとともに、東村山市議会議長に対しても、朝木の発言には引用の誤りがあるなどとして訂正を求めた。これを受けて、議長は朝木に対して訂正の意思があるかどうかを確認したが、「訂正の意思はない」と回答したとのことである。

 朝木の質問とそれに対する所管の答弁によれば、そのやり取りの趣旨は、

「山川は会計帳簿に福祉募金の『出金』だけを記載していたことについて虚偽の説明をし、市の担当者に責任転嫁をしている。これは福祉募金を着服したということ」

 ということになる。朝木がこの件を一般質問で取り上げた目的が、市の担当者の指導内容に関する確認あるいは問題提起にあったというのなら、一方当事者である山川が「引用に誤りがある」などと異議を申し立てたことに対し、少なくとも山川に真意を聞くなり、自分の発言を振り返るなりの確認行為があってもおかしくないのではあるまいか。しかし、朝木は山川に真意を確認することもないまま、訂正を拒否したのだった。

 質問通告をしないまま一般質問で取り上げた朝木の意図が問題提起にあったのかどうか。議長からの訂正確認に対する対応を見るかぎり、朝木の目的はもっと別のところにあったのではないか――そう思われてならない。

会合での発言者

 山川は陳述書で清水らが主張する「横領の根拠」に関して、福祉募金以外にもおくたま路における入浴料の件などについて個別に反論している。それらについてはこれまでの主張と変わりがない。

 さて、山川は簿外で保管していた金を返還し、その後、清水らとの間で「今後は金銭的な申し立てを一切しない」とする誓約書を交わした。ところがその後、朝木が東村山市議会で「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と主張するなど、朝木と清水は歩調を合わせて山川の責任を追及している。誓約書の記載に反するようにみえる朝木と清水の行為に合理的な理由があるのだろうか。朝木と清水は陳述書でその理由についても述べていた。

 裁判所を納得させる理由(あるいは事情)を示せなければ、清水の行為は山川との間で交わした誓約に違反するものであり、朝木の行為も、誓約書の存在を知りながら、あえて山川の過失を蒸し返し、ことさらにそれが意図的なものだったとして騒ぎ立て、山川の社会的評価を貶めることを目的としたものと判断される可能性があると考えたのかもしれない。

 清水は自らの陳述書に加えて、平成28年11月10日までに大野清吉(多摩湖寿会現役員)、小川康子(同)、加藤幸雄(多摩湖寿会前会長)の陳述書を提出している。大野らが各陳述書で述べる、当事者(山川と清水)を含む関係者の言動等も、朝木や清水が主張する「事情」の要素である。

 平成28年5月に多摩湖寿会会長に就任した清水澄江は、山川が行った会計処理に不正があるとして、社協に判断を求めた。これを受けて、平成28年8月17日、社協と東村山市役所は弁護士に意見を聴き、清水ら新役員と山川や加藤前会長など旧役員を社協の事務所に集めて説明を行った。その内容は、①山川が簿外に保管していた金は返還されており、金銭面の問題は解決している。②市からの補助金は正しく使われており、帳簿が整っているので問題はない--というものだった。

 社協の担当者らは説明を終えると会議室から退出し、その後、誓約書が交わされたのだが、それまでに新役員側から山川に対
する発言等があったとして清水らは陳述書で次のように述べていた。



(清水陳述書)

「私たち新年度の役員は、山川氏に対し、サークルの活動費用など、不正な会計処理の問題について、きちんと説明するよう求めました。」

「大野さん(筆者注=新理事)が、山川氏に対して、『あなたのやったことは行為としては横領、詐欺だよ。』と言いました。」

「大野さんから、山川氏に対し、きちんと頭を下げなさい、一筆(誓約書を)書きなさい、という言葉がかけられ、山川氏もこれにうなずき、……」

(大野陳述書)
 

「……山川さんに対し、『(山川さん)本人が認めれば同じ町内のことなんだから何とか収めたいよ。いやかもしれないけれども、(山川さんがやった)行為自体は1円でも横領、詐欺だよ。収めるには不祥事として、(山川さんが事実を)認めて頭をきちんと下げれば(清水澄江会長ら)現執行部も話し合いに乗れるんだから。』と伝えました。」

「現実には支払われていないのに支払われたと処理された額のお金については、そのような処理が可能だった人物の懐に入ったと考えるのがごく当然のとこでしたから、『詐欺、横領』という言葉を使いました。このことははっきりと記憶しています。」

「私の『詐欺、横領』との指摘に対し、山川さんからは何も反論はありませんでしたので、私は、山川さんが私の発言を受け入れてくれたのだと考えました。」

「清水さんら新年度の役員からは、公の職に就いている人間が横領だなんて考えられない、公の職からは身をひいてもらわないといけないという発言がありました。」

(小川陳述書)

「大野さんが、山川さんに対し、やったことは横領、詐欺だよ、などと諭したところ、……」

「新年度の役員から、公的な役は降りないとだめだ、との声があった」



 清水以外の新役員も山川の不適切な会計処理について「詐欺、横領」と認識していること、清水以外の新役員も山川が就いていた団体の役職から降りるべきだとの認識だったという点において、この3者の証言は一致していた。山川が行った不適切な会計処理が「詐欺、横領」であり、誓約書に記載した多くの団体の役職を降りるべきと考えていたのが「清水だけではなかった」という点が重要なのだろう。

 現実問題として、清水以外の新役員で「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と外部に向かって主張した者はいない。その事実からは、山川に対して「多摩湖寿会の金を横領した」と主張し、団体の役職から降りるよう主張したのは清水だけであることが推測できる。しかしそれでは、清水1人が山川に団体役員の退任を迫り、さらには誓約書を交わしたあとも山川を追及していたことになりかねない。

 山川が行った不適切な会計処理を見て、清水だけでなく新役員の誰もが「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と判断し、責任を追及していた--清水はそう主張したかったのだろう。個人的な感情でことさらに山川を責めたのではないと。

清水の主張に反する証言

 しかし上記の清水らの供述に対して、会合に同席していた前副会長の小山は平成28年11月22日付陳述書で次のように証言している。



(小山陳述書)

「(市の担当者が弁護士の見解を紹介したあと)清水会長は『私は納得できません。悪いことをしたのに、いけしゃあしゃあと。1円でも人の金をごまかせば不正なんだ、不正をしたと東村山中触れ回って堂々と歩けないようにしてやる。』と喚きました。」

「清水会長の興奮は止まず、新理事の大野清吉さんから『どうしたら納得するのか』と聞かれた清水さんは、山川さんに対し、『山川さんが日中友好協会(の会長など)……を降りれば誓約書に署名捺印する』と言いました。」



 小山の証言によれば、市の見解に納得せず、なおも山川の責任を追及しようとしたのは清水澄江だけだったというのである。とすれば、他の新役員たちの山川に対する認識は、清水とは異なっていたことになろう。少なくともその後の事実経過に照らすと、小山証言の信憑性は高いように思える。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第57回
山川に確認しなかった朝木

 12月7日付準備書面4Bでは、「山川が市の担当者から『福祉募金については帳簿に記載しないように』と指導された」時期が「平成25年」であることを「朝木がすでに知っていたこと」に続いて、議会での質問に至る経過について触れている。

 朝木が一般質問で取り上げた陳述書を朝木の代理人が受領したのは平成29年11月24日で、その4日後の同年11月28日に第6回口頭弁論が開かれた。福祉募金に関する陳述書の記載が平成29年7月18日付準備書面2Bの記載と異なるというのなら、第6回口頭弁論の場で朝木側から山川に対してなんらかの確認が行われてもおかしくない。しかし、口頭弁論において朝木側からはなんらの確認も質問もなかった。

 朝木が通告していない福祉募金に関する一般質問を行ったのは、上記の口頭弁論から3日後の平成29年12月1日である。それまでに、朝木本人からも朝木の代理人からも、「山川が市の担当者から『福祉募金については帳簿に記載しないように』と指導された」時期について問い合わせはいっさいない。単純に確認すればいいだけのことではなかっただろうか。朝木は山川に対していっさい問い合わせもしないまま、「引用」部分を改ざんした上、一般質問で「前年」を「平成23年」と決めつけ、「山川は福祉募金に関して虚偽の説明をしている」と主張したのである。

改ざんの目的

 その上で、朝木は健康福祉部長に対し、「市の担当者がそのような指導を行った事実はあるのか」と迫った。当然、市の担当者が「福祉募金については帳簿に『出金』だけを記載するように」などと指導するはずはないから、健康福祉部長は「そういった指導はないものと思っております」と答弁した。

 こうして、少なくとも東村山市議会本会議場においては、朝木が「山川は福祉募金に関して虚偽の説明をしている」と主張したことに対して、健康福祉部長がその主張に対してお墨付きを与えたという状況が現出したのだった。健康福祉部長はまんまと朝木に利用されたのである。部長としての答弁の重さを考慮すれば、この答弁は失態といわれても仕方があるまい。

 つまり、朝木のこの質疑は、「山川が福祉募金について虚偽の説明をしている」という事実を健康福祉部長公認のものにしようとすることだったとしか考えられない。「山川は福祉募金について『出金』だけを記載したことに関して虚偽の説明をしている」ということにしようとした朝木の目的は、「『原告は福祉募金を盗んだ事実を隠蔽するために虚偽の説明をしたのだ』とするためにほかならない。」――山川はこう主張している。

人を陥れるために「議会を利用」

 ところで、平成29年12月1日に行われた朝木による福祉募金に関する質問と、それに対する健康福祉部長の答弁は次のような経緯で行われたものである。

 東村山市議会会議規則は「会議において発言しようとする者は、あらかじめ議長に発言通告書を提出しなければならない」と定めている。しかし、朝木は事前に提出した質問通告書には「福祉募金」に関する事項はいっさい記載されていない。にもかかわらず朝木は、強引に福祉募金に関する質問に持ち込んだのだった。

 当然、答弁する側の所管は、被告朝木から質問されるまで質問内容を知らないのだから何も準備することができない。しかも、市側がどう指導しているかについては確認のしようがないこともないが、山川が裁判所に提出した陳述書に何が書かれているかなど、本会議の最中に確認できるはずがない。

 だから、健康福祉部長は前提が確認できない質問に対して答弁すべきではなかった。ところが、まさか朝木が引用した陳述書の一部が改ざんされているなど考えもしない健康福祉部長は、まんまと朝木のワナにはまり、朝木の狙い通りの答弁をしてしまった。――

 これが、本来議員が求められている議会質問といえるのだろうか。山川は急遽提出した準備書面を次のように締めくくっている。

「本件質問は、議会質問を利用して原告を陥れようとするものであることが明らかであり、市議会議員の議場での発言として保障されるべきものとは到底いえない。本件質問は、被告朝木が原告を横領犯人に仕立てるために一貫して議会質問を利用している事実を雄弁に物語るものにほかならない。」

 山川は上記の準備書面を提出するとともに、平成29年12月1日に行われた朝木の質問の反訳と録音を証拠として提出した。

合議制になった理由

 第6回口頭弁論が行われたのは平成28年11月28日で、その際には裁判官から「合議制」の話はまったく出なかったという。それから約ひと月後の平成28年12月20日に開かれた口頭弁論で裁判官は「公益に関する問題なので、3名の裁判官による合議制に変更します」と伝えた。裁判所の態勢に変化があったことだけは確かだった。

「公益に関する問題」とは、公益性に関する判断とでもいう意味だろうか。名誉毀損の不法行為が認定される基準は、問題となった表現行為が他人の社会的評価を低下させると認定された場合、①公共性②公益性③真実性あるいは真実であると信じるに相当の理由(相当性)――のいずれかが欠けた場合である。

 本件でいえば、山川は、朝木や清水が「山川は多摩湖寿会の金を横領した」と断定したことによって名誉を毀損されたと主張している。多摩湖寿会という老人会に関することだからまず公共性は認められる。公益性に関しても、同じ理由で認められるのが普通である。したがって、本件で判断の対象となるのは真実性・相当性だけだろうと考えていた。

 しかし裁判官は「公益に関する問題なので合議制に変更」するという。すると、この態勢の変更は、本件については公益性についても検討する必要があるという判断に至ったということのようだった。

 仮にそうだとすれば、上記のひと月の間に、裁判所の態勢に変化をもたらしたのは何だったのだろうか。変化のきざしなど何もなかった第6回口頭弁論以後を振り返ると、その3日後に朝木が東村山市議会で福祉募金に関する質問をしたこと、その1週間後に、山川が朝木の質問に関する準備書面を提出したこと――思い当たる出来事といえば、この2つしかなかった。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第56回
裁判所の態勢に変更

 平成29年12月20日午後4時から第7回口頭弁論が開かれた。東村山市議会が最終日だったが、朝木も弁論に間に合ったようで、被告側は朝木直子、清水澄江、天目石、それにそれぞれの代理人が1名ずつの計5名が顔を揃えた。

 この日、裁判官から「公益に関わることは3名の合議制で行うことになっているから」とのことで、次回の尋問以降、裁判は3名の裁判官による合議制で進めることが伝えられた。このため、再度の日程調整が必要とのことで、平成30年1月23日に予定されていた尋問は期日が変更されることとなった。現在のところ未定である。

 この日に予定されていた、山川が提出した音声データの再生確認については、2名の代理人がいずれもデータの内容が確認できたということで行わなかった。山川が提出した2件の反訳(「平成28年11月30日の朝木と清水の傍聴席での発言」及び「平成29年12月1日の朝木の一般質問」)に対しても、2名の弁護士から異議は提出されなかった。2名の弁護士は反訳どおりの音声データを確認したということと理解できた。

急遽、準備書面を提出

 さて、平成29年12月1日に行われた一般質問で朝木は山川の陳述書の一部が改ざんして「引用」し、その「引用」を根拠に、「福祉募金の扱いについて山川が虚偽の説明をしている」すなわち「山川は着服の事実を隠蔽するために市に責任をなすりつけている」と主張した。これに対して健康福祉部長が「そういった指導はないものと思っております」と答弁したことで、「福祉募金の扱いについて山川が虚偽の説明をしている」とする朝木の主張が行政によって認められたような状況となった。

 議会で朝木が、山川は福祉募金の「出金」だけを記載したことについて虚偽の説明をしていることにしようとしたことだけは事実だった。平成30年1月23日(この期日は変更になった)には朝木の尋問が控えている。尋問の場で朝木がこの質疑に基づいて、一方的に「山川は虚偽の説明をしていることが健康福祉部長の答弁によって裏付けられた」と主張する可能性も十分に想定できた。

 このため、山川は2つの手段を講じる必要があると判断した。1つは、この質疑が山川の陳述書の改ざんに基づいたものであり、質疑自体が虚偽であることを裁判所に対して主張しておくこと。もう1つは、東村山市議会におけるこの虚偽のやり取りがこのままの状態で会議録に記載される事態をなんとか防ぐこと――議会に対して、少なくとも「引用」の誤りだけは訂正してもらうよう要請すること――この2点だった。

「前年」がいつかを知っていた朝木

 朝木が上記の一般質問を行った時点で双方に準備書面の提出が命じられていたわけではない。裁判も終盤にさしかかった時期に準備書面を提出されることは、裁判官にとっても予定外かもしれない。しかし山川にとって、裁判上の重要な争点である福祉募金について、東村山市議会で陳述書の改ざんに基づく虚偽の質疑が行われたことは無視できなかったのである。朝木の一般質問から1週間後、の平成29年12月7日、山川は東京地裁立川支部に今回の質疑に関する準備書面を提出した。

 山川は準備書面の冒頭で提出の趣旨について次のように主張している。

「被告朝木は、平成29年12月1日、本件の重要な争点である福祉募金に関し、原告が提出した平成29年11月22日付陳述書(甲32、以下=「本件陳述書」という)の記載事実を改ざんした上で、原告が誤って福祉募金の「出金」を記載したことについて原告が虚偽の説明を行い、「福祉募金を盗んだ」ことを隠蔽しようとしているとの趣旨の質問を行った(以下、「本件質問」という)。その発言内容は本件陳述書記載事実の改ざんに基づく悪意に満ちたものである。よって原告は、本件質問がいかに悪質なものであるかについて主張するとともに、本件に関して被告朝木が一貫して市議会質問を利用していることを改めて主張するものである。」

 山川は準備書面の冒頭でこう述べたあと、朝木が議会で山川の陳述書を、

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることが問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

 と原文とは異なる「引用」をした上で、山川は福祉募金の「出金」だけを記載した(山川が多摩湖寿会の会計に就いた平成24年)ことについて「『前年』に市の担当者から指導を受けたから記載したのだと主張している」とし、「前年」が「平成23年」であると主張している点について反論している。朝木は一般質問の時点で、「前年」が「平成23年」ではなく「平成25年」であることを知っていたという趣旨の反論である。その理由は以下の3点だった。



(理由1)

 山川が多摩湖寿会の会計を担当したのは平成24年5月から平成28年5月までの間であり、誤って「出金」を記載したのは平成24年の1度だけで、その後は記載していない。陳述書には「前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので」、に続いて「翌年(平成26年)から記載しなかった」と記載しているのだから、上記記載の「前年」が「平成25年」であることが明らかであること。

(理由2)

 山川は福祉募金について誤って「出金」を記載したことに関して、平成29年7月18日付準備書面ですでに次のように説明している。

「原告は平成24年度の会計監査の際、社会福祉協議会の担当者から『福祉募金は収入にも支出にも該当せず、集計したものをそのまま市老連に振り込むのだから会計帳簿には記載しないように』との指導を受けたため、翌年から会計帳簿には記載しなくなった。」

 山川は、福祉募金を会計帳簿に記録しないようにとの指導を受けたのは「平成24年度の会計監査の際」すなわち平成25年であることを明記しているのであり、訂正は一切申し立てていないこと。

(理由3)

 山川が多摩湖寿会の会計役員に従事したのは平成24年5月からであり、被告朝木が主張する「平成23年」の時点では多摩湖寿会の会計とは無関係なのだから、「平成24年の前年」に市から「募金の入金は会計簿に記載しないように」などとの指導を受ける道理がない。よって、本件記載にある「前年」が平成23年である道理もないこと。



 朝木は上記「理由2」の準備書面の内容も知っているし、山川が寿会の会計に従事した時期も知っているからから、山川の陳述書にある「前年」が「平成25年」であることを「朝木は知っていた」とする山川の主張には十分な合理性があるように思えた。

(つづく)

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多摩湖寿会事件 第55回
事情を理解していた朝木

 朝木は一般質問で山川の陳述書を「引用」した際、陳述書以前に山川が説明していた事情にはいっさい触れなかった。しかし、福祉募金を誤って帳簿に記載したことについて、山川は平成29年 7月18日付準備書面で次のように主張している。



(平成29年7月18日付準備書面における山川の主張)

「原告が平成24年度の会計簿に上記(2)の記載(筆者注=福祉募金について「出金」だけを記載したこと)をしたのは事実であるが、この記載は、原告が会計を始めた年(筆者注=平成24年)で、福祉募金を会計帳簿上『収入』として扱うべきかどうかわからず、また集計後にそのまま市老連に振り込んだことから、とりあえず『支出』欄に『2万4603円』と記載したのである。」

「原告は平成24年度の会計監査の際(筆者注=平成25年)、社会福祉協議会の担当者から『福祉募金は収入にも支出にも該当せず、集計したものをそのまま市老連に振り込むのだから会計帳簿には記載しないように』との指導を受けたため、翌年(筆者注=平成25年度の帳簿)から会計帳簿には記載しなくなった。」



 上記の記載を読めば、山川が市の担当者から「福祉募金は帳簿に記載しないように」と指導されたのが「平成24年度の会計監査の際」すなわち平成25年度と説明していることが明らかである。だから山川は、「翌年から会計帳簿には記載しなくなった」のである。したがって、「翌年から」とは「平成25年から」ということになる。

 山川が準備書面における上記の主張について裁判所に訂正を申し立てた事実もない。訂正を申し立てていないということは、上記の主張が維持されていることを意味するのは訴訟上の常識であり、そのことを朝木が知らないはずはない。

 当然、朝木が上記の説明を読んでいないということもあり得ない。朝木はすでに、山川が「福祉募金は帳簿に記載しないように」との指導を受けたのが平成24年度の監査の際、すなわち平成25年であることを十分に認識していたのである。

 また、山川が多摩湖寿会の会計に就いたのが平成24年5月であること、福祉募金を会計帳簿に記載したのが誤りであることを知って記載しなくなったのが平成25年であることは証拠上明らかで、当然、そのことについても朝木は知っていた。山川が寿会の会計に就いたのは平成24年なのだから、まだ寿会の会計に就いていないその「前年」である平成23年に山川が市の担当者から「福祉募金は「出金」だけを記載するように」などとの指導を受ける道理がないことも、常識的に理解できよう。しかし、朝木は一般質問で、山川が平成29年11月22日付陳述書を提出する以前に知っていた背景事情について一言も説明せず、しかも陳述書の記載について原文とは異なる「引用」をしたのだった。

 すると、朝木が一般質問で、「元会計担当者の書面です」と前置きし、質問の根拠とした「引用」部分=

「確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

 との箇所に、山川の陳述書には記載されていた「、翌年から」が脱落していたことを、どう理解するのが自然だろうか。

 陳述書以前の山川の説明および客観的な事実背景について朝木がいっさい説明しなかったこと、「、翌年から」の5文字が脱落している以外は正確に引用していることからすれば、朝木は一般質問で「、翌年から」を意図的に脱落させた、つまり山川の原文を改ざんした上で引用したとみせかけた--こう理解するのが最も自然なのではあるまいか。

脱落させた目的

 朝木はなぜそんな手の込んだ一般質問を企図したのだろうか。「市の担当者はそんな指導を本当にしたのか」という朝木の質問と、それに対する「そういった指導はないものと思っております」という健康福祉部長の答弁によれば、福祉募金の「出金」だけを帳簿に記載したことについて、山川は「市の担当者から指導を受けたからそう記載した」と虚偽の説明をしていることになる。

 この質疑を聴いた他の市議会議員、市職員、傍聴者が「山川は福祉募金の記載について虚偽の説明をしているのか」と理解することは明らかである。ではなぜ山川は福祉募金の記載について市に責任を転嫁するような虚偽の説明をするのか。それは山川が福祉募金の「入金」を記載せず「出金」だけを記載することによって多摩湖寿会に支出させ、着服したことを隠蔽するためだ――朝木の質疑を聴いた者は遅かれ早かれそう考えるのではあるまいか。そう仕向けることが朝木の狙いだったのだろう。

 朝木はこの質問と答弁の結果を裁判所で主張しようと考えていた可能性もある。裁判所にどこまで通用するかは疑問ではあるものの、一般質問でも主張したように、「山川は平成29年11月22日付陳述書において福祉募金についての主張を変え、市の担当者からそう指導されたから『出金』だけを記載したと主張している」と主張した上、健康福祉部長は『そのような指導はしていない』と答弁した」と一方的に主張することはできる。山川が朝木の「引用」の誤りに気づいていなければ、山川の対応に混乱が生じる可能性がある。

 質問後、朝木は私に対してニヤリと笑った。その意味は健康福祉部長に想定通りの答弁をさせたことに対する自画自賛ではなく、「引用を改ざんした」という本心を隠そうとする本能的なものだったのではないかという気がする。もちろんその時点ではまだ、朝木のそんな巧妙な策略に気がついてはいなかったのだが。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第54回
脱落していた文言

 朝木が一般質問を行った当日、私は朝木が通告していない質問を行い、その内容について健康福祉部長が一方当事者である山川に対する事実確認をしないままに答弁したことに問題があったと考えていた。これだけでも、東村山市議会ではアンフェアな質疑がまかり通る状態にあったといえるのではないかと思う。それが私の感じた違和感の原因だったのだろうと、その日は考えていた。

 しかしどうやら、朝木の質問の狙いは市の担当者に予期せぬ質問をぶつけることだけでなく、その核心は別のところにあった。私がそのことに気がついたのは、改めて録音を聞き直したときである。

 朝木は「元会計担当者の書面です」と前置きして山川の陳述書を「引用」した。しかし、「引用」として読み上げたその箇所には、福祉募金の「出金」だけを帳簿に記載したことについて、山川が市の担当者から指導された時期の理解を左右する文言だけが脱落していたのである。重大な箇所の脱落だった。なお、「引用」箇所におけるその他の文言はすべて一致していた。

 朝木の「引用」部分と山川の陳述書の該当箇所を比較してみよう。



(朝木の「引用」)

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

(山川の陳述書の記載)

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので、翌年から記載しなかった」



 朝木が「引用」した箇所と山川の陳述書における記載を比較すると、朝木の「引用」には山川の上記の記載の最終行にある下線部、「、翌年から」が脱落していることがわかる。

 朝木は上記の「引用」の直前に「元会計担当者の書面です、裁判所に提出した。」と前置きし、「引用」終了後には、「こういうふうに書いてあります」と発言している。したがって、朝木は「山川はこう主張している」とする根拠として上記のように「引用」したものと理解できる。

「、翌年から」が削除された朝木の「引用」によれば、山川は福祉募金を帳簿に「出金」だけを記載したことについて、記載した「前年」に市の担当者から指導を受けたからだと主張していることが明確化された状態になっている。「、翌年から」が入れば、「前年」の理解は変わってくるのである。

 この「引用」の前に、朝木は山川の主張を次のように紹介していた。

「集めた募金は帳簿に入金の記載をしてはいけないというふうに市の担当者から指導があったそうです。なので、支出だけを書いたと」

 上記の朝木の主張が、朝木が「元会計担当者の書面です、裁判所に提出した」として「引用」した、原文とは異なる一文に基づいていることは明らかである。朝木の「引用」に基づけば、朝木が上記のように理解したのも無理はないということになる。

背景事情に触れなかった朝木

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので、翌年から記載しなかった」

 この山川の陳述書の記載にある「前年」(下線部)がいつのことなのか、わかりにくい文章であることは否定できない。この文章を表面的に、あるいは悪意をもって理解する場合には、「募金の入金は会計簿に記載しないように」と指導されたのが、山川が帳簿に記載する「前年」すなわち平成23年のことであると誤読される恐れがないとはいえないかもしれない。「年を明確に示さず、前年とか翌年とかとなっているから誤解を生むのだ」という批判もあろう。

 しかし、背景事実を理解すれば、上記のように理解するのは誤りだということがわかるのではあるまいか。

 まず、山川が福祉募金について「出金」だけを記載したのは山川が多摩湖寿会の会計を担当するようになった平成24年度の会計帳簿だけなので、朝木が脱落させた「翌年」が平成25年度を指していることは明らかなのである。

 さらに、福祉募金について帳簿に「出金」だけを記載した平成24年度の「前年」には山川は寿会の会計は就いていないから、「出金」だけを記載した時点ですでに市の担当者から「募金の入金は会計簿に記載しないように」などとの指導を受けていた道理がない。したがって、「募金の入金は会計簿に記載しないように」との指導を受けたのは、朝木が主張する「平成23年」ではなく、誤って「出金」だけを記載した平成24年度の会計帳簿の監査が行われた際、つまり平成25年の監査の際なのである。

 しかし、朝木はなんらの背景説明もなしに、
 
「確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

 と、山川の陳述書における説明から「翌年から」の文言を脱落した状態で「引用」した。

 朝木の「引用」によれば、ここでいう「前年」とは、「出金」だけを記載した平成24年の「前年」、つまり「平成23年」としか理解できなくなる。その結果、山川は「市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので『出金』だけを記載した」と主張しているということになってしまうのである。

(つづく)
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多摩湖寿会事件 第53回
福祉募金に関する一般質問

 平成29年12月1日、朝木は健康福祉部長に対し、山川が行った会計処理について「監査が甘かったという以外の問題はないとふうな認識でいいんでしょうか」と聞き、健康福祉部長に「少なくとも現状ではそういう風に認識をしております」と予定通りの答弁をさせた上で、質問通告をしていない福祉募金の件について切り出した。以下はその質疑である。



(福祉募金に関する山川の説明についての朝木の質疑)

朝木  それでは伺いますが、この元会計は、公の文書に記載してあることでありますけれども、福祉募金の横領がありました。どういうことが起きたかというと、会員から集めた福祉募金を、会計帳簿には入金せず、集めたその金額をね、会計帳簿には入金せず、出金だけ、支出だけした、ということで、集めたお金が簿外に置かれて、それを自分が持っていたというふうなことになってます。わかりますよね。

 で、この集めた募金が結局、会計帳簿には入金しないで、支出だけ、会計帳簿から支出すれば、当然、簿外にお金が置かれるわけですが、この指摘に対して、この元会計担当者は、これは市の担当者が、こういう指導をしたというふうにはっきりと、市の担当者の指導によるものだというふうに言い始めているんですけれども、これはもし本当だとしたら、大変な事態だと思うんですけれども、こういうことを、こういう指導はあったんでしょうか、なかったんでしょうか。

健康福祉部長  少なくとも私が知る限りでは、そういった指導はないものと思っております。

朝木  ないものと思っているというよりも、この間ずっと調査をしているわけですから、こういう指導があった、要するに、募金を集めたと、集めた募金は帳簿に入金の記載をしてはいけないというふうに市の担当者から指導があったそうです。なので、支出だけを書いたと。

 私、全く信じてるわけじゃありませんけどね。普通でいえば、あり得ない話だと思ってますが、当市の監査委員まで務めた方がそのようにおっしゃっているのでね、だからこれは市の担当者の指導によるものだというふうに言い始めてるんですよ。なので、この点はちょっとしっかりと答弁をしていただきたいと思うんですが、間違いないですか。

健康福祉部長  市の担当者が指導したことはないということです。以上です。

朝木  元会計担当者の書面です、裁判所に出した。で、寿会の会員の方から、

「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」

 ――こういうふうに書いてあります。これはじゃあ、事実ではないということで間違いないですね。これ、公の文書に書いてあることですから、しっかり答弁してください。

健康福祉部長  把握はしておりません。以上です。

朝木  はい、では次にいきます。



 朝木はめずらしく満足げに質問を切り上げた。なお反訳には表れていないが、健康福祉部長の最初の2つの答弁までに10分近くがかかっている。いずれも担当者に事実確認を行ったためである。ただし、山川が本当に、朝木が質した趣旨の主張(「福祉募金の『出金』だけを帳簿に記載したのは市から指導があったためだ」とする主張)をしているのかどうかについての確認は、当然ながら行われていない。

当事者に確認しないまま答弁

 仮に、朝木が事前に通告していれば、健康福祉部長も山川に確認していたかもしれない。いずれにしても、健康福祉部長は市が山川に対して、福祉募金については「入金」を記載せず、「出金」だけを記載するよう指導したかどうかについて確認しただけで、もう一方の当事者である山川には確認しないまま答弁したということである。著しくバランスを欠いた答弁だったとはいえないだろうか。

 東村山市議会における議会運営のルール、あるいは議会質問に対する行政側の対応ルールが、事実の確認ができなくても答弁していい、ということになっているのかどうかは定かでない。ただ一般社会では、相手方から質問されたことに回答するにあたって、その前提を確認するのは常識ではないかと思う。

「山川は虚偽の説明をしている」との結論

 さて、朝木の主張は大要以下のようにまとめられるだろう。



①山川は福祉募金の際、会計帳簿に「入金」を記載せず「出金」だけを記載した。この出金分が多摩湖寿会から支出され、簿外に置かれて、山川が着服した。

②山川は会計帳簿に「入金」を記載せず「出金」だけを記載したことについて、「市の担当者がそのように指導したので『出金』だけを記載した」と主張し始めている。
(なお、この点に関する山川の主張が最近になって変わったとする趣旨の朝木の主張については、平成29年7月18日付準備書面で山川が「原告は平成24年度の会計監査の際、社会福祉協議会の担当者から「福祉募金は収入にも支出にも該当せず、集計したものをそのまま市労連に振り込むのだから会計帳簿には記載しないように」との指導を受けたため、翌年か会計帳簿には記載しなくなった。」と記載していることを前提としている。しかしこの事情について、議場内の誰も知る者はいない。)

③上記②について「そのような事実があるか」と質問したのに対し、健康福祉部長は「そういった指導はないものと思っております」と答弁した。

④上記②の主張について、朝木はその根拠として山川が提出した平成29年11月22日付陳述書の一文を引用した。

――元会計担当者の書面です、裁判所に提出した。で、寿会の会員の方から、

(ここから引用)「募金の入金について『会計簿に入金の記載がないのに出金の記載があることは問題だ』と言っています。確かに入金については記載はないのですが、それは、前年に市の担当者から『募金の入金は会計簿に記載しないように』との指導を受けたので記載しなかった」(引用終わり)

 こういうふうに書いてあります。――



 朝木が上記質問の最初に「元会計担当者の書面です、裁判所に提出した。」と述べていること、最後に「こういうふうに書いてあります」と結んでいることから、上記カッコの部分が山川の陳述書を引用したものと判断できた。

 質疑の上では、朝木が説明する山川の主張内容を健康福祉部長が否定する形になっていた。その結果、「山川は福祉募金について会計帳簿に『出金』だけを記載したことについて虚偽の説明をしている」との質疑が形成されたという印象を持った。  

 朝木の一般質問が終わり、議会は休憩に入った。傍聴席から議会事務局の方向に降りていくと、ちょうどエレベーターに乗り込む朝木に出くわした。朝木は私に向かって、ニヤリと笑みを浮かべた。「どう? うまくやられたでしょ」と自賛しているようだった。

何ともいえない違和感

 この日の朝木の質問とそれに対する答弁には何とも言い難い違和感を覚えていた。その理由は2つあった。

 1つは、福祉募金に関する通告がいっさいなされておらず、にもかかわらず、一般質問としてなんらの疑義も出されないまま受け入れられたこと。2点目は、朝木の質問に対して健康福祉部長が、山川がそう主張しているとして朝木が質した市側の対応については担当者に確認したものの、一方当事者である山川に対しては事実確認をいっさいしないまま答弁したことだった。その答弁は、朝木の主張及びその前提(山川が主張しているとする内容)を追認したようなものだった。

 朝木は質問通告をしないまま質問をぶつけることで健康福祉部長を混乱させ、その結果、自分に有利な答弁を引き出した――。この時点で、なんともいえない違和感の理由を私はそう理解していた。

(つづく)
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